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2007年8月に作成された記事

2007/08/28

独断的映画感想文:イン・ザ・ベッドルーム

日記:2007年8月某日
映画「イン・ザ・.ベッドルーム」を見る.今回は完全ネタバレなので注意.
2001年.監督:トッド・フィールド.Photo_2
トム・ウィルキンソン,シシー・スペイセク,ニック・スタール.
東部メーン州の漁港町の診療所の医師一家の話.
一人息子は建築家志望だがこの夏休み子持ちの女とつき合っている.彼女はまだ離婚が成立せず,夫は彼女につきまとっている.
そういう状況下でも穏やかな日常はたんたんと過ぎるが,ある日暴行する夫を阻止しようとした息子は射殺されてしまう.
悲嘆にくれ,諍いを起こし,また許し合う夫婦.
ここまで来たら「息子の部屋」ふうに終わるのかと思ったら,ある夜医師は外出し夫を銃で脅して友人の農場に連れて行く.そのまま夫を射殺,友人と二人で予め掘ってあった森の穴に埋める.
夜明けに帰った夫に妻は「殺ったの?」と確認する.
この冷酷な計画的殺人による復讐で何が解決したわけでもない.アメリカは恐ろしい国であるという暗澹たる思いのみが残る.
描かれるメーン州の漁港町の四季の美しさが印象的.
★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ホテル・ハイビスカス

日記:2007年8月某日
映画「ホテル・ハイビスカス」を見る.
2002年.監督:中江裕司.Photo
蔵下穂波,照屋政雄,余貴美子,平良とみ,ネスミス.
「ナビィの恋」と同じ監督,おじいとおばあも同じ俳優が出ている.
小学生中曽根美恵子の冒険物語.
彼女の家は客室が1つしかないホテルハイビスカス,兄弟は皆父親が違うが両親とおばあと仲良く暮らしている.
基地の中に潜り込んでキジナムを探せば砲弾と機銃の音がうるさい.終いに演習中の歩兵に捕まってしまうが,彼女は全くひるまない.
でも父のためアメリカからの手紙を届けに行って泊まった知らないおじいの木の上の家で,木の精が降りてきたり,同級生を石で殴ったら父にそういうことが戦争を起こすとしかられたり,お墓の近くのブランコをこいでいたら見知らぬ少女が一緒に遊んでくれたり,それは戦後すぐに死んだ多恵子おばちゃんだったり,美恵子も魂落っことしていたところおばあに戻してもらったり,大変なのだ.
圧倒的な美恵子のエネルギーと歌と踊り,魂と精霊の世界が素晴らしい.
★★★★(★5個が満点)
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2007/08/26

独断的映画感想文:プルーフ・オブ・マイ・ライフ

日記:2007年8月某日
映画「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」を見る.Proof01
2005年.監督:ジョン・マッデン.
グウィネス・パルトロー,アンソニー・ホプキンス,ジェイク・ギレンホール,ホープ・デイヴィス.
この映画,邦題の付け方には疑問が残る.原題は単に「プルーフ」である.
映画の冒頭,居間でイライラとTVのザッピングをしているキャサリン,父親のシカゴ大学教授が現れ親子の会話となる.翌日はキャサリンの誕生日,教授がシャンパンを送りそれを開けるキャサリン.
会話が続く中,実は教授は1週間前に亡くなったことが明らかになる.
やがて2階から下りてくる教授の弟子ハル,彼は教授の残した膨大なノートを調査に来たのだ.彼との会話から,教授はこの5年ほど精神を病んでいたことが明らかになる(その発病自体は27歳頃だったと,冒頭の会話で教授自身が明らかにしている).
キャサリンはハルがその晩1冊のノートを持ち帰ろうとしていたのをとがめ,警察に通報する騒ぎとなる.
翌日N.Y.から姉クレアが現れるが,彼女は会計士として成功していた.教授の介護に疲れ情緒不安定なキャサリンに対し,クレアは教授とキャサリンが過ごしたシカゴの家を直ちに売却,キャサリンをN.Y.に連れ帰ると言う….
戯曲として上演されてきた作品を,その戯曲と同じ女優をヒロインとして作られた映画.
キャサリンは姉と異なり,父親と似て天才的な数学家である(実はこのことが映画の中ではもう一つ分かり難い).父親のように精神に異常を来すのではないかという不安から離れられないと同時に,父親からの自立と,精神を病んだ父親の介護と言う現実との葛藤に苦しんできた.
映画はこのキャサリンが,教授の死後学問を捨て姉の保護下に暮らすのか,ハルとの人間関係を打ち立て自立していくのかを,ノートから発見された数学の新理論の作者が誰かという謎を軸に,過去の回想を織り交ぜて描いていく.
この映画のポイントは「親殺し」である.Proof02
人間は誰しも,自らの自立の過程で,思春期までの親との関係の清算を迫られるときが来る.河合隼雄に依れば,これが心理学的「親殺し」である.
親子として,数学の師弟関係として,殆ど教授と一体化した人生を送ってきたキャサリンが,教授の精神の崩壊に直面して「親殺し」をしなければならなくなった書斎のシーンは,極めて印象的である.
俳優ではグウィネス・パルトローが良い.昂揚した表情から不安のために脅える表情へと一瞬で変わる場面など,見応えがある.
映画としては上記のように,キャサリンが天才的数学者であるとは殆ど明示されないので,新理論を実はキャサリンが発見したのかも知れないという展開が,いささか受け容れがたい.
しかしその点を割り引いても面白く,また後味の良い映画だった.
ところで,僕自身の子供達も何時かは「親殺し」に直面するのだろうか.イヤ,もう済ませてしまったかも?
★★★★(★5個が満点)
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2007/08/18

独断的映画感想文:雨月物語

日記:2007年8月某日
映画「雨月物語」を見る.
1
1953年.監督:溝口健二.
京マチ子,水戸光子,田中絹代,森雅之,小沢栄太郎.
戦国時代の琵琶湖畔,源十郎と藤兵衛の隣同士は貧しい暮らしに愛想が尽きている.
ある日源十郎の作った陶器を二人して長浜に売りに出て意外の金を儲けたことから,二人は夢中で陶器を焼く.
折から羽柴・柴田の間で合戦になり村が徴発に会い男が兵に狩り出されるのをかいくぐり,二人は藤兵衛の妻阿浜を伴い,源十郎の妻宮木を息子と共に留守番として,焼き上がった陶器を売りに出かける.
町で陶器は首尾よく売れ,藤兵衛はその金で具足槍を買い調え,阿浜の止めるのも聞かず戦陣に加わろうと立ち去ってしまう.2
一方源十郎は通りかかった若狭姫と乳母右近の求めるまま,陶器をその屋敷に届ける.
そして源十郎は右近の勧めに従い屋敷に逗留し,姫と契りを結ぶのだった….
上田秋成作「雨月物語」の「浅茅が宿」「蛇性の淫」を基に脚本化された映画.
溝口健二は,この映画と前年の「西鶴一代女」,翌年の「山椒大夫」とを併せ,ベネチア国際映画祭3年連続受賞の快挙を成し遂げた.
この映画は溝口の特長であるワンカットワンシーンの長回しや,古典劇らしい台詞使い,流麗で夢幻的な美術,様式美にあふれた映像など,日本映画の素晴らしい財産ともいうべき映画の要素を堪能することができる.
映画のポイントはやはり,若狭の屋敷での最期の場面と,命からがら帰り着いた自分の家での息子と宮木との邂逅であろう.3_2
前者では死霊の正体を現した京マチ子の凄絶さと,毛利菊江の台詞回しが圧巻.後者では源十郎を迎えその身の世話を焼き,服の繕いを夜なべまでして朝日と共に消えゆく宮木(の幽霊)の哀れさが,感銘的である.
エピローグで源十郎に語りかける宮木の独白も素晴らしい.一見の価値ある映画.
★★★★☆(★5個が満点)
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2007/08/16

独断的映画感想文:夕凪の街 桜の国

日記:2007年8月某日
映画「夕凪の街 桜の国」を見る.Yuunagi3
2007年.監督:佐々部清.
麻生久美子,藤村志保,田中麗奈,中越典子,堺正章.
昭和33年,被爆で父と妹みどりを失い,今は母フジミと2人で暮らしている平野皆美.
水戸の親戚に疎開していた弟旭は,今はその親戚の石川姓を継いで水戸にいる.
同僚の打越は皆美のことを好いているらしい.しかし皆美はその好意を受けることが出来ない.13年前,自分の背中で死んでいった妹みどりの声が耳から離れない.
やがて皆美は原爆症に倒れる….Yuunagi1
平成19年夏,石川七波は退職した父旭がある晩突然姿を消したのを追いかけ,駅で偶然出会った幼なじみの東子と共に高速バスに乗って広島まで来てしまう.
父はあちこちに立ち寄って,古い知り合いと話をして回っているらしい.その後をつけ,七波は初めて祖母や伯母たちの眠る墓を知り手を合わせる….
広島原爆被災者の生と死を2部構成で描く物語.
昭和33年を描いた第1部夕凪の街は,麻生久美子の好演もあって素晴らしい出来.しかし第2部は田中麗奈の好演にもかかわらず,話の整理がつかず受け入れ難い.
父が行く先も告げずある夜広島へ,というのも乱暴な話だ.また七波の行動に絡む東子の存在は,話を混乱させるだけではないか.東子役の中越典子の演技は今ひとつ.
途中の幾つかのシーンの様に,両親の若かった時代の映像に七波がそのまま入り込んで見守っていく構成に,最初からした方が良かった様に思う.
そのあたりは期待外れだが,麻生久美子演ずる皆美は良かった.
弟旭が「原爆が落ちて」というのを「原爆を落とされて」と言い直す皆美.
また死に瀕しての彼女の独白は心が痛む.
「嬉しい?/原爆を落とした人はわたしを見て/『やった!またひとり殺した』ってちゃんと思うてくれとる?」
Yuunagi4
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:007/カジノ・ロワイアル

日記:2007年8月某日
映画「007/カジノ・ロワイアル」を見る.
007casinoroyale1
2006年.監督:マーティン・キャンベル.
ダニエル・クレイグ,エヴァ・グリーン,マッツ・ミケルセン,ジュディ・ディンチ,ジェフリー・ライト,ジャンカルロ・ジャンニーニ.
第1作からすでに45年を経てなおシリーズの続くスパイアクション映画.ゴルゴ13もそうだけど,どうしてこんなに長く続くのだろう.
抜群の働きで“00”ナンバーのエージェントに昇格したボンドは,テロ組織の資金を預かり運用するル・シッフルを追い,株の暴落を狙ってル・シッフルが仕掛けた新型航空機の爆破テロの阻止に成功する.
このため逆に大量の運用損を出したル・シッフルは,モンテネグロのカジノ・ロワイアルでのギャンブルで起死回生をはかる.
財務省の美人職員ヴェスパー・リンドは国家予算1500万ドルを持参しボンドに合流,ル・シッフルの野望阻止に向けた作戦が開始される….
原作を読んだのももう40年ほど前だからはっきり覚えてはいないが,原作のハイライト・ギャンブルシーンは,ポーカーではなくコントラクト・ブリッジだった筈.
最期の勝負で,ル・シッフルの手元にはエース,キング等のすさまじいカードが揃う.絶対の自信を持ってすべての資金をかけ勝負するル・シッフル,一方ボンドの手札はいかにも非力なカードばかり.ところが一旦ボンドが主導権を取ると,その非力なカードの組み合わせは2度とル・シッフルに主導権を取らせない絶妙の組み合わせになっている.
巧妙な罠,その回のカードすべてを,ボンドは仕込みカードにすり替えたのだ.
このサスペンスフルな展開は,コントラクト・ブリッジのルールを知らない人には,いささか判り難いだろう.というわけで映画ではボンドとル・シッフルはポーカーで戦うことになる.
映画はすさまじいアクションとどんでん返しに次ぐどんでん返し,144分の長さはいささかばてるほどのボリュームである.
007casinoroyale2
アクション映画の基本は押さえてあるし,やたら腕力に優れ不死身のニューボンドはそれなりに魅力的,ヴェスパー・リンドとの苦い結末も納得できる.
しかしギャンブル勝負後の展開がなんぼ何でも長すぎる.ここをきちっと締めてくれたら良かったのに.
★★★☆(★5個が満点)
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2007/08/15

独断的映画感想文:トンマッコルへようこそ

日記:2007年8月某日
映画「トンマッコルへようこそ」を見る.2
2005年.監督:パク・クァンヒョン.
シン・ハギュン,チョン・ジェヨン,カン・ヘジョン,イム・ハリョン,ソ・ジェギョン.
朝鮮戦争下,山奥の自給自足で暮らす村トンマッコル.
この村に米国人パイロットが不時着し救助される.また,北朝鮮人民軍兵士3名と,韓国軍兵士2名が迷い込んでくる.
ところがこの村は,今戦争の真っ最中と言うことさえ誰も知らない始末.村人を挟んで対峙していた両軍兵士が疲労の極にいたり,手榴弾を誤爆させて村の食料庫を全壊させてしまうが,村人は残ったジャガイモを蒸かして兵士たちに振る舞ってくれる.
この純朴きわまりない村人に惹かれ,米国人パイロット,両軍兵士とも揃って農作業の応援に励み,次第にうち解けていくのだった….
韓国軍の将校は,避難民のひしめく橋を上官に命じられ爆破した過去を持つ.一方北朝鮮軍の将校は,自分の部下の負傷者や弱兵を置き去りにするよう,政治委員から批判されていたらしい.
それぞれが抱える葛藤も,トンマッコルで暮らすうち次第にほぐれていくようだ.
ところが収穫の終わった日,村に侵入してきた国連軍兵士たちにより,トンマッコルを村民もろとも攻撃してしまう作戦が進行中だと判る….
心温まるファンタジー.
韓国映画といえばもっと殺伐としたものばかり見てきた身にとっては,なかなか良かった.話の運びがやや冗長でエピソードの繋がりも荒っぽいが,全体の雰囲気が素敵である.
特に知的障害者の少女ヨイルと,北朝鮮軍の少年兵ソ・テッキの交流がほほえましく,エピローグに彼らが現れたシーンは印象的だった.1
久石譲の音楽は美しいが,ややパターン的なのとあまりにも鳴りすぎで喧しい.
★★★☆(★5個が満点)
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2007/08/14

独断的映画感想文:紙屋悦子の青春

日記:2007年8月某日
映画「紙屋悦子の青春」を見る.
1
2006年.監督:黒木和雄.
原田知世,永瀬正敏,松岡俊介,小林薫,本上まなみ.
黒木監督の遺作である.
冒頭西日を浴びて病院の屋上とおぼしきところでベンチに腰掛ける老夫婦.当たり障りのない会話を交わす夫婦を追う長回しのカメラ.
幾星霜を経たと見える老夫婦の会話の中で,ふと夫が妻の実家の門前にあった桜のことを言う.一瞬映る見事な桜の木.続くアップで夫が呟く,「なしておいは,生きとるやろか…」.
この長いアプローチに続き,昭和20年3月30日の鹿児島県米ノ津町の紙屋家に話が移る.
紙屋家の夕食が始まるところ,兄安忠が妻ふさに,翌日後輩である明石少尉の紹介で長与少尉が妹悦子との見合いに訪れることを告げる.悦子とは同級生で親友でもあるふさは,悦子は明石少尉に好意を持っているのではと言う.
3
やがて帰ってきた悦子にそのことを伝えるが,一方安忠はその夜,翌日から熊本に出張との命を受けその支度にかかる.結局悦子は一人で見合いに臨むことになる.翌日,明石少尉に伴われ,長与少尉が紙屋家を訪れた….
前作「父と暮らせば」同様,この映画も戯曲を基にしている.
少ない場面転換,限られた登場人物,会話主体の構成という制約の中で,長回しを多用して描写される緊張度の高い映像が素晴らしい.
その延々と続く会話劇の脚本は良くできていて,何とも言えないユーモアがちりばめられている.
兄夫婦の頓珍漢な会話,3月に東京大空襲で亡くなった両親の傑作な思い出話.あるいは見合いの席上長与少尉と悦子のヘッセを巡る会話.
女性とまともに話した経験のない長与少尉に明石少尉が,女学校出の悦子にヘッセの話題でも持ち出すようにとアドバイスするのだが,その会話は,
長与「ヘッセ!!」
悦子「は?」
のわずか2語で終わってしまう.
他方,敗戦間近の厳しい戦況下の日常生活のなか,登場人物は誰も明示的な台詞や態度を抑制している.
言いよどんで妻を見る兄,思いを打ち明けることもせず只端然と座ってじっと相手を見つめるだけの悦子.
その中で,明石少尉を最期に見送りその後号泣する悦子のシーン,明石少尉の遺書を悦子に渡し,明石の分もあなたを大事にすると言う長与少尉のシーンは,極めて印象的である.
2
エピローグ,映画は再び病院の屋上に戻る.
とっぷり日は暮れて灰色の風景の中,まだベンチに座っている二人.画面には波の音が響いている.
悦子にだけ聞こえる波の音,それが聞こえると安心するという波の音は,海に眠る明石少尉を暗示しているのかも知れない.
戦闘シーンもなく兵器の一つも出てこない映画ながら,戦争とはいかなるものかを雄弁に物語る.
俳優は皆素晴らしいが,本上まなみの好演にはうれしいびっくり.地味だが見るべき映画.
★★★★☆(★5個が満点)
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2007/08/12

独断的映画感想文:墨攻

日記:2007年8月某日
映画「墨攻」を見る.
2
2006年.監督:ジェイコブ・チャン.
アンディ・ラウ,アン・ソンギ,ワン・チーウェン,ファン・ビンビン,ウー・チーロン,チェ・シウォン.
紀元前370年頃,燕攻略の軍を起こした趙は,途上にある梁城に10万の兵で攻め寄せる.
住民4千人の梁城にこもる梁王は,戦闘集団で名高い墨家に救援を求めたが得られず,趙の巷淹中将軍に降伏することを考えていた.そこに墨家より革離と名乗る軍師が一人でやってくる.
梁王より全軍の指揮権を与えられた革離は,7日間で城の全面に出城を築くや,縦横の籠城戦を展開し押し寄せる趙軍を翻弄する.騎馬隊の女指揮官逸悦は,革離に愛情を寄せるようになる….
日本の小説・コミック(共に未見)を原作とした中国・香港・日本・韓国の合作映画.
なかなかがっしりとした造りの映画である.1

アンディ・ラウの革離は,理想主義的軍略家像を描いて,十分に魅力的.また,CGに頼らない戦闘シーンは撤退する趙兵の不安そうな表情,恐怖の表情が見て取れ生々しい迫力がある.
革離と逸悦との愛の行方も安易な結末とならず,ラストシーンは印象的である.
只,映画全体としては注文をつけたいところはいっぱいある.
そもそもは10万対4千の戦いの開始に際し,革離に全軍指揮権を梁王が何故与えたのか,ということの納得できる説明がない.その後の卑怯姑息な梁王の動きを見れば,この時点で革離を巷将軍に売り渡して降伏するのがむしろ当然であろう.
また城郭の全体像を俯瞰するシーンがないので,戦闘がどこでどう起こっているのか観客に判り難い.知略の限りを尽くして行われる籠城戦である以上,CGを使ってでも城郭の全貌を提示するシーンがあって良かったのではないか.
それでも見て損はない映画,但し男性向きか.
★★★☆(★5個が満点)
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2007/08/05

独断的映画感想文:マイアミ・バイス

日記:2007年8月某日
映画「マイアミ・バイス」を見る.
Miami_vice_2_800
2006年.監督:マイケル・マン.
コリン・ファレル,ジェイミー・フォックス,コン・リー,ナオミ・ハリス,キアラン・ハインズ.
80年代人気のTVシリーズの映画化だが,そちらは未見.
マイアミ警察の特捜課チームが売春の捜査中情報屋アロンゾから緊急の電話が入る.捜査官ソニーとリコが急行し話を聞くと,彼の家族が拉致されFBI潜入捜査官殺害の手引きを強要されたとのこと.潜入捜査に関する情報が漏れているらしい.
FBIは顔の割れていないソニーとリコに,情報漏洩源の潜入捜査を依頼する.
二人は仕事の出来る運び屋というふれこみで仲介のイエロに接触,コロンビアの元締めモントーヤと会って麻薬輸送の請負に成功する.
二人の潜入は順調に進むが,ソニーはモントーヤの女イザベラと愛し合うようになって….
フェラーリや小型ジェット,高速艇を駆使して陸海空を駆け回るソニーとリコ,夜景の描写やバックミュージックはなかなか感じが良い.二人のプロフェッショナルな仕事ぶりがかっこよく,映画のテンポもまずまずというところ.
しかしいささか分かり難いところもある.ソニーとリコがフェラーリや小型ジェットを乗り回すのは,どうしてなのか?
マイアミ警察特捜課ってそういうところなのか.それともTV版を見ている人には周知のお約束(実は二人は大金持ちとか)なのか?
二人の人物像も映画の中ではほとんど描写されない.
その割に長尺なのはロマンスやベッドシーン,濡れ場に時間を割いているからだが,これがもう一つ.
リコのシャワー中に同僚の女性刑事トルーディが,ソニーのシャワー中にイザベラが,入ってくるというシーンが各々あるのだが,何も同じ動きのシーンをそれぞれに撮らなくっても良いじゃないか.
両者のベッドシーンも(ベッドシーンが嫌いというわけではないが)冗長に思える.
これをカットして全体の動きをテンポアップすれば,90分くらいの作品になるんじゃないかしら.
刑事物としては標準的なのだろうけど,その辺が気になって★★★(★5個が満点).
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