独断的映画感想文:雨月物語
日記:2007年8月某日
映画「雨月物語」を見る.
1953年.監督:溝口健二.
京マチ子,水戸光子,田中絹代,森雅之,小沢栄太郎.
戦国時代の琵琶湖畔,源十郎と藤兵衛の隣同士は貧しい暮らしに愛想が尽きている.
ある日源十郎の作った陶器を二人して長浜に売りに出て意外の金を儲けたことから,二人は夢中で陶器を焼く.
折から羽柴・柴田の間で合戦になり村が徴発に会い男が兵に狩り出されるのをかいくぐり,二人は藤兵衛の妻阿浜を伴い,源十郎の妻宮木を息子と共に留守番として,焼き上がった陶器を売りに出かける.
町で陶器は首尾よく売れ,藤兵衛はその金で具足槍を買い調え,阿浜の止めるのも聞かず戦陣に加わろうと立ち去ってしまう.
一方源十郎は通りかかった若狭姫と乳母右近の求めるまま,陶器をその屋敷に届ける.
そして源十郎は右近の勧めに従い屋敷に逗留し,姫と契りを結ぶのだった….
上田秋成作「雨月物語」の「浅茅が宿」「蛇性の淫」を基に脚本化された映画.
溝口健二は,この映画と前年の「西鶴一代女」,翌年の「山椒大夫」とを併せ,ベネチア国際映画祭3年連続受賞の快挙を成し遂げた.
この映画は溝口の特長であるワンカットワンシーンの長回しや,古典劇らしい台詞使い,流麗で夢幻的な美術,様式美にあふれた映像など,日本映画の素晴らしい財産ともいうべき映画の要素を堪能することができる.
映画のポイントはやはり,若狭の屋敷での最期の場面と,命からがら帰り着いた自分の家での息子と宮木との邂逅であろう.
前者では死霊の正体を現した京マチ子の凄絶さと,毛利菊江の台詞回しが圧巻.後者では源十郎を迎えその身の世話を焼き,服の繕いを夜なべまでして朝日と共に消えゆく宮木(の幽霊)の哀れさが,感銘的である.
エピローグで源十郎に語りかける宮木の独白も素晴らしい.一見の価値ある映画.
★★★★☆(★5個が満点)
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