独断的映画感想文:プルーフ・オブ・マイ・ライフ
日記:2007年8月某日
映画「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」を見る.
2005年.監督:ジョン・マッデン.
グウィネス・パルトロー,アンソニー・ホプキンス,ジェイク・ギレンホール,ホープ・デイヴィス.
この映画,邦題の付け方には疑問が残る.原題は単に「プルーフ」である.
映画の冒頭,居間でイライラとTVのザッピングをしているキャサリン,父親のシカゴ大学教授が現れ親子の会話となる.翌日はキャサリンの誕生日,教授がシャンパンを送りそれを開けるキャサリン.
会話が続く中,実は教授は1週間前に亡くなったことが明らかになる.
やがて2階から下りてくる教授の弟子ハル,彼は教授の残した膨大なノートを調査に来たのだ.彼との会話から,教授はこの5年ほど精神を病んでいたことが明らかになる(その発病自体は27歳頃だったと,冒頭の会話で教授自身が明らかにしている).
キャサリンはハルがその晩1冊のノートを持ち帰ろうとしていたのをとがめ,警察に通報する騒ぎとなる.
翌日N.Y.から姉クレアが現れるが,彼女は会計士として成功していた.教授の介護に疲れ情緒不安定なキャサリンに対し,クレアは教授とキャサリンが過ごしたシカゴの家を直ちに売却,キャサリンをN.Y.に連れ帰ると言う….
戯曲として上演されてきた作品を,その戯曲と同じ女優をヒロインとして作られた映画.
キャサリンは姉と異なり,父親と似て天才的な数学家である(実はこのことが映画の中ではもう一つ分かり難い).父親のように精神に異常を来すのではないかという不安から離れられないと同時に,父親からの自立と,精神を病んだ父親の介護と言う現実との葛藤に苦しんできた.
映画はこのキャサリンが,教授の死後学問を捨て姉の保護下に暮らすのか,ハルとの人間関係を打ち立て自立していくのかを,ノートから発見された数学の新理論の作者が誰かという謎を軸に,過去の回想を織り交ぜて描いていく.
この映画のポイントは「親殺し」である.
人間は誰しも,自らの自立の過程で,思春期までの親との関係の清算を迫られるときが来る.河合隼雄に依れば,これが心理学的「親殺し」である.
親子として,数学の師弟関係として,殆ど教授と一体化した人生を送ってきたキャサリンが,教授の精神の崩壊に直面して「親殺し」をしなければならなくなった書斎のシーンは,極めて印象的である.
俳優ではグウィネス・パルトローが良い.昂揚した表情から不安のために脅える表情へと一瞬で変わる場面など,見応えがある.
映画としては上記のように,キャサリンが天才的数学者であるとは殆ど明示されないので,新理論を実はキャサリンが発見したのかも知れないという展開が,いささか受け容れがたい.
しかしその点を割り引いても面白く,また後味の良い映画だった.
ところで,僕自身の子供達も何時かは「親殺し」に直面するのだろうか.イヤ,もう済ませてしまったかも?
★★★★(★5個が満点)
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コメント
TBありがとう。
まず、歴史上、天才数学者というのは、せいぜい30歳までで、それ以上は現れません。だから、老教授の発見ということは、凄いことなんです。また、それにも輪をかけて、女性の世界的数学者というのは少ないんですね。そこから、キャサリンの神秘も現れている。
いわば、この親子が、二重のありえない天才数学者というところに面白さがあります。
投稿: kimion20002000 | 2007/08/28 00:45
新年あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い致します。
早速ですが、kimion20002000さんへのコメントが僕の記事に入っていましたのでご連絡申し上げます。
それから、kimionさんのところへはちゃんとTBが入っているようですよ。勿論僕のところにも。
しかし、僕のTBがこちらには入っていないようなので、URL欄に該当URLを差し込んでおきました。
投稿: オカピー | 2010/01/02 16:34