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2007/09/21

独断的映画感想文:砂の器

日記:2007年9月某日
映画「砂の器」を見る.
1974年.監督:野村芳太郎.0
丹波哲郎,加藤剛,森田健作,島田陽子,山口果林,加藤嘉,笠智衆,松山省二,内藤武敏,佐分利信,緒方拳,渥美清.
松本清張原作の傑作推理小説の映画化.一部ネタバレあります.
昭和46年,蒲田操車場で男性の殴殺死体が発見される.遺留品から被害者はその夜,あるバーで人と会っていたことが判るが,その身許も会った相手も判らない.
只,会話が東北弁風だったことと,「カメダ」という固有名詞が聞こえたことが判明する.
捜査本部の今西,吉村両刑事がそのカメダは人名ではなく地名ではないかと,秋田県の亀田に降り立つところから映画はスタートする….
ところで映画の前半は,そういっては何ですがあまり大したことはない.
とにかくやたら刑事が出張する映画で,その日本各地の映像は美しいし,テンポも悪くない.悪いのは脚本だろうか(橋本忍さん・山田洋次さんご免なさい).
冒頭のシーン, 秋田県亀田での捜査は延々と続くが,実はこの亀田は全くの見当違いなのである.原作も同様の記述だが,原作は小説だからこの無駄に終わる捜査の章はそれなりに意味があるが,映画になってみるとこの亀田のシーンは如何にも冗長である.
そして決定的な点は,身許の明らかになった被害者の身辺捜査から浮かび上がった,被害者が親身に世話をした少年本浦秀夫と,大阪空襲で両親を失い一人生き残った少年和賀英良が,実は同一人物だという証明がなされていない.
今西刑事はどうやって和賀英良にたどり着いたのだろうか.
その他にも突っ込みたい点はいくつかあるが,全体としてもたもたした前半の捜査ぶりが,和賀英良逮捕に向けた合同捜査会議に結実する展開には,かなりの唐突感がある.
しかしそんなことは実はどうでも良いのだ.3
映画開始後1時間半で始まる合同捜査会議,並行して和賀英良渾身の新作,交響曲「宿命」の演奏会場が俯瞰される.
三々五々集まる聴衆,リハーサルが終わり演奏開始を待つ楽団員.捜査会議では次々と証拠が挙げられ犯人の証明が読み上げられる.
やがてその殺人の動機につながる和賀英良の生い立ちを,今西刑事が説明する.演奏会場で始まる「宿命」の演奏,画面には和賀英良の少年時代,父と二人放浪巡礼の旅に出るため出生の地に別れを告げる姿が映し出される.
ここで映画の主客は完全に入れ替わり,以後映画は和賀英良(本浦秀夫)父子の放浪の旅と交響曲「宿命」の演奏を,捜査会議での今西刑事の説明を背景として描いていく.
その放浪の映像は哀切きわまりなく,そして美しい.映画後半の大半を占めて描かれる放浪の旅と「宿命」の演奏,この構想を得たことは何と素晴らしいことだろう.これぞ映画という感動を持たずにいられない.
俳優では加藤嘉が文句なしに素晴らしい.
病魔に冒され殆どワンフレーズの台詞しか発しないにも拘わらず,その演技はストレートに観客の胸を打つ.
他にも懐かしい俳優がきら星のようだ.見て損はなし.4
★★★★(★5個が満点)
蛇足:捜査会議で「順風満帆」を「じゅんぷうまんぽ」と発言したのは内藤武敏だったろうか.
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» ★「砂の器」、はたして名作なのか!?★ [★☆カゴメのシネマ洞☆★ “Kagome's Cinema-Cave”]
「砂の器」(1973) 日本 監督:野村芳太郎製作:橋本忍 佐藤正之三嶋与四治製作補:杉崎重美 企画:川鍋兼男原作:松本清張 『砂の器』脚本:橋本忍 山田洋次撮影:川又昂美術:森田郷平編集:太田和夫音楽監督:芥川也寸志作曲・ピアノ演奏:菅野光亮出演:丹波哲郎 ....... [続きを読む]

受信: 2007/09/22 17:22

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