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2007/09/18

独断的映画感想文:血の婚礼

日記:2007年9月某日
映画「血の婚礼」を見る.3
1981年.監督:カルロス・サウラ.
アントニオ・ガデス,クリスチーナ・オイヨス,ファン・アントニオ・ヒメネス.
カルロス・サウラ監督が,アントニオ・ガデスの舞踊団と組んで撮影した3部作の最初の作品.65分の小品には,後にカルロス・サウラを特徴付けるいくつかのモチーフを見て取ることが出来る.
ダンススタジオの楽屋を準備するスタッフ,やがてその楽屋に舞踊団の一行ががやがやとやってくる.
荷物を解いて化粧箱を出し,メイクを始めるダンサー,ギターの音あわせも始まる.化粧台の鏡に家族の写真やマリア像を挟み込む人.
ガデスが挟み込んだ写真は,若い日に旅回りをしていた一座の写真だ.
カメラが楽屋の人々の表情を捉え,それにガデスの若い日を語る独白が重なる.
やがてスタジオに現れるガデス,一人息を呑むように美しい身体の動きで,流れるような踊りを見せる.その後に続きダンサー達が現れる.2
いくつかの動きを集団でレッスンした後,通しのドレス・リハーサルを行うとのガデスの指示で,皆支度にかかる.
ここまでが前半,後半は通しリハーサルの形で描かれる「血の婚礼」の本番.
婚礼の朝を迎えた花婿とその母,しかし花嫁は妻子ある男との愛を諦めることが出来ない.婚礼が始まり,皆の祝福の中,しかし遂に花嫁は男とその場から逃げ出す.後を追う花婿,やがて追いついた花婿と男との間での決闘が始まる….
ギター演奏と歌と踊りのみで描かれるこの舞踊劇は,しかし素晴らしい緊張感の持続で観客を魅了して離さない.4
当代随一のスペイン舞踊家によって演じられる,愛と誇りに命をかける男と女の美しさ.間奏曲のように挿入される,マリソルのアカペラの子守歌にも心を打たれる.
ドキュメントに近い作品だが,強い印象を与える映画,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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コメント

ああ、カルロス・サウラ、アントニオ・ガデス!懐かしい。観たのはもう20年も前か。このレビューを読んでいたら「カルメン」と「血の婚礼」をたまらなく観たくなってきました。80年代のスペイン映画は傑作がたくさんありました。
新作もいいけれど、最近は懐かしい映画を観直したくなります。

投稿: ゴブリン | 2007/09/27 23:01

ゴブリンさん,コメント有り難うございました.

日本人にはないこの情熱の表現,命をかけて美しさを競う男と女.

アントニオ・ガデスとカルロス・サウラの3部作には,まさに衝撃的印象を受けました.

今この映像は入手がかなり困難なようですね.

投稿: ほんやら堂 | 2007/10/01 21:37

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