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2007/09/02

独断的映画感想文:山椒大夫

日記:2007年9月某日
映画「山椒大夫」を見る.
1954年.監督:溝口健二.02
田中絹代,花柳喜章,香川京子,進藤栄太郎,河野秋武,浪花千栄子,毛利菊江,津川雅彦(厨子王の子役).
「西鶴一代女」「雨月物語」に続き,ヴェネツィア国際映画祭3年連続入賞を果たした映画.
平正氏は領民に情けをかけ,朝廷の怒りを買い筑紫の国に流される.
数年後,妻玉木はその子安寿と厨子王を連れ,侍女姥竹と共に筑紫に向かう途中越後で人買いに騙され,姥竹は死に玉木は佐渡に売られ遊女となる.03
安寿と厨子王は丹後の荘園を管理する山椒大夫に売られ,奴婢としてこき使われ10年の月日が流れた.
玉木は繰り返し脱走を図ったためにその足の筋を断ち切られ,それでも朋輩の助けを借りては島の絶壁に上がり,本土を望んで声の限りに安寿と厨子王の名を呼ぶ.04
山椒大夫の荘園で成長した安寿と厨子王は,ある日死にかけた老女を山に捨てに行く様命じられる.山で安寿は自分たちの名を呼ぶ不思議な声を耳にし,兄厨子王に脱走を勧め,一人逃れて母と自分を救ってくれと懇願する.
厨子王はその勧めに従って脱走するが,安寿は兄の行方を責められ白状することを恐れ,入水して命を絶った….06
この2時間を超える映画は時のたつことを意識させない.最初から最後まで一息に見てしまう.
何と言ってもカメラワークが素晴らしい.この時代ズームがなかったということだが,こちらに接近してくる(ズームを使うとそうなる)のではなく,こちらから近づいていく形になるアップや,長回しの中,微かに動きながら微妙に位置を変えていくカメラの動きが,自然で美しい.
特に印象に残るシーンは,水辺のすすき野を行く親子たちのシーン,人買いに引き裂かれる海岸のシーン,安寿の入水のシーン,母子再会のシーンだろうか.01_2
シーン一つ一つが入魂の画として,目に焼き付く様だ.
脚本としては,原作と違い厨子王が兄なので,妹を置いて兄が逃亡したという形となったことや,国守に任ぜられた後の厨子王の行動等に多少の違和感があるが,後者については1954年という時代の,今の我々からは想像できない反映があるのかも知れない.
映画芸術の一つの頂点として,一見の価値ある映画である.
★★★★☆(★5個が満点)07
ところで,田中絹代は溝口監督から,撮影中肉食を禁じられ,菜食を指示されその通りにしたそうだ.
撮影が終わった夜,京都の町に出てビフテキを食べたところ,翌日のアフレコで監督のOKが出ない.監督からは「何か食べたでしょう」といわれ,「厨子王」という一言にOKが出るまで5時間かかったそうである.
戸板康二の「新ちょっといい話」に載っている挿話.


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