独断的映画感想文:守護神
日記:2007年10月某日
映画「守護神」を見る.
2006年.監督:アンドリュー・デイヴィス.
ケヴィン・コスナー,アシュトン・カッチャー,メリッサ・サージミラー,ボニー・ブラムレット.
ベン・ランドールは既に200人以上を救命したといわれる合衆国沿岸警備隊(USCG)のレスキュー・スイマー,アラスカ沿岸のコーディアックを基地としている.
映画の冒頭,大時化の海上に漂う男女にヘリコプターが近づく.
ヘリから海中に飛び込むベン,漂流者に近づくと女性からバスケットに乗せて救出しようと声をかける.ところがバスケットが近づくと自分が先に乗ろうと妻を押しのける夫,ベンは夫にパンチを食わせるが妻は海中に没してしまう.
夫を先にバスケットで吊り上げ,ベンは妻を追って海中深く潜水,妻を捉えてヘリコプター上に吊り上げる.機上で直ちに心マッサージを試み,ようやく息を吹き返す妻.無事帰還して家に帰ったベンを待っていたのは,自分の妻が家財をまとめて出て行く姿だった….
ベンはこの後出動した遭難船舶の救援で,思いがけぬアクシデントからチーム全員を失い,心身に深い傷を負う.彼の身を案じた指令ハドレーは,ベンにレスキュー隊員の養成校「Aスクール」の期限付き教官就任を命じる.
現場叩き上げのベンはAスクールの教官達と当初は衝突するが,圧倒的な指導力で彼らを信服させ,30人のクラスの18週にわたる課程を指導していく….
そのクラスの俊英ジェイクは高校の水泳チャンピオンだったが,大学の誘いを蹴ってUSCGに志願した変わり種,しかし何故かチームにとけ込もうとしない男だった.
映画はジェイクを中心としたクラスの卒業までの成長の物語と,卒業してベンと同じコーディアックに赴任したジェイクの活躍を描く.
ところで僕はケヴィン・コスナーが好きである.
もちろん,「ポストマン」等の目を覆うような失敗作を作ったことも重々承知しているが,俳優としての彼は好きだ.この映画でもその渋さと男っぽさが存分に発揮されている.
またこの映画の絵造りも素晴らしい.
上記の冒頭のシーンでも,俯瞰される大荒れの波立つ大海原からベンが苦闘する救難シーンへのつなぎがスムースで,こっちの絵はプールだろうなと理屈では判っていても映画の魔術に取り込まれてしまう.
ストーリーもオーソドックスといえばその通りだが,ベテランとフレッシュマンの双方の視線が交錯する展開と,両者がそれぞれ抱えるトラウマの描写も印象的.
救難者の抱く苦悩というテーマはこの映画の最後まで貫かれており,ラストのベンが夜の海面に落ちていくシーンは,宗教的な荘厳ささえ感じられた.
また,ベンの妻との関係も(人ごとでなく)胸を打たれる.終盤,久しぶりに妻を訪ねて自ら別れを告げ,しかし別れ際に彼女の髪に顔を埋めるシーンは,心に残った.
もう少しテンポアップして全体の尺を縮めたらもっと良かったかも知れない.
酒場のママで登場するボニー・ブラムレットの歌,エンドロールでのブライアン・アダムスの歌も渋い.見て損はない映画.
ところで冒頭のシーンは二重の意味で終盤の伏線になっているので,お忘れ無きよう.
★★★★(★5つが満点)
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