独断的映画感想文:ゲルマニウムの夜
日記:2007年9月某日
映画「ゲルマニウムの夜」を見る.
2005年.監督:大森立嗣.
新井浩文,広田レオナ,早良めぐみ,大森南朋,石橋蓮司,佐藤慶.
降り積もる雪の中ひたすら歩く家畜の牛たち.それをバックにタイトルが出て映画は始まる.
冒頭,ラテン語を呟きながら聖書を読む修道院の小宮院長.カメラが引くと彼はズボンを履いていない.
隣に座る朧がひたすら院長の股間をしごいている.
朧は以前ここにいて,又最近舞い戻ってきたらしい.
彼は独房の様な個室に住み,修道院の畜産場で働いている.やり場のない怒りをものや犬に向かって爆発させる朧.
ある晩,修道院のアスピラント(尼僧志願者)である教子と巡り会った朧は,彼女によって初めて女性を知ることになる.自分は殺人者で強姦魔だとうそぶいていた朧は,実は童貞であった.
しかしそれ以降も朧は尼僧テレジアを抱こうと迫り,また周囲の朋輩や先輩に容赦のない暴力をふるう.まるで「神への冒涜」を追求しているかの様だ….
映画の描く修道院は荒涼とした寒々しい世界だ.
欲望を穏やかに満たされる様な如何なるシーンも(例えば食事とか,団らんとか)映画は描かない.
その代わり描かれるのは,暴力と殺人,汚辱に満ちた背徳のセックスシーンだ.
この映画は見て楽しい映画ではないが,しかしその中に象徴的に描かれる幾つかのシーンは印象的だ.
例えば肩に鉄パイプを背負いゴミ捨て場に立つ朧は,十字架上のキリストのようだし,朧が教子と出会う場面に挿入される教子が髪を洗うシーンは,聖母マリアを連想させる.
役者では新井浩文が熱演である.
僕は生理的にこの人は苦手なのだが,この映画にはこの人しかいないと思わせるだけの演技だった.
見終わってから次々と想像力の広がる映画.極めて刺激的な,そして後に哀しさの残る映画である.
少々グロテスクな映像を乗り越える必要はあるが.
★★★☆(★5個が満点)
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