独断的映画感想文:春夏秋冬そして春
日記:2007年11月某日
映画「春夏秋冬そして春」を見る.
2003年.監督:キム・ギドク.
オ・ヨンス,キム・ジョンホ,ソ・ジェギョン,キム・ヨンミン,ハ・ヨジン.ネタバレあります!!
とある山の中の湖,湖岸に仁王門がある.
その門を開けると船着き場があり,湖の中央に一棟のお堂がある.
春,そのお堂には老僧と小坊主が住み暮らしている.いたずら者の小坊主は,ある日ヘビや蛙をいじめて殺してしまう.老僧は小坊主に諭し「おまえは一生その業を背負って暮らすことになる」と言う.
夏,17歳になった小坊主は,病気祈祷のためにお堂に泊まり込んだ少女と恋に落ち,かって蛙をいじめた川の畔で少女と結ばれる.そのことは老僧の知るところとなり,少女はお堂を去ることになるが,少年僧もその後を追ってお堂を後にする.
秋,更に十数年後,老僧は一人飄然と暮らしているが,そのもとにかっての少年僧が,裏切った妻の相手を殺して逃げ込んでくる.老僧は追ってきた警官を説得し,お堂の床に般若心経を書いて男にそれを刻ませる.翌日男は般若心経を刻みきり,怒りを収めて連行されていった.
冬,更にそれから月日が経ち,老境となった男は誰も住む人のいないお堂に戻ってくる.仏に祈りひたすら心身を鍛える男,ある日子供を抱いた女がお堂を訪れる.女は子供を置いて夜中にお堂を去ろうとするが,氷の穴に落ちて命を絶つ.それを知った男は,かってヘビをいじめたときのように自分の身体に石を結びつけ,寺の秘仏を抱えて湖を見下ろす山頂を目指す.山頂でひたすら祈りを捧げる男.
やがて老僧となった男は,小坊主となった子供と共に,お堂で春を迎えるのだった.
映画の構成は明快で,起承転結エピローグ,物語は始まったところで終わる.
その構成で映画が輪廻の一つの表れを描いていることも,明らかだろう.
この舞台となる湖上のお堂と仁王門,それを取り巻く山並みの四季の美しさは,この映画の成功の決定的な要因である.俗世界と隔絶されたこの象徴的な空間,映画冒頭のこの風景を見ただけで,観客は深く映画に引き込まれるだろう.
観客はそれ以降,美しく変化していくその湖上の風景と,題名に暗示される輪廻の物語の展開をひたすら見ていくことになる.
春夏秋冬のそれぞれの章で主人公を演じる俳優は全く別人なのだが,寓意性がはっきりしているので,それが同一人物であることは明らかである.
極めて映画らしい映画,安心して美しい画面に見入ることが出来る.
★★★★(★5個が満点)
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