独断的映画感想文:街の灯
日記:2007年11月某日
映画「街の灯」を見る.
1931年.監督・制作・脚本・作曲・主演:チャールズ・チャップリン.ヴァージニア・チェリル.
不景気な世の中,ルンペン暮らしのチャーリーはあてもなく街をさすらう.
その街角で花を売っている娘に一目惚れし,なけなしの金を出し花を買う.
娘は盲目で,チャーリーのことを大金持ちと誤解した様子.チャーリーはその娘のために何とか金を稼ごうと奮闘するが….
あまりにも有名なチャップリンの傑作.
映画の物語は夢のようだ.
そもそもこういう「ルンペン」は,今の世の中に存在しないだろう.そのルンペンと(例え貧しく盲目であっても)美しい娘の恋なのだから.
撮影は固定カメラを使ったフレームイン・フレームアウト,今時の映画の撮り方に比べれば,舞台劇かテレビドラマのような撮影だ.
トーキーが始まっていたにも拘わらずあえて無声映画的演出を採用したことも,この映画の特徴だろう.
しかしこの映画の魅力は,そういう枠組みにも拘わらず,あるいはそういう枠組みだからこそ色あせなかった,ギャグネタの積み重ねにある.
お約束の山高帽をかぶりステッキを持ち,白塗りの顔にチョビ髭と眼だけが際だつ扮装.その扮装で次から次へとエネルギッシュに展開されるギャグ,有名なボクシングシーンや二人で何度も波止場から海に落ちては這い上がるシーン,ダンスホールの滑る床の上でのどたばたシーン,そのギャグネタは,チャップリンの類い希な演技力により未だに新鮮だ.
明快なロマンスの軸の回りにギャグの数々を積み上げ,最後の最後にロマンスが成就するシーン,この映画で初めて大写しにされたチャップリンの恥ずかしげな笑顔が素晴らしい.
その時,観客はチャップリンの魔法で,いつかこの夢物語の虜になったことに気付くだろう.
映画の楽しさを教えてくれる一つの記念碑.
★★★★☆(★5個が満点)
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コメント
ほんやら堂さん 今晩は。
この作品は僕も大好きな作品です。チャップリンの作品はどれも好きですが、一番好きなものを選べと言われたら迷うことなくこれを選びます。
ある方がブログで「コメディなのに泣いてしまった」と書いていましたが、この映画の魅力はそれに尽きる気がします。
これまでに3、4回は観ていますが、また観たくなりました。
投稿: ゴブリン | 2007/12/18 01:06
ゴブリンさん,こんばんは.
チャップリンのギャグネタの面白さに改めて脱帽です.
マルクス兄弟と並び未だにお手本にされるようなネタの数々を,完璧に演じるチャップリン.
その爆笑するネタの積み重ねが,最後の涙をもたらすのでしょう.
投稿: ほんやら堂 | 2007/12/18 22:15