独断的映画感想文:天然コケッコー
日記:2007年12月某日
映画「天然コケッコー」を見る.
2007年.監督:山下敦弘.
夏帆,岡田将生,夏川結衣,佐藤浩市,柳英里沙,藤村聖子.
山下監督の映画は「リアリズムの宿」「リンダリンダリンダ」(香椎由宇ちゃん,再度結婚おめでとう!)「松ヶ根乱射事件」以来4作目である.
島根県木村町(架空.ちなみに近隣には中居町,草彅町があるらしい)の小中学校.
中2の右田そよは,この学校の最上級生.と言っても生徒は小学生を入れて全校で6人しかいない.今日は東京から転校生が来るというので,皆歓迎の支度にてんてこ舞い.
転校生はイケメンの男子大沢広海君で,そよは初めて同級生を持つことになる.こうして始まる学校の春夏秋冬とそよの成長の物語.
山下監督としてはまことに正攻法真っ向直球勝負の作品.
美しく移り変わる四季の風景が描写され,その中で初恋がゆったりと進む.
主人公そよは純朴で優しく,面倒見がよいが世事に疎い.祭りの夜後輩たちのからかいで,お宅っぽい郵便局員の車で送ってもらうことになりかけても,只涙を流すことしかできない.東京に修学旅行に出かけたときは,人波に圧倒されそのまま流されそうになって,危うく大沢君に助け出される始末.
しかし学校には,1年生のさっちゃんの後に続く児童がいないのだ.子供がいなくなると廃校になるのだと大沢君が言う.
そよは「もうすぐ消えてなくなるかもしれんと思やあ、ささいなことが急に輝いて見えてきてしまう」と思うのだ.
学校だけではない.木村町のような農村も,今の農政のもとではもうしばらくしたら無くなってしまうだろう.
重く実った稲穂,青々と続く田んぼももうすぐ消えて無くなってしまうかも知れない.そう思えばその映像の何と輝いて見えることだろう.
そういうことを思わせる,美しい映画である.
最後のカット,卒業式の後そよと広海君が教室で「ちゅう」をし,二人が教室を出る.その後,カメラは薄暗い教室をじっとなめていく.
やがてそのカメラが窓辺に寄っていくと明かりが射し桜の花びらが舞い込んできてカーテンが翻る.窓辺には校庭から教室を覗き込んでいるそよがいる.高校の制服を着たその姿は思いがけず大人っぽい.背景の校庭には花見の支度をしている後輩や先生,家族たちがいる.
この長回しのワンカットが印象的.
★★★★(★5個が満点)
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