独断的映画感想文:松ヶ根乱射事件
日記:2007年12月某日
映画「松ヶ根乱射事件」を見る.
2006年.監督:山下敦弘.
新井浩文,山中崇,川越美和,木村祐一,三浦友和,キムラ緑子,烏丸せつ子.
山下監督の映画は「リアリズムの宿」「リンダリンダリンダ」(香椎由宇ちゃん,結婚おめでとう!)以来3作目である.
一面の雪の中,赤いコートの女が仰向けに倒れている.足跡は一つもない.
そこにとことこと小学生が通りかかる.女の傍らにうずくまる小学生….
次のシーン,女は死体検案の為裸で解剖台の上に横たわっている.新井浩文の巡査光太郎が覗き込んで「生きてるようです」.
このようにスタートするダークコメディ.
松ヶ根は片田舎の平穏な村,くそ真面目な巡査光太郎,双子の兄光は姉夫婦が経営する実家の畜産業をいい加減に手伝っている.父は口先だけの不実な男で愛人宅に転げ込んでいる.
息を吹き返した女には連れがいて,やがてこの二人が松ヶ根に何をしに来たかが明らかになる….
冒頭のシーンは「ファーゴ」を思い起こさせるが,やることなすことうまくいかず物事がどんどん悪い方に転がっていった「ファーゴ」に,この映画も似てなくもない.
但しこの映画では日本の田舎の閉塞性とよどんだ不快感が,個性豊かな闖入者のおかげであからさまになっていくという展開である.
だいたいこの村は異様に好色な村である(それとも日本の田舎って皆こうなのかしら).冒頭のシーンでも小学生は倒れている女をさわりまくるし,床屋の2階では娘が客を取っているし,バス停ではじいさまが女高生にパンツを下ろさせている.
光太郎の父親のだらしなさも印象的,この人は愛人宅(床屋)に転げ込んだ挙げ句その娘に手を出して妊娠させ,実家に舞い戻ってくる.その上光太郎の見合に出てきて偉そうに畜産業の仕事の厳しさを物語ったり息子に説教したりする.
そのいやらしさはいっそ痛快なほどである.演じた三浦友和は絶品.
不快感といらいらの挙げ句にフィナーレの乱射事件となるのだがこれもまた絶品で….ここは見てのお楽しみ.
この映画の味は,物語の不快といらいらの展開を,とぼけたくすくすで描いているあたりか.山下ワールドらしい映画.
★★★★(★5個が満点)
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