独断的映画感想文:仕立て屋の恋
日記:2007年12月某日
映画「仕立て屋の恋」を見る.
1989年.監督:パトリス・ルコント.
ミシェル・ブラン,サンドリーヌ・ボネール,リュック・テュイリエ.
空き地で若い女性の絞殺死体が発見された.刑事は近所を聞き込み,皆に嫌われている仕立て屋,イールを尋問する.
イールは端正な顔をした小柄な男.黙々と服を仕立てているが,ロシア系で何故か嫌われ者,アパートの悪ガキが平気で彼にものを投げつけたりする.
イールの方も回りへの嫌悪を隠さない.刑事は彼を容疑者として,たびたび尋問に訪れる.
そのイールは自宅の窓辺から,向かいのアパートの女をのぞき見している.
その女アリスは,エミールという青年と婚約中だ.毎夜自室の明かりを消し,音楽をかけながらじっと向かいの窓を見下ろすイール.
ある嵐の夜,稲妻の光でアリスはイールの覗きに気づく.
アリスは何故かイールに近づき,彼を昼食に誘うのだった….
映画は途中まで,得体の知れないイール氏と周囲との関係が判然とせず退屈に思えた.
ところがある時点から物語が動き出す.ミステリーとロマンスとサスペンスが一体となって終幕まで一気になだれ込む.この展開が素晴らしい.
原作はメグレ警視シリーズで有名なジョルジュ・シムノン,さすがです.
終盤のどんでん返しもすごいが,ラスト前の主観ショット(イール氏の目から見た流れゆく光景),イール氏の台詞「僕は君を恨んでないよ.死ぬほどせつないだけだ」,それぞれが印象に焼き付く.
80分と短い映画だが,一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)
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