独断的映画感想文:あなたになら言える秘密のこと
日記:2007年12月某日
映画「あなたになら言える秘密のこと」を見る.
2005年.監督・脚本:イザベル・コイシェ.
サラ・ポーリー,ティム・ロビンス,ハビエル・カマラ,ジュリー・クリスティー.
工場で労働者として黙々と毎日働くハンナ,誰とも口をきかずその生活は禁欲的で,ときおりの夜,年配の女性インゲに電話をかけるが話をすることはない.
ところが全く休暇を取らないハンナは,半ば強制的に工場から休暇を取らされ,とある街に出かけることになる.
食事を取っていた食堂で看護師を捜しているという話を耳にし,ハンナはその仕事に応募する.仕事は海上に隔絶された石油掘削基地で,事故のため火傷を負った患者ジョゼフの看護をすることだった.
ジョゼフは火傷と同時に角膜を痛め一時的に失明している.
自分のことをほとんど話さず(最初は名前さえ名乗らない)無口に看護を続けるハンナに対し,ジョゼフは絶えず言葉をかけ続ける.やがて僅かに心を開いていくハンナ.
ハンナは曲者揃いの職場の男たちとも徐々に不思議なバランスを得ていく.しかし,ジョゼフとハンナには,深い心の傷があった….
中盤までは動きに乏しく,何度も居眠りをしかけた.
言うとネタバレになるが,ある理由から彼女の生い立ちや出身地,彼女が本当に看護師なのかなどという背景には一切触れないので,物語の展開は限定され退屈である.
しかしある日,ジョゼフは彼がその火傷を負うに至った理由を暗示する,自分の秘密を物語る.ジョゼフの居室を使っているハンナには,部屋で見た写真や携帯に残った伝言から,何が起こったかは明瞭に判っただろう.
翌日,今度はハンナが自身の秘密を語り始める.一度話し始めるともう止めることはできず,堰を切ったように最後まで物語るハンナ,そして彼女は自分の身体に残されたその証をジョゼフに示す.無言で彼女を抱きしめるジョゼフ….
翌日ジョゼフはヘリコプターで病院に搬送された.ヘリを降りた時点でハンナは姿を消す.
ジグソーのコマが全て填め込まれたこの時,映画は時間的空間的に奥行きのある舞台であったことが明らかになり,観客はその舞台の暗く深いことを強く印象づけられるだろう.
世界には今もこういうことが起こっている,それに思い及ばなかった自分自身のうかつさが,心に残る映画だった.
ティム・ロビンスははまり役.サラ・ポーリーはこういう難しい役にもかかわらず魅力的である.
冒頭から時々入るナレーションがある.そのナレーションの主が誰であるかは映画のエピローグで明らかにされるが,そのことも余韻となって印象深かった.
★★★☆(★5個が満点)
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コメント
TBありがとう。
僕もサラの告白まで、まったく彼女の孤独が何に由来しているのか、わかりませんでした。導入部から、サスペンスをみるようなかたちで、入り込みました。
投稿: kimion20002000 | 2007/12/19 01:47