独断的映画感想文:パプリカ
日記:2007年12月某日
映画「パプリカ」を見る.
2006年.監督:今敏.音楽:平沢進.
筒井康隆原作のSFサイコサスペンス.
精神医療研究所に勤める千葉敦子は,同僚の時田浩作と共にサイコセラピー機器を開発している.一方彼女は,少女「パプリカ」に変身してその機器を使った夢治療も極秘に行っていた.
ある日彼らが開発した未完成のサイコセラピー機器DCミニが盗まれる.それ以降精神医療研究所のスタッフが精神攻撃を受け発狂する事態が続き,理事長乾はサイコセラピー機器の開発使用を中断すると指示するが,事態はどんどん悪化していって….
何ともきれいなアニメである.僕はアニメはほとんど見ないが,この前の「鉄コン筋クリート」といい今回の「パプリカ」といい,実にきれいだ.日本のアニメ技術は本当に凄い.
致命的なのはアニメがきれいすぎて夢と現実の区別がつかないこと.
原作は夢・狂気・現実の三つどもえの混乱を描いているが,それら相互の関係は明確に識別されている.原作の最後の何でもありの大混乱に至るまでには,長く周到な助走が仕込まれているのだ.
アニメにあっては現実もきれい夢もきれい狂気もきれいというわけで,それら相互の緊張感がいささか感じられない.
パプリカは可愛く千葉敦子は美しいが,惜しいことである.
但し音楽は素晴らしい.おもちゃ箱をひっくり返したような化け物が道をやってくる行進のシーンが繰り返されるが,このシーンは音楽の迫力によって実に魅力的なものになっている(いくつか音楽を欠いた同様のシーンもあるが,そこにはそれほど魅力は感じない).
全体としては面白く見たが,やはり筒井作品の映画化には力足りず.
★★★☆(★5個が満点)
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