独断的映画感想文:Helpless
日記:2008年1月某日
映画「Helpless」を見る.
1996年.監督:青山真治.
浅野忠信,光石研,辻香緒里,斉藤陽一郎,伊佐山ひろ子.
高校生の健次は精神病院に入院中の父と二人暮らし.ある日傷害で服役中仮出所してきた幼なじみのやくざ安男と会う.
安男を迎えた組の男は,親分が死に組は解散,自身も堅気になったと言う.安男はそれを信じることが出来ず,組の男を射殺する.
健次と落ち合った安男は知恵遅れの妹ユリを健次に託し,親分の居場所を探しに出かけるが更に殺人を重ねることになる.
健次はユリと待ち合わせ場所の山中の喫茶店に着くが,そこではトラブルが健次を待っていた….
青山真治の初監督劇場映画・浅野忠信の初主演映画.
衝撃的で魅力的な映画である.
健次と安男が再会してからわずか24時間の出来事を描いたこの映画では,しかし6人が殺され2人が自殺する.北九州市周辺の濃密な地域性を背景に,安男とそして健次の圧倒的な暴力性が描かれるが,それにも拘わらず物語は哀切で主人公たちに共感を覚えずにいられない.
舞台となるやまなみから北九州市への空撮で始まる映画の冒頭も,観客を魅了するだろう.叙情的でかつ情報量の多いカメラワークが素晴らしい.
映画の最後,街に佇む健次とユリはどこへ行くのだろう.映画は,物語はここで終わるのではなく,ここから始まるのだということを強く暗示して終わる.
神話的広がりを伴って展開される濃密なドラマは,とても80分しかないとは思えない.想像力を激しく刺激する希有な映画.一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)
人気ブログランキングへ
コメント