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2008年1月に作成された記事

2008/01/27

独断的映画感想文:プレステージ

日記:2008年1月某日
映画「プレステージ」を見る.6
2006年.監督:クリストファー・ノーラン(制作・脚本も).
ヒュー・ジャックマン,クリスチャン・ベイル,マイケル・ケイン,スカーレット・ヨハンソン,デヴィッド・ボウイ.
冒頭,林の斜面に積み重なるいくつものシルクハットの不気味な映像.
画面は変わってマジックの考案者でプロデューサーのカッターが,可愛らしい少女にマジックを演じながらマジックの基本について説明する.それと平行して始まる場面ではマジシャン「偉大なるダントン」ことアンジャーの舞台が進行,その舞台下に侵入したライバルのマジシャン・ボーデンの面前でアンジャーは水槽に閉じこめられ水死する.
ボーデンはアンジャー殺害の容疑で収監され裁判が始まる….
アンジャーとボーデンは宿命のライバルである.
始め奇術師ミルトンのサクラとして同僚だった二人,しかしボーデンが禁じられたロープの縛り方をしたためアンジャーの妻が水槽脱出に失敗し水死する.1
その事件後二人は袂を分かち,互いに相手を陥れ,ネタを盗もうと腐心し,舞台を妨害するという熾烈な闘いを繰り返してきた.ボーデンの「瞬間移動」が大成功した後,アンジャーは「新・瞬間移動」を公開したのだが….
相手を叩きつぶし,自分が名声を得ようとまさに命がけの闘いを繰り広げる二人.そのために私生活も犠牲にし自らも傷ついていく.それを演じるヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベイルの演技は見応えあり.3_2
また最後のネタを巡って映画全体の中にちりばめてある伏線やヒントも,その手の映画が好きな人にはたまらない魅力であろう.
しかし最後のネタの評価を巡っては,議論の分かれるところであろう.
僕にはこのネタはルール違反に思え,認め難い.
また監督の時間軸を混乱させ場面を頻繁に入れ替えていく手法には,ついていくのが大変だった.映画の出来としては見事だと思うが,好きか嫌いかという点になると微妙なところがある.5
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:瀬戸内少年野球団

日記:2008年1月某日
映画「瀬戸内少年野球団」を見る.04
1984年.監督:篠田正浩.
夏目雅子,郷ひろみ,岩下志麻,伊丹十三,佐倉しおり,渡辺謙,大滝秀治.
阿久悠の自伝的原作による映画.
敗戦直後の淡路島の国民学校に転校生武女(むめ)が東京からやってくる.武女は父親の提督が,戦犯の呼び出しを受けるまでしばし島で暮らすためにやってきたのだ.10
級長の竜太とガキ大将の三郎は進駐軍から提督と武女を守るため,チームを組んで見張りに立つ.
担任の駒子先生は新婚直後に夫が戦死しそのまま婚家に同居しているが,舅一家からは義弟との結婚を迫られ,義弟は毎夜駒子に同衾を迫ってくる….
やがて島には進駐軍が来て砲台を爆破,また復員軍人が戻って来る中,子供たちはあるきっかけで野球のチームを組み練習を始める….
敗戦による混乱の中,子供たちのそれぞれの運命と思春期のときめきを描く映画.この時代の子供たちが持っていたそれぞれの不幸(身内の戦死や生活の貧しさ)と,それと闘うエネルギーを表現し得ている.
子役を含む配役陣はそれぞれ好調だが,夏目雅子の美しさが際だっている.この映画は彼女の最後の作品だったろうか.03
只,郷ひろみはミスキャストではないか.爽やかな笑顔はともかくとして,台詞はアイドル郷ひろみそのままで,映画から浮いていると言わざるを得ない.
篠田監督はこの後も「鑓の権三」で彼を起用しているが,よほど気に入ったのだろうか.09
題名から想像されるほど野球シーンは多くなく,野球ファンにはそれは物足りなかったかも知れないが,全体としては見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ゲド戦記

日記:2008年1月某日
映画「ゲド戦記」を見る.3
2006年.監督:宮崎吾朗.音楽:寺嶋民哉.主題歌:手嶌葵.
冒頭嵐の海を行く一艘の船.上空に2匹の龍が現れ,闘いあう.その知らせを受けエンラッドの王宮では会議が開かれている.
各地の凶作,疫病の報告も上がり,国王の憂いは深い.自室に引き上げた国王は,潜んでいた王子アレンに襲われ刺殺される.アレンは王の剣を奪い逃亡する….
魔法使いハイタカは原野で狼に襲われていたアレンを救い,共にホート・タウンに向かう.ホート・タウンでは人買いが横行し,アレンはさらわれかけていたテルーを救うが,自身も捕らわれてしまう.
ハイタカは魔法でアレンを救い出し,古い友人テナーの家に身を寄せた.アレンはそこで暮らしていたテルーと再会する….2
とまあこう展開していく長編アニメであるが,原作を読んでいないので基本的に何がなにやら判らない.
まずアレンはどうして国王を殺さなければならないのか.殺すなら王妃だろう,如何にも息子をスポイルしそうな王妃として描かれていたし.
また,「ハイタカは実はゲドである」と言われてもそれがどうしたと思うだけ.人々は真の名前を持ちそれは人に知られてはならないらしい.
アレンとテルーは互いに真の名前を明かし合うが,それはどういう意味を持つのかも判らない(ひょっとして魔法に関係があるのだろうか).
というわけで原作を読まないのがいけないと言われればそれまでだが,はてなマークを頭上に鈴なりにさせたまま映画は終わってしまった.
アニメの技術的なことはよく判らないが,まあまあのできだろうか.海の(水面の)表現がもう少しうまくできていれば良かった.
手嶌葵の挿入歌は素晴らしい.音楽は全体に良かった.
と言う訳で★★☆(★5個が満点)
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2008/01/17

独断的映画感想文:ゾディアック

日記:2008年1月某日
映画「ゾディアック」を見る.Zodiac1
2006年.監督:デヴィッド・フィンチャー.
ジェイク・ギレンホール,マーク・ラファロ,ロバート・ダウニー・Jr.
1969年7月4日,カリフォルニアの田舎町で車の男女が襲われ,女性は射殺,男性は瀕死の重傷を負う.犯人は自ら警察にこの事件を通報,更に1月後,地元の新聞クロニクル他に犯人は犯行声明を送り,自らをゾディアックと名乗って自分の作った暗号文を1面に載せるよう脅迫してきた.
クロニクル紙の敏腕記者エイブリー,漫画作家のグレイスミス,サンフランシスコ市警のトースキー刑事はそれぞれに犯人の謎を追うが,その追跡は思いがけない長期戦となっていった….
実際の事件に基づくグレイスミス原作の小説による映画.劇場型の犯人であるゾディアックと,彼を追うことで人生が変わってしまった3人の軌跡を描く.
前半は警察当局とクロニクル紙のエイブリーを中心に描き,後半はグレイスミスとトースキー個人の活躍を描き,総計2時間半はいささか長い.
またドキュメント形式の映画なので,結末はあまりすっきりしたものにはなっていない.
それは仕方がないとして,この映画,出来はなかなか良い.長尺ではあるが後半はグレイスミスの推理が映画をぐいぐい引っ張っていって,緊張感が満ちあふれる.
3人のゾディアックに対する執念がひしひしと感じられるが,それは結局この監督の「(連続)殺人」という行為への執念ということなのだろう.その執念の深さがこの映画を最後まで引っ張った原動力なのではないか.
グレイスミスの度胸の据わった奥さんの人物像が魅力的.
それにしても警察の捜査ってこんなにいい加減なものだったのでしょうかね.
★★★★(★5個が満点)
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2008/01/13

独断的映画感想文:Helpless

日記:2008年1月某日
映画「Helpless」を見る.Helpless1
1996年.監督:青山真治.
浅野忠信,光石研,辻香緒里,斉藤陽一郎,伊佐山ひろ子.
高校生の健次は精神病院に入院中の父と二人暮らし.ある日傷害で服役中仮出所してきた幼なじみのやくざ安男と会う.
安男を迎えた組の男は,親分が死に組は解散,自身も堅気になったと言う.安男はそれを信じることが出来ず,組の男を射殺する.
健次と落ち合った安男は知恵遅れの妹ユリを健次に託し,親分の居場所を探しに出かけるが更に殺人を重ねることになる.
健次はユリと待ち合わせ場所の山中の喫茶店に着くが,そこではトラブルが健次を待っていた….
青山真治の初監督劇場映画・浅野忠信の初主演映画.
衝撃的で魅力的な映画である.
健次と安男が再会してからわずか24時間の出来事を描いたこの映画では,しかし6人が殺され2人が自殺する.北九州市周辺の濃密な地域性を背景に,安男とそして健次の圧倒的な暴力性が描かれるが,それにも拘わらず物語は哀切で主人公たちに共感を覚えずにいられない.
舞台となるやまなみから北九州市への空撮で始まる映画の冒頭も,観客を魅了するだろう.叙情的でかつ情報量の多いカメラワークが素晴らしい.
映画の最後,街に佇む健次とユリはどこへ行くのだろう.映画は,物語はここで終わるのではなく,ここから始まるのだということを強く暗示して終わる.Helpless2
神話的広がりを伴って展開される濃密なドラマは,とても80分しかないとは思えない.想像力を激しく刺激する希有な映画.一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:どろろ

日記:2008年1月某日
映画「どろろ」を見る.4
2007年.監督:塩田明彦.
妻夫木聡,柴咲コウ,瑛太,土屋アンナ,麻生久美子,劇団ひとり,中村嘉葎雄,原田芳雄,原田美枝子,中井貴一.
戦乱の世,武将醍醐影光は天下統一の野望のため48体の魔物に生まれ来る我が子を捧げ,強大な力を手に入れる.子供は体の48カ所を奪われた形で生まれ,捨てられる.その子を拾った呪師は子供を哀れみ,48の器官を作り命を吹き込む.
成長した子供は左手に仕込んだ妖刀百鬼丸の名を名乗り,放浪の旅に出る.妖刀に誘われて現れる魔物を一人倒せば,奪われた器官が1つ戻ってくることも知る.百鬼丸は途中巡り会った盗賊どろろと共に,魔物退治の旅を続けながら醍醐影光の領地に踏み込んだ….
手塚治虫の漫画の実写映画化.CGはちゃちいし最初はどうなることかと思っていた.
しかし映画を見終わっての感想は,思いの外面白いということであった.
繰り返すがCGはちゃちい.それに中盤の化け物との戦いに出てくる化け物たちは,日曜朝のTVに出てくるかぶり物の妖怪の水準だ.
それでもこの映画を好きだと思ったのは,単純に面白かったからだ.その面白さは,手塚治虫がこの漫画に込めた面白さを,映画がなんとか引き継いでいるというその一点に尽きる.3
そしてそのポイントたる部分を妻夫木と柴咲と中井貴一が体を張って演じていることが,この映画を成立させている要の部分ではないだろうか?1
正直言って見ている最中にずいぶんだと思った点はいろいろあったが,あの手塚の原作を何とかして映画にしようという熱意を感じた.それが楽しく嬉しかった.
★★★☆(★5個が満点)
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2008/01/08

独断的映画感想文:ティファニーで朝食を

日記:2008年1月某日
映画「ティファニーで朝食を」を見る.5
1961年.監督:ブレイク・エドワーズ.
音楽:ヘンリー・マンシーニ.原作:トルーマン・カポーティ.
オードリー・ヘプバーン,ジョージ・ペパード,ミッキー・ルーニー,マーティン・バルサム.
あまりにも有名なヘプバーンの映画.
N.Y.の早朝,人気のないティファニーの前でテイクアウトの珈琲とクロワッサンで朝食を摂るホリー.
彼女は実はコール・ガール,何時か玉の輿に乗ることを目指し(どうも表現が古いか)アパートで気ままな一人暮らしを送る.
そのアパートに引っ越してきたポールは駆け出しの作家,大長編を目指して執筆中だが,実はパトロンのいる身の上だ.2_3
そのポールは一目でホリーに恋をしてしまう.ホリーは可愛らしく気まぐれでつかみ所がないが,何とも魅力的.しかしホリーには隠された身の上があった….
娼婦とヒモの純愛物語だが,演じるのがオードリー・ヘプバーンとジョージ・ペパードだとこういうお洒落なファッションラブコメになってしまう.
原作者カポーティの望み通りマリリン・モンローが演じていたらどういう作品になっていたのだろう.
同じアパートの「日本人」ユニヨシ氏のキャラクターやらお洒落な小道具やら(N.Y.では1960年にテイクアウトの珈琲が飲めたのだ.これがもうお洒落)が,粋で楽しい映画だが,映画に入り込むところまでは行かなかった.
設定とキャスティングの違和感が最後まで釈然とせず.1_2
但し主題歌「ムーン・リバー」は名曲で,それを歌うヘプバーンはやはり魅力的.
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独断的映画感想文:オーロラの彼方へ

日記:2008年1月某日
映画「オーロラの彼方へ」を見る.3_3
2000年.監督:グレゴリー・ホブリット.
デニス・クエイド,ジム・カヴィーゼル,エリザベス・ミッチェル.
NYでオーロラのはためく夜,警察官ジョニーが久しぶりに亡き父の真空管式無線装置に電源を入れると,父親からの無線が飛び込んでくる.
30年前にやはりオーロラのはためいた夜の父親と,無線がつながったのだ,というタイムマシンもの.
ところがその翌日消防士だった父は殉職することになっていたので,ジョニーは火災の概要を教え父は生き延びることに成功する.しかしその結果歴史が変わりはじめ,今度は母が連続殺人に巻き込まれ死んでしまう.4_2
その未解決の事件を,ジョニーは父と連絡を取りながら解決し,母の命を救おうと試みるのだが….
30年の両側で父と息子が交信しながら犯人を追い詰めるという,ちょっと変わったサスペンス.
しかし30年前に父親が行動を起こすと息子の目の前で歴史が変わっていくと言う時空のとらえ方は,ややB級である.2_2
エンディングはこれ以上ない程のハッピーエンド.これだけ歴史を変えてしまうと,何か別の事件が起こっていないかどうか気になりますね.
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独断的映画感想文:ショート・カッツ

日記:2008年1月某日
映画「ショート・カッツ」を見る.2
1994年.監督:ロバート・アルトマン.
アンディ・マクダウェル,ブルース・デイヴィソン,ジャック・レモン,ジュリアン・ムーア,ティム・ロビンス,フランシス・マクドーマンド.
地中海ミバエの発生汚染地域となった市街上空を,ヘリコプターが飛び回り農薬を散布している.その何となく騒然とした街で起こっていく事件を描く群像劇.4
10組ほどの夫婦・家族が登場し,各組はそれぞれ関係を持っている.
冒頭は女流チェロ奏者の音楽会を聞く,医者・画家の夫婦.彼らは偶然隣り合った夫婦をホームパーティーに招待する.
その招かれた夫婦の夫は休暇に釣りに出かけるが,彼が食事を取った店のウェイトレスは運転手の夫とトレーラーハウスに住む.彼女は車で少年を撥ねてしまうが,その少年はチェロ奏者の隣に住むニュースキャスターの息子.1
チェロ奏者の母はジャズ・シンガーで,彼女が歌う店で客になっている2組の夫婦の内一人はメークアップのスタディオで修行中.清掃業務をしている男は,ニュースキャスターの家のプールを清掃している.
医者の妻の画家のモデルをしている女は夫が警官で,彼が浮気をしている相手は農薬散布をしているヘリコプターパイロットの夫と離婚調停中.
というわけで彼らの日常が坦々と描かれる中様々な事件が起こる.
まことに禍福はあざなえる縄のごとしという感じで,その中で3人が死亡,1人が殺人犯となり,かと思えば思いがけない幸せをつかむ夫婦もいる.3_2
場面転換のタイミングと全体が徐々に明らかになっていく進行がなかなかに見事.3時間を超す長尺ながらだれた感じは全くない.
この手の映画で思い出すのは「マグノリア」で,その最後の締めにはとんでもない事件が起こったが,この映画も全体のケリをつける事件は予想もしない出来事だった.
「MASH」の監督が送り出した傑作映画.見て損はなし.
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