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2008年2月に作成された記事

2008/02/27

独断的映画感想文:愛の流刑地

日記:2008年2月某日
映画「愛の流刑地」を見る.3
2006年.監督:鶴橋康夫.
出演: 豊川悦司(村尾菊治),寺島しのぶ(入江冬香),長谷川京子(織部美雪),仲村トオル(入江徹),佐藤浩市(脇田俊正),陣内孝則(北岡文弥),浅田美代子(魚住祥子),佐々木蔵之介(稲葉喜重),貫地谷しほり(村尾高子), 松重豊(関口重和),本田博太郎(久世泰西),余貴美子(菊池麻子),富司純子(木村文江),津川雅彦(中瀬宏).
映画はその冒頭,激しいベッドシーンから冬香の死に至るシーンで始まる.
スランプ中のベストセラー作家村尾と冬香の不倫の恋は,思いがけない冬香の死で終わり,後には殺人か嘱託殺人か過失致死かを問う長い裁判が続く….
渡辺淳一の小説は好きではないし興味もない(ファンの方ごめんなさい).
この映画を見たのは先に見た同じ共演者の「やわらかい生活」の印象が良かったからだ.
しかしこの映画は典型的な官能メロドラマ,僕のタイプではなかった.得るものは何もない.寺島しのぶや豊川悦司という俳優を(良い演技をしていたけれど)こういう映画で消費して欲しくないと思った.6
色情狂で三流TVレポーターとしか見えない女性検事も受け入れ難い.昼メロ特有の感傷的音楽もうっとうしく聞き苦しい.
良い点はガラスに映った景色や人の表情を巧みに撮し込んだ映像か.京都の寺の古木に雨のしたたる映像も美しかった.2
そう思って見ていたら,最後に富司純子が出てきたとたん,映画は一変した.緊張感あふれた画面は見違えるようだ.
富司純子が出てから最後までの15分間ほどが映画というものだったのではないか.後はその長い前置きであった.
富司純子に免じて★★(★5個が満点)
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2008/02/24

独断的映画感想文:バベル

日記:2008年2月某日
映画「バベル」を見る.
2006年.監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ.
出演: ブラッド・ピット(リチャード),ケイト・ブランシェット(スーザン),ガエル・ガルシア・ベルナル(サンチャゴ),役所広司(ヤスジロー),菊地凛子(チエコ),二階堂智(ケンジ),アドリアナ・バラーザ(アメリア),エル・ファニング(デビー),ネイサン・ギャンブル(マイク),ブブケ・アイト・エル・カイド(ユセフ),サイード・タルカーニ(アフメッド),ムスタファ・ラシディ(アブドゥラ),アブデルカデール・バラ(ハッサン).
モロッコの砂漠の中の村で,羊飼いの一家の父は知人からライフルを手に入れ,ジャッカル退治のために羊飼いの兄弟に銃を持たせる.羊を追う兄弟は山で銃の腕を競い,遙か彼方に見える道路上のバスに銃弾を放つ.2_4
ある事故以来夫婦仲の疎遠となったアメリカ人夫妻は,その傷を癒そうとモロッコ旅行に来ていたが,バスの中で突然妻が銃弾を浴びる.鮮血に塗れた妻は通訳の実家がある村に収容され救援を呼ぶが,テロとの情報が交錯し救急車もヘリコプターも何時までも来ない.5_3
アメリカで夫婦の留守宅を預かっている乳母は,息子の結婚式を控え,帰らぬ主人に託された子供たちを連れてメキシコに帰省することにする.3_4
ライフルの登録者である日本人は,聾唖者の娘との不仲に悩んでいた.母親は既に亡くなり,娘は親友と共に盛り場で遊ぶが,その心は満たされない….1_3
「バベル」は言葉の障壁による人と人の繋がりの難しさと,それがもたらす無惨な現実とを描く映画である.
画面の構成がしっかりしていて緊張感が維持され,時間軸の入れ替えや空間の切り替えが繰り返されるにも拘わらず,2時間23分の長尺をだれずに見せる.
それぞれの物語で示される登場人物の愚かさ,状況の不条理さ,抱える悩みの辛さは人ごとではない.
現実をリアルに描いているようで,物語の全体像には寓話性があり,登場人物の行動は生々しいというよりは悲劇的である.
最後に微かな希望を持たせて終わる物語もあれば,荒涼たる現実の中に取り残される物語もある.しかしそれぞれの登場人物には共感でき,深く印象に残る映画.
俳優陣は皆良い,菊地凜子は日本人から見ればどう見ても25歳にしか見えないが,外国人から見れば高校生なのだろう.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ミス・ポター

日記:2008年2月某日
映画「ミス・ポター」を見る.4
2006年.監督:クリス・ヌーナン.
出演: レニー・ゼルウィガー(ビアトリクス・ポター),ユアン・マクレガー(ノーマン・ウォーン),エミリー・ワトソン(ミリー・ウォーン),ビル・パターソン(ルパート・ポター),バーバラ・フリン(ヘレン・ポター).
ピーター・ラビットの生みの親として有名なビアトリクス・ポターの半生記.
1902年のロンドン,32歳のポターは長年描きためてきたピーター・ラビットの物語を何とか出版したいと,原稿をウォーン商会に持ち込む.3_3
幸い出版という話しになり,ウォーン兄弟の末弟ノーマンが編集担当者となり印刷の準備が始まる.
裕福な家庭に育った彼女は,湖水地方の別荘で出会った動物たちを主人公に絵本を描いてきた.家格にこだわり貴族との結婚を勧める母親に抗し独身を貫いてきた彼女だが,本が売れていくと共に自立の意識は強まり,ノーマンとの恋も芽生えてゆく….
1時間半の小品ながらメロドラマに陥ることもなく,センチメンタルに流れることもなく,ポターの半生を坦々と描いていくところが好ましい.
ポターが豊かな才能に恵まれていたばかりでなく,封建的な考えの未だ強い当時のイギリスで女流作家として立派に成功し,かつ大きな不幸を乗り越えてナショナル・トラスト運動の礎を築いたことまでが静かなタッチで描かれる.5
レニ・ゼルウィガーの控えめながら芯の強いポターの演技は好きである.
また,テーマ曲の「When You Taught Me How To Dance」は素敵な曲で,劇中でユアン・マクレガーが歌詞を変えてポターと踊りながら歌う「Let Me Teach You How To Dance」の出来も良い.
湖水地方の景観は素晴らしく,それが実在のポターの残したものであることが印象に残る映画である.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ダウト

日記:2008年2月某日
映画「ダウト」を見る.2_2
2005年.監督:ウェイン・ビーチ.
出演: レイ・リオッタ(フォード・コール), LL・クール・J (ルーサー),メキー・ファイファー(アイザック),ジョリーン・ブラロック(ノラ),ガイ・トーリー(チェット),テイ・ディグス(ジェフリー),キウェテル・イジョフォー(タイ),ブルース・マッギル(ゴッドフレイ).
ある市の検事で次期市長の座を目指すフォード,記者の密着取材を受けている彼のもとに連絡が入る.恋人で検事補のノラが自室で男を射殺して拘束されたというのだ.
拘留されたノラは,このところ付きまとわれていた男が自室に侵入しレイプされたので,正当防衛として射殺したと言う.1_2
ところが死んだアイザックの友人と名乗るルーサーが出頭し,アイザックを誘惑したのはノラで,殺人は計画的なものだと供述する.
折しも街は大規模な都市開発の計画中で,ダニーという謎の黒幕が暗躍している.事件の真相はどうか,真の悪役は誰か,ダニーは何奴か.
混沌とした状況の中矛盾する供述に翻弄されるフォードの迷走,どんでん返しに次ぐどんでん返しという趣向の映画.3_2
映画が直接描くのは事件が発生してから10時間ほどのあいだの出来事,その間にそれぞれの供述が映像として映し出される.観客は,裏付けもないままの各自の供述が飛び交う混迷の状況そのものを楽しむという訳だが,最後の落ちが気に入るかどうかは微妙なところである.
僕にとってはもう一つそうか!!と納得するところまでは行かなかった.
キーワードの一つは「人種」ということだが,日本ではあまりぴんと来ない面もあるだろう.
ノラを演じたジョリーン・ブラロックが印象的.
★★★☆(★5個が満点)
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2008/02/18

独断的映画感想文:ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団

日記:2008年2月某日
映画「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」を見る.Hp
2007年.監督:デヴィッド・イェーツ.
ダニエル・ラドクリフ,ロン・ウィズリー,エマ・ワトソン,レイフ・ファインズ,ゲイリー・オールドマン,マギー・スミス,エマ・トンプソン,イヴァナ・リンチ.
5年生になる前,帰省中のハリーは,従兄弟にいじめられている最中に魔法界の吸血鬼ディメンターに襲われ,やむなく魔法で撃退する.ところが人間の前で魔法を使ったとして魔法省の尋問に呼び出される.Hp_2
幸いダンブルドアの弁護で窮地を逃れるが,魔法省はホグワーツにアンブリッジ先生を送り込んで締め付けをはかった.ハリーは,ロンとハーマイオニーの勧めで有志を募ってダンブルドア軍団を組織し,闇の力との対決に備える….Hp_3
えー毎度おつきあいを願いますって感じのいつもの魔法の世界.この世界好きです.
今回は孤立しがちなハリーが,ダンブルドア軍団という魔法省の官僚どもと対決する結社を組織するし,3人組の活躍は相変わらずだし,なかなか楽しい.
ただしキスまでする仲になったチョウとの離別はアジアの一員としてはやや残念.
そのほかの出演者が相変わらずのお楽しみ.ゲイリー・オールドマンが良い役をやっていると何となく落ち着かない.えーっあの情けないお払い箱教師がエマ・トンプソンだって?!
新人のイヴァナ・リンチがなかなか可愛い.Hp_4
本筋の方は相変わらず原作を読んでいないので,何がなにやらわかりません.でも楽しい映画.
★★★★(★5個が満点)
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2008/02/17

独断的映画感想文:シルク

日記:2008年2月某日
映画「シルク」を見る.Photo_4
2007年.監督:フランソワ・ジラール.音楽:坂本龍一.
マイケル・ピット,キーラ・ナイトレイ,役所広司,芦名星,中谷美紀,アルフレッド・モリナ,國村準.
絹糸を生産しているヨーロッパのとある村(フランスらしい),疫病で蚕がやられ,蚕の買い付けに若いエルヴェが行くことになる.
軍を退役し恋人エレーヌと結婚した彼は,エジプトでの買い付けに成功するが,更に日本へ買い付けに行くことになる.
ロシア経由で酒田に入港したエルヴェは信州に潜入し,有力者原十兵衛の知遇を得て蚕の買い付けに成功する.原の家でその美しく若い妻のもてなしを受けたエルヴェは彼女が忘れられなかった.
エレーヌを心から愛しながら,エルヴェは再び日本に蚕の買い付けにでかけ原十兵衛と再会する.その妻は滞在中彼に女を世話し,密かに一通の手紙を彼に渡すのだった….
ストーリーは単純と言えば単純だが,夢のようなふわふわとした話である.
原十兵衛の妻は名前が無く(エンドロールでも「少女」となっている)台詞もない.只その「神秘的な美しさ」にエルヴェが惹かれるのみ.
また彼女の描き方も似而非ジャポニズム風で,あまり良い気持ちはしない.Photo_5
僕は元来外国映画で描かれる日本人の扱いには寛容な方で(爆),「サユリ」も「ラスト・サムライ」も特に問題はないと考えてきたが,今回の「少女」の立ち居振る舞いはペケと思う.
しかしまあ原作(「海の上のピアニスト」のアレッサンドロ・バリッコ)がそうなっているのであれば致し方ない.
映像は美しく音楽(坂本龍一によるソロピアノを多用したもの)は素敵.Photo_6
魅力はあるが,なんだったかよく判らないというところの残る映画.
★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:地下鉄(メトロ)に乗って

日記:2008年2月某日
映画「地下鉄(メトロ)に乗って」を見る.Photo
2006年.監督:篠原哲雄.
堤真一,岡本綾,常盤貴子,大沢たかお,田中泯,笹野高史,吉行和子.
浅田次郎原作のファンタジー.
43歳,衣料品の営業マン長谷部信次は,ある日父が入院したとの知らせを受けた直後,地下鉄駅で中学の恩師野平敬吾に会う.野平はその日が信次の兄の命日であると指摘した.
信次は横暴だった父を嫌い,高卒と同時に家を出,籍も抜いて母方の姓を名乗っている.野平と別れた信次は,駅で生前の兄と似た人物を見かけ思わず後を追う.
そのまま地下鉄を出た信次は,そこが昭和39年の新中野,兄が事故死をする直前のその場所であることを知る….
というわけで始まるタイムスリップもの.この後信次は地下鉄に乗っていて,あるいは夢の中で幾度もタイムスリップを繰り返し若い頃の父と出会うのだった.Photo_2
何故かそのタイムスリップには,信次の愛人で同僚のみち子が同行するようになる.横暴としか見えなかった父の戦中戦後を通じた人生の苦闘を目の当たりにし,信次の心は徐々に変わっていく一方,みち子の運命は思いもかけぬ展開を見せる….
俳優はそれぞれ好演である.大沢たかおは若い頃から老齢までの信次の父小沼佐吉を熱演.佐吉の愛人常盤貴子ははまっている.みち子を演じる岡本綾はその儚げな演技が良い.堤真一は安定した出来.
全体的にはちゃちい場面があったり(戦前の銀座線の先頭部分は大道具っぽかった.満州での戦闘場面はいくら夢の中といってももう少し何とかして欲しい),筋立てがあまりにご都合主義だったり(SFだと思ったらとても見てられません)するが,それは良しとしましょう.Photo_3
この映画の致命的な欠陥は(原作通りなのだから原作の欠陥ということになるが),終盤のみち子の運命である.
確かにこれでみち子が何故同じ夢を見てタイムスリップに同行したのかもわかるが,あまりに乱暴な結末に言葉を失う.浅田次郎の小説技法のあざとさに呆然とするばかりだ.
これが良いという人もいるだろうが,僕には受け入れることが出来ない.こんな映画見るんじゃなかったという後悔しか残らない.
★(★5個が満点)
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2008/02/11

独断的映画感想文:ハンニバル・ライジング

日記:2008年2月某日
映画「ハンニバル・ライジング」を見る.2
2007年.監督:ピーター・ウェーバー.
ギャスパー・ウリエル,コン・リー,リス・エヴァンス.
「羊たちの沈黙」で有名なハンニバル・レクター博士の生い立ちの記である.
第2次大戦中のリトアニア,ナチスドイツとソ連の戦闘が迫り,レクター伯爵は城を捨て山荘に避難する.しかしその山荘も独ソの戦闘に巻き込まれ伯爵と夫人等大人たちは死亡,残されたハンニバルと妹ミーシャは,ソ連軍に追われ山荘に押し入ったリトアニア民兵に監禁される.食料欠乏の中,ミーシャは彼らに連れ出される….
という訳で話は簡単,成人したハンニバルがミーシャを食ってしまった兵士たちのその後を追う復讐譚.復讐のために殺した兵士の頬肉を食ってしまうというハンニバルのカニバリズムも同時に物語られる.
興味はむしろ主演のギャスパー・ウリエルとコン・リーに集中することになる.
ギャスパー・ウリエルは何とつい数日前にたまたま見た「ロング・エンゲージメント」の主人公,純粋無垢の青年マネクを演じたその人であります.ずいぶんと性格が変わってしまったものだ.
気になったのは彼の左頬の,えくぼにしては深すぎる傷だが,これは彼が6歳の時ドーベルマンに噛まれてできた傷だそうな.1
コン・リー姐さんが演じたのはレディ・ムラサキ,日本風に言えば紫式部ということでしょう.
彼女はレクター伯爵一族の最後の生き残りでハンニバルのおじさんに当たる人の未亡人.ハンニバルとは愛し合うことになるが,当然彼の殺人とカニバリズムにはついて行けない.
彼女が日本人役を演じることについてはいろいろとコメントもあるようだが,しかしコン・リーの若々しさには敬服したい.3
他にはハンニバルがソ連軍に救出されたあと,孤児として収容されたのがかっての我が家であるレクター城だったというあたりの描写にはもう少し説明がいるかも知れない.
つまりソビエト政権下のリトアニアで,ハンニバルは階級の敵を父に持つものとして監視と迫害の対象であったと思われるからである.
共産主義政権とか冷戦とかいう概念も,今や遙か昔のことになってしまった.物語を記述する上ではやりにくい時代かも知れない.
ということで映画自体は普通の出来,★★★☆(★5個で満点)というあたりか.

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2008/02/09

独断的映画感想文:ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習

日記:2008年2月某日
映画「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」を見る.2
2006年.監督:ラリー・チャールズ.
サシャ・バロン・コーエン,ケン・ダヴィティアン.
カザフスタン国営テレビの看板レポーター・ボラットが,アメリカ合衆国取材のためデブのディレクター・アザマートと共に大陸横断をしながら,各地で突撃レポートを敢行する一部始終(と称したコメディ映画).
主人公の設定がとにかくむちゃくちゃで,これだけでカザフスタン政府と無事に済むとは思えない.カザフスタンではレイプは当たり前,ユダヤ人への偏見は激しく「ユダヤ追い祭」と称する祭りが各村である等,ほんまかいなと思う描写が出てくる.1_2
そのカザフスタンから来た主人公たちが,全米でフェミニズム団体を皮肉り,中流家庭のディナーをおちょくり,あちこちで騒動を巻き起こしていくロードムービー.下ネタ満載でR-15指定だから相当なものです.
基本的にはアメリカを批判しているんだろうけどサシャ・バロン・コーエンの個性が強すぎてそれも定かならず.まあある種溜飲が下がる映画ですがだからと言って新しい世界が開ける訳でもないといった感じ.
でも一つだけ,一見の価値ありと言おうか他では決してみられないと言おうか,旅の途中で仲違いした主人公等二人(演ずるはサシャ・バロン・コーエン,ケン・ダヴィティアン)が,ホテルの部屋のダブルベッド上で全裸の組んずほぐれつの大げんか後,廊下に駈けだしエレベータに乗りホテル全館を舞台に戦い抜くバトルシーンは必見です.
サシャ・バロン・コーエンには股間にぼかしが付くが,ケン・ダヴィティアンはあまりにデブで逸物が全く映らずぼかしも何もない.
その両者の死闘,特に69体形でのケン・ダヴィティアン言うところのアナル押しつけ責めは絶品(こんなこと言っていてこのblog大丈夫だろうか).このシーンではさすがにストレスが解消された思いがした.
とにかく日本でお目にかかることはまず無いと思える映画,後学のために見ておいた方が良い.
でも★★(★5個が満点)

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2008/02/01

独断的映画感想文:ばかのハコ船

日記:2008年1月某日
映画「ばかのハコ船」を見る.Bakahako1
2002年.監督:山下淳弘.
山本浩司,小寺智子,山本剛史,細江祐子,木野花,笹野高史.
アーケード街の入り口で声を張り上げ健康飲料「あかじる」を売っている男女二人.さっぱり売れないらしく,次のシーンでは船に乗って海を渡り列車に乗り,人っ子一人いない駅に降り立つ.Bakahako4
駅から真っ直ぐ見渡す限りの畑の中を延びる道.そこをとぼとぼと二人は歩いていく.
酒井大輔と恋人島田久子は,「あかじる」販売で500万の借金をこさえ,実家に舞い戻ったが懲りずに「あかじる」で一旗揚げようと企む.父親始め同級生,親戚のつてを辿って売り込みを図るが,誰一人協力しようとはしない.
父親はまず借金を返せと就職を世話するが大輔は拒絶する.
売り込みがはかばかしく行かないまま,二人は実家でだらけた生活を送るようになり,大輔は風俗嬢の元カノの店に行く….
「リアリズムの宿」の山下監督が,その前年に同じ山本浩司を主演に撮った作品.Bakahako2
全身から力の抜けるコメディだが,「リアリズムの宿」よりは少し見るのが辛かった.
それは,大輔と久子(島田久子と言うが本当は嶋田久作じゃないのか,という気がする.小寺智子さんご免なさい)の追う夢が夢とも言えない妄想に近いものであることや,その夢の実現力がまるで無いままだらけて生活を送っていくことや,果ては大輔が下心丸出しできょろきょろと女を見る目や,それらのもろもろが自分が若いときの浅はかな行動をまざまざと思い出させるからである.
彼らの「夢」は何と置き換えても良いのだ,起業,理想の実現,女をものにすること,革命.
この情けない貧相な男は若いときの自分だ.そう思わされスクリーンと距離を置くことができない.
おまけに終盤,最後の力を振り絞って店頭販売に立ち,半日笑顔を振りまき声張り上げてしかも全く「あかじる」が売れないで,笑顔のまま突然久子が泣き出してしまうとき,痛々しくてコメディどころではなくなるのだ.Bakahako3
ところが最後のシーン,あっと驚く姿かたちで大輔と嶋田久作いや久子がスクリーンの向こうからこちらを見ている.このラストシーンには腰を抜かす(かも知れない).
馬鹿を超えるとはこういうことか.
★★★☆(★5個が満点)
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