独断的映画感想文:地下鉄(メトロ)に乗って
日記:2008年2月某日
映画「地下鉄(メトロ)に乗って」を見る.
2006年.監督:篠原哲雄.
堤真一,岡本綾,常盤貴子,大沢たかお,田中泯,笹野高史,吉行和子.
浅田次郎原作のファンタジー.
43歳,衣料品の営業マン長谷部信次は,ある日父が入院したとの知らせを受けた直後,地下鉄駅で中学の恩師野平敬吾に会う.野平はその日が信次の兄の命日であると指摘した.
信次は横暴だった父を嫌い,高卒と同時に家を出,籍も抜いて母方の姓を名乗っている.野平と別れた信次は,駅で生前の兄と似た人物を見かけ思わず後を追う.
そのまま地下鉄を出た信次は,そこが昭和39年の新中野,兄が事故死をする直前のその場所であることを知る….
というわけで始まるタイムスリップもの.この後信次は地下鉄に乗っていて,あるいは夢の中で幾度もタイムスリップを繰り返し若い頃の父と出会うのだった.
何故かそのタイムスリップには,信次の愛人で同僚のみち子が同行するようになる.横暴としか見えなかった父の戦中戦後を通じた人生の苦闘を目の当たりにし,信次の心は徐々に変わっていく一方,みち子の運命は思いもかけぬ展開を見せる….
俳優はそれぞれ好演である.大沢たかおは若い頃から老齢までの信次の父小沼佐吉を熱演.佐吉の愛人常盤貴子ははまっている.みち子を演じる岡本綾はその儚げな演技が良い.堤真一は安定した出来.
全体的にはちゃちい場面があったり(戦前の銀座線の先頭部分は大道具っぽかった.満州での戦闘場面はいくら夢の中といってももう少し何とかして欲しい),筋立てがあまりにご都合主義だったり(SFだと思ったらとても見てられません)するが,それは良しとしましょう.
この映画の致命的な欠陥は(原作通りなのだから原作の欠陥ということになるが),終盤のみち子の運命である.
確かにこれでみち子が何故同じ夢を見てタイムスリップに同行したのかもわかるが,あまりに乱暴な結末に言葉を失う.浅田次郎の小説技法のあざとさに呆然とするばかりだ.
これが良いという人もいるだろうが,僕には受け入れることが出来ない.こんな映画見るんじゃなかったという後悔しか残らない.
★(★5個が満点)
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コメント
TBありがとう。
浅田次郎のあざとさねェ。確かに(笑)
でも、あのシーンがないと、この映画は、とっても平板になってしまうのかもわかりません。
投稿: kimion20002000 | 2008/02/18 01:05