独断的映画感想文:バベル
日記:2008年2月某日
映画「バベル」を見る.
2006年.監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ.
出演: ブラッド・ピット(リチャード),ケイト・ブランシェット(スーザン),ガエル・ガルシア・ベルナル(サンチャゴ),役所広司(ヤスジロー),菊地凛子(チエコ),二階堂智(ケンジ),アドリアナ・バラーザ(アメリア),エル・ファニング(デビー),ネイサン・ギャンブル(マイク),ブブケ・アイト・エル・カイド(ユセフ),サイード・タルカーニ(アフメッド),ムスタファ・ラシディ(アブドゥラ),アブデルカデール・バラ(ハッサン).
モロッコの砂漠の中の村で,羊飼いの一家の父は知人からライフルを手に入れ,ジャッカル退治のために羊飼いの兄弟に銃を持たせる.羊を追う兄弟は山で銃の腕を競い,遙か彼方に見える道路上のバスに銃弾を放つ.
ある事故以来夫婦仲の疎遠となったアメリカ人夫妻は,その傷を癒そうとモロッコ旅行に来ていたが,バスの中で突然妻が銃弾を浴びる.鮮血に塗れた妻は通訳の実家がある村に収容され救援を呼ぶが,テロとの情報が交錯し救急車もヘリコプターも何時までも来ない.
アメリカで夫婦の留守宅を預かっている乳母は,息子の結婚式を控え,帰らぬ主人に託された子供たちを連れてメキシコに帰省することにする.
ライフルの登録者である日本人は,聾唖者の娘との不仲に悩んでいた.母親は既に亡くなり,娘は親友と共に盛り場で遊ぶが,その心は満たされない….
「バベル」は言葉の障壁による人と人の繋がりの難しさと,それがもたらす無惨な現実とを描く映画である.
画面の構成がしっかりしていて緊張感が維持され,時間軸の入れ替えや空間の切り替えが繰り返されるにも拘わらず,2時間23分の長尺をだれずに見せる.
それぞれの物語で示される登場人物の愚かさ,状況の不条理さ,抱える悩みの辛さは人ごとではない.
現実をリアルに描いているようで,物語の全体像には寓話性があり,登場人物の行動は生々しいというよりは悲劇的である.
最後に微かな希望を持たせて終わる物語もあれば,荒涼たる現実の中に取り残される物語もある.しかしそれぞれの登場人物には共感でき,深く印象に残る映画.
俳優陣は皆良い,菊地凜子は日本人から見ればどう見ても25歳にしか見えないが,外国人から見れば高校生なのだろう.
★★★★(★5個が満点)
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