独断的映画感想文:ハンニバル・ライジング
日記:2008年2月某日
映画「ハンニバル・ライジング」を見る.
2007年.監督:ピーター・ウェーバー.
ギャスパー・ウリエル,コン・リー,リス・エヴァンス.
「羊たちの沈黙」で有名なハンニバル・レクター博士の生い立ちの記である.
第2次大戦中のリトアニア,ナチスドイツとソ連の戦闘が迫り,レクター伯爵は城を捨て山荘に避難する.しかしその山荘も独ソの戦闘に巻き込まれ伯爵と夫人等大人たちは死亡,残されたハンニバルと妹ミーシャは,ソ連軍に追われ山荘に押し入ったリトアニア民兵に監禁される.食料欠乏の中,ミーシャは彼らに連れ出される….
という訳で話は簡単,成人したハンニバルがミーシャを食ってしまった兵士たちのその後を追う復讐譚.復讐のために殺した兵士の頬肉を食ってしまうというハンニバルのカニバリズムも同時に物語られる.
興味はむしろ主演のギャスパー・ウリエルとコン・リーに集中することになる.
ギャスパー・ウリエルは何とつい数日前にたまたま見た「ロング・エンゲージメント」の主人公,純粋無垢の青年マネクを演じたその人であります.ずいぶんと性格が変わってしまったものだ.
気になったのは彼の左頬の,えくぼにしては深すぎる傷だが,これは彼が6歳の時ドーベルマンに噛まれてできた傷だそうな.
コン・リー姐さんが演じたのはレディ・ムラサキ,日本風に言えば紫式部ということでしょう.
彼女はレクター伯爵一族の最後の生き残りでハンニバルのおじさんに当たる人の未亡人.ハンニバルとは愛し合うことになるが,当然彼の殺人とカニバリズムにはついて行けない.
彼女が日本人役を演じることについてはいろいろとコメントもあるようだが,しかしコン・リーの若々しさには敬服したい.
他にはハンニバルがソ連軍に救出されたあと,孤児として収容されたのがかっての我が家であるレクター城だったというあたりの描写にはもう少し説明がいるかも知れない.
つまりソビエト政権下のリトアニアで,ハンニバルは階級の敵を父に持つものとして監視と迫害の対象であったと思われるからである.
共産主義政権とか冷戦とかいう概念も,今や遙か昔のことになってしまった.物語を記述する上ではやりにくい時代かも知れない.
ということで映画自体は普通の出来,★★★☆(★5個で満点)というあたりか.
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