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2008年3月に作成された記事

2008/03/24

独断的映画感想文:街のあかり

日記:2008年3月某日
映画「街のあかり」を見る.1_2
2006年.監督:アキ・カウリスマキ.
出演:ヤンネ・フーティアイネン(コイスティネン),マリア・ヤンヴェンヘルミ(ミルヤ),マリア・ヘイスカネン(アイラ),イルッカ・コイヴラ(リンドストロン),カティ・オウティネン(スーパーのレジ係).
カウリスマキ映画は初見である.
しがない警備員のコイスティネンは同僚からも疎外され上司はクビにするチャンスを狙っているような,目立たない青年.本人は警備員では終わらない,自分で警備会社を起業して成功してみせると思っている.
そのための起業の研修も受けているが,現実には声をかける女性にはそっぽを向かれ,銀行は企業資金の融資を拒絶,仕事帰りにソーセージ屋台の女アイラに自分の夢を語るだけの毎日である.
ある日その彼に近づいてきてデートを持ちかける美しい女ミルヤ,実は彼女はマフィアの女で犯罪目的で彼に近づいてきたのだが,コイスティネンはいっぺんに彼女への恋に落ちてしまう….2_3
現実社会では負け犬でありながらそれを認めず肩肘張って生きているコイスティネン,無表情で無口,恋している時でさえミルヤに笑顔を向けることはない(映画中ただ一度屈託のない笑顔を見せるシーンがあり,その場面は印象的).
犬を救うエピソードにあるように,実際は正義感がありそれを実行する人物だが,その意志が通ることはない.
生活臭が無く人工的な感じの画面や,地味な中で一点だけ鮮やかな配色のある色彩感覚が,この物語の象徴性を印象づけるようだ.
犯罪に巻き込まれ更に苦境に立たされていくコイスティネンだが,その彼の希望は映画の最後に微かに示される.3_2
「敗者3部作」と言われるその掉尾を飾る映画.★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:モーツァルトとクジラ

日記:2008年3月某日
映画「モーツァルトとクジラ」を見る.1
2004年.監督:ベッター・ネス.
出演:ジョシュ・ハートネット(ドナルド),ラダ・ミッチェル(イザベル),ゲイリー・コール(ウォーレス),シーラ・ケリー(ジャニス).
発達障害の一種,アスペルガー症候群の男女の恋を描く映画.
冒頭主人公の住む街の空撮が美しい.
その街を走るタクシー,客は2人の日本人の老人.運転手は客が全く聞いていないのに,のべつ振り返っては話しかけている.そのうちあっけなくタクシーは駐車中のトラックに衝突,運転手は会合に遅れると叫んであたふたと姿を消してしまう.
その青年ドナルドは,アスペルガー症候群の人々のサポートグループを主宰する本人もその症候群の持ち主.
彼らは皆他人とのコミュニケーションが苦手だが,特異な才能を持つ人が多い.
その日新たに参加したイザベラは,言われたことを字義通りにしか解釈できないが,絵と音楽に才能を持つ美容師.ドナルドとイザベラは次第に惹かれ合う間柄となる….
物語は二人の恋愛のおずおずとしたスタートと様々な障害,その破局と修復を,周囲の人々との関わりを交え描いていく.
アスペルガー症候群といってもいろいろで,ドナルドは「普通」になりたいし「普通」にやれることを示したい.一方イザベルは「普通」でないこと,「普通」でない才能を持っていることを認めて欲しい.
題名の由来は,初めてのデートでの二人のハロウィーンの扮装だが,イザベルはモーツァルトに扮しドナルドはクジラのかぶり物を着る.クジラは大きくて安定していて立派だというドナルド,二人の恋の行方が象徴的に示されている.2_2
アスペルガー症候群の傾向は誰しも多少なりとも持っている(あるいは子供の時に持っていた)ものが多い.
僕自身も映画を見ていて思い当たることが数多くあった.
二人のロマンスの結末のように,ハッピーエンドになりたいものだという祈りを込めて,★★★★(★5個が満点)
心温まる良い映画である.
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独断的映画感想文:さらば、ベルリン

日記:2008年3月某日
映画「さらばベルリン」を見る.2
2006年.監督:スティーブン・ソダーバーグ.
出演:ジョージ・クルーニー(ジェイク・ゲイスメール),ケイト・ブランシェット(レーナ・ブラント), トビー・マグワイア(タリー).
1945年,アメリカ人記者ジェイクは,ヨーロッパの戦後処理と唯一戦闘を続ける日本への対処を話し合うポツダム会談取材のため,終戦直後のベルリンに着任する.
米軍兵士のタリーが運転手を務めることになったが,彼の恋人レーナは,ジェイクが戦前にベルリンに駐在した時の恋人だった….
ここからスタートするベルリン占領各国の謀略とその中で国外脱出を模索するレーナたちの姿を描くサスペンス.
この映画の特徴の一つはモノクロスタンダードの画面であろう.当時の実写フィルムと違和感なく画面を繋げていくその技術は,なかなかの効果をもたらしている.50年代風の演出や「カサブランカ」を意識したラストシーンも印象的.3
そういう映画作りの意図はわかるのだが,作品としては失敗作.
まず筋が判らない.
後に冷戦構造につながる各国の謀略や,旧ナチ政権への協力を隠して脱出をはかろうとする勢力等が入り乱れて,複雑なプロットになっているらしいのだが,それがさっぱり理解できない.
皆軍服を着ているし(記者のジェイクまで軍服姿だ),人の名前は分かり難いし,開始30分ほどで映画に完全に置いて行かれてしまった.小説なら登場人物が判らなくなれば確かめようもあるが,映画で判らなくなるとお手上げである.
俳優陣はジョージ・クルーニー,ケイト・ブランシェットともいつもの魅力なし.トビー・マグワイアはすぐに姿を消してしまう.Photo
地味なサスペンスをじっくり見たい記憶力に自信のある方ならともかく,僕にはこの映画はお勧めできない.
★(★5個が満点)
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2008/03/18

独断的映画感想文:マリー・アントワネット

日記:2008年3月某日
映画「マリー・アントワネット」を見る.Marie2
2006年.監督:ソフィア・コッポラ.
出演:キルステン・ダンスト(マリー・アントワネット),ジェイソン・シュワルツマン(ルイ16世),リップ・トーン(ルイ15世),ジュディ・デイヴィス(ノアイユ伯爵夫人),アーシア・アルジェント(デュ・バリー夫人),マリアンヌ・フェイスフル(マリア・テレジア女帝).
マリー・アントワネットが14歳でフランスに輿入れしてから,革命のため34歳でヴェルサイユ宮殿を離れるまでの物語.
その間のフランス王妃としての豪華で空疎,贅の限りを尽くした生活が描かれる.
コッポラはこの映画で何を描きたかったのだろう.
1793年の王妃の断頭台での最後を知る観客にとって,この果てしなく続く,美しいが壮大な浪費としか思えない宮殿の日々を見続けることは,最後には苦痛に近くなる.
それとも観客は,何も知らない少女の様にただその豪華な衣装とアクセサリー,美しい宮殿と庭園,夜ごとの夜会とごちそうを見て楽しめばいいのだろうか?Marie1
監督は映画にしか描けない世界を描いてはいるが,それが何を物語るのかはくみ取ることが出来なかった.
☆(★5個が満点)
ところでマリア・テレジア役の巨漢がなんとマリアンヌ・フェイスフルだったとは!!あの可憐な美貌の歌姫はどこに行ってしまったのだ!!
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2008/03/16

独断的映画感想文:それでもボクはやってない

日記:2008年3月某日
映画「それでもボクはやってない」を見る.001
2007年.監督:周防正行.
出演:加瀬亮(金子徹平),瀬戸朝香(須藤莉子),山本耕史(斉藤達雄),もたいまさこ(金子豊子),田中哲司(浜田明),光石研(佐田満),尾美としのり(新崎孝三),大森南朋(山田好二),鈴木蘭々(土井陽子),唯野未歩子(市村美津子),柳生みゆ(古川俊子),野間口徹(小倉繁),山本浩司(北尾哲),小日向文世(室山省吾),高橋長英(板谷得治),役所広司(荒川正義).
徹平はフリーター,ある日会社の面接を受けるため満員電車に乗り込む.
ドアに挟まれた上着の裾を引き抜くためごそごそするうち,ようやく乗換駅でホームに降りると,女子中学生に「触ったでしょう」と袖を掴まれた.
話を聞こうと彼を事務室に連れ込んだ駅員は,結局話を聞かずに警察に連絡,後に付いてきて「この人は上着の裾を抜こうとしただけ」と言ってくれた乗客も帰してしまう.002
そのまま徹平はパトカーに乗せられ警察で逮捕,拘留.そしてこれが4ヶ月にわたる長い拘留生活と被告としての裁判の始まりだった….
この映画は痴漢冤罪事件をテーマに日本の裁判,検察,警察の問題点を描く.
場面の大半は法廷シーンだが,良く描き込まれたそのシーンは,緊張感あるやりとりで退屈を感じさせない.法廷シーンとしてはかなり上等の部類にはいるだろう(少し前に見た「愛の流刑地」の法廷シーンとは比べものにならない).004
加瀬亮,役所広司等の演技も快調.
ネタばらしになるが,あいにくこの映画のラストはハッピーエンドではない.有罪率99.9%という司法の現状で,この映画の主人公のみ無罪という訳にはいかないのだろうが,見た後ストレスの残る映画ではある.
それにしてもこの映画を見ると,本当に痴漢をしたひとはゴメンナサイで即日釈放,示談金を支払えば社会的制裁もゼロというのに対し,冤罪の場合は当然無罪を主張すれば長期拘留,長期裁判,有罪判決と人生に計り知れないダメージを受ける.003
「疑わしきは罰せず」等どこ吹く風,被害者の訴えを証拠で裏付ける努力もせず採用し,被疑者の無実の訴えに対しては「頑迷に容疑を否認し反省の色は微塵も見られず」と決めつける日本の裁判には暗然とせざるを得ない.
★★★☆(★5個が満点)
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2008/03/15

独断的映画感想文:BOBBY

日記:2008年3月某日
映画「BOBBY」を見る.Bobby2
2006年.監督:エミリオ・エステヴェス.
出演:アンソニー・ホプキンス(ジョン・ケイシー),デミ・ムーア(ヴァージニア・ファロン), シャロン・ストーン(ミリアム・エバース),ハリー・ベラフォンテ(ネルソン),ジョイ・ブライアント(パトリシア),ニック・キャノン(ドウェイン),エミリオ・エステヴェス(ティム・ファロン),ローレンス・フィッシュバーン(エドワード・ロビンソン),ブライアン・ジェラティ(ジミー),ヘザー・グレアム(アンジェラ),ヘレン・ハント(サマンサ),ジョシュア・ジャクソン(ウェイド・バックリー),デヴィッド・クラムホルツ(フィル),アシュトン・カッチャー(フィッシャー),シャイア・ラブーフ(クーパー),リンジー・ローハン(ダイアン),ウィリアム・H・メイシー(ポール・エバース),スヴェトラーナ・メトキナ(レンカ・ヤナチェック),フレディ・ロドリゲス(ホセ),マーティン・シーン(ジャック・スティーブンス),クリスチャン・スレイター(ティモンズ),ジェイコブ・バルガス(ミゲル),メアリー・エリザベス・ウィンステッド(スーザン),イライジャ・ウッド(ウィリアム・エイバリー).
BOBBYの愛称で親しまれたロバート・F・ケネディの暗殺当日の,アンバサダー・ホテルを舞台とした群像劇(いわゆる「グランド・ホテル」形式.冒頭,引退したホテルマンが「『グランド・ホテル』という映画を見たことあるかい?」という会話を交わす場面がある).
1968年の状況を語る画面を随所に挟みながら,民主党大統領選挙対策本部の置かれたこのホテルの支配人,厨房従業員,カフェテリアのウェイトレス,美容室の係員,選対本部の人々,宿泊者,ショーに出ている歌手,結婚式を挙げようというカップル,取材を狙うチェコのレポーター等の,この日一日のエピソードが次々に描かれる.
1968年という年はアメリカでまた世界で,政治的に極めて先鋭化した年であった.アメリカでは4月4日,テネシー州メンフィスで公民権運動指導者マーチン・ルーサー・キングJR牧師が射殺された.
泥沼化しつつあったヴェトナム戦争に対し,民主党では左派のユージン・マッカーシーが大統領選立候補を表明して旋風を巻き起こし,更にロバート・F・ケネディ(RFK)がヴェトナム反戦綱領を掲げて立候補,6月のカリフォルニア州予備選挙が注目を集めていた.
映画はこの日の早朝,ホテルの火災警報が誤作動したシーンから始まる.登場人物は次々に現れ,その悩みや抱えた状況が描写されていく.
メキシコ人への差別を愚痴る厨房従業員,ヴェトナム前線送りを避けるために形式的な結婚をしようという若いカップル,選挙運動をさぼってLSDでトリップする若者,警察の選挙介入に怒る黒人選対職員.
一方,ホテルの中で浮気に走るカップルや,人気の低下におびえる歌手の表情,老夫婦の葛藤と和解も描かれる.
やがて夕闇が迫り選挙結果が入り始め,ホテルには訪問客があふれ始める….
中盤に至るまで各エピソードに登場する人々がどういう繋がりを持つのかが判らずに進行するので,緊張感が途切れかける面もあったが,終盤,選挙運動の勝利の報告,それに続く衝撃的な結末の中,決定的なシーンでその繋がりは明らかになる.
このシーンのもたらす重層的歴史的な悲劇性,喪失感は圧倒的である.
観客はこのシーンを見ながら,RFKが殺されたことの計り知れない大きさ,彼が生きていたらあり得たかも知れない別の可能性に思いをいたすことになるだろう.Bobby5
エピローグのRFKの演説も心にしみいる.
随所に挟まれるこの頃のロック・フォークの名曲も懐かしい.サイモンとガーファンクルの名曲「サウンド・オブ・サイレンス」のシーンでは涙を禁じ得なかった.
一見の価値ある映画.★★★★(★5個が満点)
個人的経験を言えば,JFK,マーチン・ルーサー・キングJR牧師,RFKと続いた暗殺は,僕に『金と暴力ですべてを解決する国アメリカ』という抜きがたい印象を植え付けた.特にRFKの暗殺で受けた衝撃は決定的であって,その衝撃は今もありありと蘇る.
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2008/03/10

独断的映画感想文:幸せのちから

日記:2008年3月某日
映画「幸せの力」を見る.3
2006年.監督:ガブリエレ・ムッチーノ.
出演: ウィル・スミス(クリス・ガードナー),ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス(クリストファー),タンディ・ニュートン(リンダ),ブライアン・ホウ(トゥイッスル),ジェームズ・カレン,カート・フラー.
実話に基づく映画.
1981年,サンフランシスコ.
クリス・ガードナーは医療機器の販売をしているがさっぱり売れず,5歳の息子クリストファーを保育所に預けて悪戦苦闘している.妻リンダは病院で働いているが,それでも家賃は払えず,駐車違反の罰金も払えない.
この生活から抜け出そうと,クリスは株式仲買人の道を目指し,必死に売り込んで証券会社の研修生に採用される.しかし研修生は6ヶ月間無休,しかも正職員に採用されるのは20人の内たったの一人.5
妻にも去られたクリスはこの最後のチャンスを生かそうとクリストファーの世話をしながら必死に働くが,そのうち家賃滞納でアパートを,次にはモーテルを追い出されついにホームレスの過酷な生活を強いられる….
この映画は親子の情愛ものとかサクセスストーリーとか,そういう生半可な映画ではない.
クリス親子の生活,特にホームレスになってからの暮らしは半端なものではない.
この期間彼は研修所を早引きして保育所で息子を受け取り,救貧施設のベッドを求めて教会の前の列に並ぶのだ.ベッドがいっぱいになればもう野宿しかない.
この生活の果てに彼は正職員に採用され,最後には億万長者になるのだが,採用されなかったらどうなったのだろう.
映画の大半はこの過酷な生活の描写に割かれ,その印象は重苦しい.
クリスという人は才能があって最後には成功したのだろうが,アグレッシブで自己中でもあり,付き合いやすい人物ではなさそうだ.1
妻のリンダは彼と息子を愛していたが,途中で耐えかねてニューヨークへ行ってしまう.それ以降リンダの話題は全く出てこない.彼女はどうなってしまったのか,それも気にかかる.
という訳でいろいろ文句もつけたい映画だが,クリスとクリストファーを演じる実のウィル・スミス親子の魅力に,最後まで引っ張られた.
★★★☆(★5個が満点)ってところか.
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2008/03/04

独断的映画感想文:トゥモロー・ワールド

日記:2008年3月某日
映画「トゥモロー・ワールド」を見る.1
2006年.監督:アルフォンソ・キュアロン.
出演: クライヴ・オーウェン(セオ・ファロン),ジュリアン・ムーア(ジュリアン・テイラー),マイケル・ケイン(ジャスパー・パルマー),キウェテル・イジョフォー(ルーク),チャーリー・ハナム(パトリック),クレア=ホープ・アシティ(キー),パム・フェリス(ミリアム),ダニー・ヒューストン(ナイジェル),ピーター・ミュラン(シド).
2027年,原因不明のまま人類に子供が生まれなくなってから18年が経過,希望を失った世界は暴力と無秩序に覆われている.
イギリスでは国境を閉鎖,軍による不法入国者の容赦ない取り締まりで辛うじて秩序を維持しているが,市街ではテロが頻発している.3
エネルギー省の役人セオはある日,元の妻ジュリアンが率いる反政府組織FISHに拉致される.
FISHはセオに,黒人の少女キーをヒューマン・プロジェクトという組織に送り届けるための,英国内の通行証の入手を求める.
その求めに応じ通行証を手に入れたセオはジュリアン,キー等と行動を共にするが,彼らの車は反政府組織に襲われジュリアンは射殺される.FISHのアジトに着いたセオは,キーが妊娠していることを知る.
妊婦キーを巡る陰謀の渦に,セオも巻き込まれていた….2
近未来SFだが,物語は主人公の視線に沿った映像で記述され,リアルで切実な感覚が呼び起こされる.
たとえば主人公が街角で見かける逮捕され,あるいは射殺される不法入国者たち.歩道に並べられて横たわる死者は,ナチスに街頭で撃ち殺されたユダヤ人たちを思い起こさせる.
希望を失い暴徒化した人々,その中を誰が味方で誰が敵かも分からず逃避行を続けるセオとキーたち.
終盤の,蜂起したFISHと政府軍の市街戦の中を逃亡するサスペンスフルなシーンは,主人公と共に息苦しくなるほどだ.
長回しを効果的に使った緊張感あふれる映像,新生児の泣き声に瞬間差し伸べられる人々の手の象徴的なシーン等,見応えあり.4
一見の価値ある映画.★★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:人のセックスを笑うな

日記:2008年3月某日
映画「人のセックスを笑うな」を見る.Sex1
2007年.監督:井口奈己.
出演: 永作博美(ユリ),松山ケンイチ(みるめ),蒼井優(えんちゃん),忍成修吾(堂本),あがた森魚(猪熊さん),温水洋一(山田先生),桂春團治(じいちゃん).
みるめとえんちゃん,堂本は美術学校の同級生.ある日車で拾った女性は,学校の新任の講師ユリだった.
彼女の研究室に入り浸るようになったみるめ,ある日彼女にモデルにならないかと誘われそのアトリエに連れ込まれる.そこで言われるままに裸になったみるめは,彼女と関係を持った.
ユリに夢中になったみるめは,えんちゃんがやきもきするのも構わず彼女のアトリエに通う.
ある日ユリが休講したとき,その自宅を訪ねたみるめは,彼を歓待してくれた初老のおじさんがユリの夫と知って仰天する….Sex3
というわけで展開する4人の男女の恋物語.
この映画を見たいと思った最大の要因は,主演の3人の演技にある.
一方この映画の最大の特徴は,繰り返し使用される長回しと冗長性のあるカメラワークであろう.
そのために俳優の演技が時に素のままに見えるときがあって,それが受け入れ難かった.
蒼井優の巧みな演技は,良く18,9歳の少女の恋心を表現していると思えた(もっとも,その少女像は,今時の女性としては多少幼い感じもしたが).
永作演じるユリは,ほぼ永作のキャラクターそのままであろう.
松山ケンイチにはもう少し違うものを期待していたが,やや当て外れ.初老のおじさん・あがた森魚が懐かしかった.Sex4
映画全体としては長すぎる.特にラストシーン,みるめが屋上でうろうろしているシーンは,あまりに冗長で苛立たしかった(その下の校庭で堂本とえんちゃんが立ち話しているシーンは良かったのに).
期待のし過ぎもあったか.★★★☆(★5個が満点)
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