独断的映画感想文:それでもボクはやってない
日記:2008年3月某日
映画「それでもボクはやってない」を見る.
2007年.監督:周防正行.
出演:加瀬亮(金子徹平),瀬戸朝香(須藤莉子),山本耕史(斉藤達雄),もたいまさこ(金子豊子),田中哲司(浜田明),光石研(佐田満),尾美としのり(新崎孝三),大森南朋(山田好二),鈴木蘭々(土井陽子),唯野未歩子(市村美津子),柳生みゆ(古川俊子),野間口徹(小倉繁),山本浩司(北尾哲),小日向文世(室山省吾),高橋長英(板谷得治),役所広司(荒川正義).
徹平はフリーター,ある日会社の面接を受けるため満員電車に乗り込む.
ドアに挟まれた上着の裾を引き抜くためごそごそするうち,ようやく乗換駅でホームに降りると,女子中学生に「触ったでしょう」と袖を掴まれた.
話を聞こうと彼を事務室に連れ込んだ駅員は,結局話を聞かずに警察に連絡,後に付いてきて「この人は上着の裾を抜こうとしただけ」と言ってくれた乗客も帰してしまう.
そのまま徹平はパトカーに乗せられ警察で逮捕,拘留.そしてこれが4ヶ月にわたる長い拘留生活と被告としての裁判の始まりだった….
この映画は痴漢冤罪事件をテーマに日本の裁判,検察,警察の問題点を描く.
場面の大半は法廷シーンだが,良く描き込まれたそのシーンは,緊張感あるやりとりで退屈を感じさせない.法廷シーンとしてはかなり上等の部類にはいるだろう(少し前に見た「愛の流刑地」の法廷シーンとは比べものにならない).
加瀬亮,役所広司等の演技も快調.
ネタばらしになるが,あいにくこの映画のラストはハッピーエンドではない.有罪率99.9%という司法の現状で,この映画の主人公のみ無罪という訳にはいかないのだろうが,見た後ストレスの残る映画ではある.
それにしてもこの映画を見ると,本当に痴漢をしたひとはゴメンナサイで即日釈放,示談金を支払えば社会的制裁もゼロというのに対し,冤罪の場合は当然無罪を主張すれば長期拘留,長期裁判,有罪判決と人生に計り知れないダメージを受ける.
「疑わしきは罰せず」等どこ吹く風,被害者の訴えを証拠で裏付ける努力もせず採用し,被疑者の無実の訴えに対しては「頑迷に容疑を否認し反省の色は微塵も見られず」と決めつける日本の裁判には暗然とせざるを得ない.
★★★☆(★5個が満点)
人気ブログランキングへ
コメント
こんばんわ。
『カリスマ映画論』の睦月です。
TB&コメントありがとうございました。
シリアスでありがならもどこかコミカルな雰囲気も持った
この作品から、日本の司法の現状について学び取ることは
非常に多かったです。
実に秀逸な1作でした。
投稿: 睦月 | 2008/03/29 21:39
睦月様
TB&コメント有り難うございました.
返事が遅くなって申し訳ありません.
何ものにも煩わされず判断を下せるよう幾重にも保護された裁判官の身分,それが保身に走る官僚主義的裁判官を生み出しているのでしょうか.
政治の理想と現実は難しいですね.
投稿: ほんやら堂 | 2008/04/06 15:33