独断的映画感想文:モーツァルトとクジラ
日記:2008年3月某日
映画「モーツァルトとクジラ」を見る.
2004年.監督:ベッター・ネス.
出演:ジョシュ・ハートネット(ドナルド),ラダ・ミッチェル(イザベル),ゲイリー・コール(ウォーレス),シーラ・ケリー(ジャニス).
発達障害の一種,アスペルガー症候群の男女の恋を描く映画.
冒頭主人公の住む街の空撮が美しい.
その街を走るタクシー,客は2人の日本人の老人.運転手は客が全く聞いていないのに,のべつ振り返っては話しかけている.そのうちあっけなくタクシーは駐車中のトラックに衝突,運転手は会合に遅れると叫んであたふたと姿を消してしまう.
その青年ドナルドは,アスペルガー症候群の人々のサポートグループを主宰する本人もその症候群の持ち主.
彼らは皆他人とのコミュニケーションが苦手だが,特異な才能を持つ人が多い.
その日新たに参加したイザベラは,言われたことを字義通りにしか解釈できないが,絵と音楽に才能を持つ美容師.ドナルドとイザベラは次第に惹かれ合う間柄となる….
物語は二人の恋愛のおずおずとしたスタートと様々な障害,その破局と修復を,周囲の人々との関わりを交え描いていく.
アスペルガー症候群といってもいろいろで,ドナルドは「普通」になりたいし「普通」にやれることを示したい.一方イザベルは「普通」でないこと,「普通」でない才能を持っていることを認めて欲しい.
題名の由来は,初めてのデートでの二人のハロウィーンの扮装だが,イザベルはモーツァルトに扮しドナルドはクジラのかぶり物を着る.クジラは大きくて安定していて立派だというドナルド,二人の恋の行方が象徴的に示されている.
アスペルガー症候群の傾向は誰しも多少なりとも持っている(あるいは子供の時に持っていた)ものが多い.
僕自身も映画を見ていて思い当たることが数多くあった.
二人のロマンスの結末のように,ハッピーエンドになりたいものだという祈りを込めて,★★★★(★5個が満点)
心温まる良い映画である.
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コメント
こんばんは。TBありがとうございました。
私もこの映画、とても好きでしたよ。
彼らの気持ちが、スレ違うのもすごく良く分かってズキズキしちゃいました。
普通の人が持たない、鋭敏な感覚を持つがゆえに、自分も、人も傷つけてしまうラダ・ミッチェルの役のヒロインを見ていると、
気持ちが分かりすぎるほど分かるがゆえに、自分はこうなりたくはない、なんて思ったりもしました。
投稿: とらねこ | 2008/03/28 00:17