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2008/05/28

独断的映画感想文:細雪

日記:2008年5月某日
映画「細雪」を見る.11
1983年.監督:市川崑.
出演:岸恵子(蒔岡鶴子),佐久間良子(蒔岡幸子),吉永小百合(蒔岡雪子),古手川祐子(蒔岡妙子),伊丹十三(辰雄),石坂浩二(貞之助),岸部一徳(板倉),桂小米朝(奥畑),江本孟紀(東谷),辻萬長(三好),常田富士男(五十嵐),浜村純(音吉),小坂一也(野村),三宅邦子(富永の叔母),細川俊之(橋寺),上原ゆかり(お春),白石加代子(酒亭の内儀),仙道敦子(橋寺の娘),橋爪淳(新兵).
あまりに有名な谷崎潤一郎の小説の映画化.
大阪上本町に本家のある蒔岡家の4姉妹の物語である.長女の鶴子,次女の幸子とも養子をとり,3女の雪子,4女の妙子は子細あって分家に暮らす.08
物語は雪子の縁談と妙子の男性遍歴を中心に,昭和13年の京阪神の上流家庭の状況を描く.
この映画の最大のポイントはその美しさである.平安神宮の桜,嵯峨野の紅葉をはじめとする情景の美しさ,女優の美しさ,その衣装の美しさは筆舌に尽くしがたい.この美しさを映像に留めたというだけでこの映画を見る価値は十分にあるであろう.
市川崑は女優の表情を,スクリーンの大半を埋めるほどのアップで繰り返し捉えるが,いずれの女優もそのアップで十分に見応えあり.06
物語の方は,映像の美しさに比べると,やや見劣りする.戦前の京阪神の上流家庭の状況が如何に丁寧に描かれようと,それは今の時点から見ればいささか退屈と言わざるを得ない.
昭和13年は,恐らく戦争の影が社会を覆う前の最後の瞬間であったろう.その数年後にはパーマをかけたり,振り袖を着たりするだけで市民から「非国民」と罵倒される社会になったのだから.05
その点で,物語の歴史性についての描写は,この映画が1983年の制作であるとしてももう少しあって良かったのではないかと思われる.
★★★☆(★5個が満点)
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コメント

TB有難うございました。

時代色を敢えて排したのは谷崎の耽美性を遺憾なく映像で表現したかったのでしょうね。

原作は1944年頃まで話が続きますが、そうした描写は一切なく、登場人物は着物に拘り続けます。それでも「こういう時世だから地味な柄」といった文言があったような記憶があります。
時代性を反映しなかったのは、あるいは谷崎の反骨精神だったのかもしれません。

原作が44年に軍部に掲載が禁止されたことが一番時代を感じさせますね。

投稿: オカピー | 2008/05/28 23:10

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