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2008年6月に作成された記事

2008/06/25

独断的映画感想文:グッド・シェパード

日記:2008年6月某日
映画「グッド・シェパード」を見る.
2006年.監督:ロバート・デ・ニーロ.2
出演:マット・デイモン(エドワード・ウィルソン),アンジェリーナ・ジョリー(クローバー),アレック・ボールドウィン(サム・ミュラッハ),タミー・ブランチャード(ローラ),ビリー・クラダップ(アーチ・カミングス),ロバート・デ・ニーロ(ビル・サリヴァン将軍),ケア・デュリア(ラッセル上院議員),マイケル・ガンボン(フレデリックス教授),マルティナ・ゲデック(ハンナ・シラー),ウィリアム・ハート(フィリップ・アレン),ティモシー・ハットン(トーマス・ウィルソン),リー・ペイス(リチャード・ヘイズ),ジョー・ペシ(ジョゼフ・パルミ),ジョン・タートゥーロ(レイ・ブロッコ),ジョン・セッションズ(ヴァレンティン・ミロノフ),エディ・レッドメイン(エドワード・ウィルソン・ジュニア),オレグ・ステファン(ユリシーズ/スタス・シヤンコ),ガブリエル・マクト(ジョン・ラッセル・ジュニア).
1961年.CIAの指揮・支援の下,キューバ侵攻を試みる亡命勢力,しかしその攻撃は惨めな失敗に終わる(ビッグス湾事件).
その直後,作戦を担当したCIAのエドワード・ウィルソンの元に写真とテープが送られてくる.
ベッドで抱き合う男女の粒子の粗い写真,その睦言と思われる録音テープ.エドワードはその解析を部下に命じる.
第2次大戦開戦前,エール大学在学中だったエドワードはFBIの捜査員から接触を受け,ナチス支持者と思われる指導教授のフレデリックスの身辺を洗うことを引き受ける.
このことをきっかけにエドワードは戦略事務局(OSS)に勤め,戦後は創設されたCIAに移り諜報活動に専念することになる.
この間,エドワードは聾者であるローラと恋仲になるが,妊娠させたラッセル上院議員の娘クローバーと結婚し一児をもうける.3
映画はその後諜報活動に没頭するエドワードが,ロンドンに赴任し長く妻子と別離すること,ローラと再会するが彼女との逢い引きが撮影されクローバーに送られること,ソ連のスパイとのやりとりや,かけがえのない部下ブロッコを獲得すること等を描きながら,61年の事件の謎の解明をかぶせて物語を進めていく.
CIAの創設という歴史上の出来事と,その創設に関わったエドワードの家族がたどった運命を描く大作,重厚な画面の作りとマット・デイモン,アンジェリーナ・ジョリーの熱演は評価できる.
しかしこの映画は僕は楽しめなかった.4
それはひとえにCIAと,その創設メンバー達に典型なアメリカのエリートの世界に全く興味がない(と言うよりは敵意しか感じない)からだ.
ボーンズメンと言う存在も知らなかった(ボーンズメンはエール大学の4年生から選ばれる,1832年創設の秘密結社スカル・アンド・ボーンズのメンバーとのこと).映画にはたびたびボーンズメンの集まりが出てくるが,何のことか分からない.
マット・デイモンの演技は良かったが魅力は感じなかった.
見終わって気づいたが何と167分の長尺,最後まで重苦しく救いのない,好きになれない映画だった.まあこんな感想アップしない方が良かったんでしょうね.ちなみに題名は「良き牧者」の意味.
★★(★5個が満点)
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2008/06/21

独断的映画感想文:今宵、フィッツジェラルド劇場で

日記:2008年6月某日
映画「今宵、フィッツジェラルド劇場で」を見る(ネタバレあります).3_3
2006年.監督:ロバート・アルトマン.
出演:メリル・ストリープ(ヨランダ・ジョンソン),リリー・トムリン(ロンダ・ジョンソン),ギャリソン・キーラー(ギャリソン・キーラー),ケヴィン・クライン(ガイ・ノワール),リンジー・ローハン(ローラ・ジョンソン),ヴァージニア・マドセン(デンジャラス・ウーマン),ジョン・C・ライリー(レフティ),マーヤ・ルドルフ(モリー),ウディ・ハレルソン(ダスティ),トミー・リー・ジョーンズ(アックスマン),メアリールイーズ・バーク(ランチレディ),L・Q・ジョーンズ(チャック・エイカーズ).
アメリカはミネソタのフィッツジェラルド劇場.そこで毎週土曜の夜行われていたラジオ番組の「プレイリー・ホーム・コンパニオン」の公開中継が,その夜最終回を迎える.
いつものように司会のギャリソン・キーラーが進める番組,フォークやカントリー&ウェスタン,ゴスペルの歌手達がコントやトークをはさみながら演奏を披露する.4
楽屋には謎のブロンドの美女が現れ,番組の終わる頃には劇場を買い取ったアックスマンが姿を見せる.その中でいつものように賑やかに楽しく番組を進めるスタッフや出演者達の群像劇.
この映画が気に入った最大のポイントは,演奏される音楽である.それは,僕がアメリカを嫌いになる前(つまり,ロバート・F・ケネディが暗殺される前)に耳に親しんだ,懐かしいフォークやカントリーナンバーの雰囲気をそのまま持っている曲達なのだ.
それを歌う俳優やコメディアン達の芸達者なことには感心するしかない.
メリル・ストリープとリリー・トムリンのハーモニーなど立派なものである.最も芸達者と見られるケヴィン・クラインが1曲も歌わないのは,さぞ本人が辛かったのではないか.1
一人で歌い,MCをやり,即興でコマーシャルを歌い語る実在の人物ギャリソン・キーラーを,本人が演じているのも素晴らしい.
舞台には擬音専門の江戸家猫八みたいなスタッフもいて,彼を困らせようとメリル・ストリープ達が話の中に次々と奇想天外なもの(オランウータン,電気ノコギリetc)を出しては,その都度その音や鳴き声がちゃんと聞こえてくるというシーンには大笑いしてしまう.
楽屋に来た謎の美女は実は死の天使で,老齢の出演者をお迎えに来たのだが,彼女の存在も映画のテイストの一つ.2
エピローグでスタッフや出演者が元劇場のお向かいにある食堂に集まっていると,この美女が入ってくる.ぎょっとして振り返る一同,ケヴィン・クラインが動揺して指を細かく動かすのが,「今度は誰が死ぬんだ,あいつか?こいつか?」と言っているようでこれも大笑い.
何とも言えぬ味のあるロバート・アルトマンの遺作.一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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2008/06/17

独断的映画感想文:17歳の風景 少年は何を見たのか

日記:2008年6月某日
映画「17歳の風景 少年は何を見たのか」を見る.172
2005年.監督:若松孝二.
出演: 柄本佑(少年),針生一郎(老人),関えつ子(老婆),小林かおり,井端珠里.
冒頭,波打ち際に置かれた自転車.車輪は砂に埋もれかけており,荒々しい波が浜辺に押し寄せる.
画面は冬の富士山に移り,その麓から自転車で駆け下りる少年.少年は東京の繁華街を抜け,ひたすら自転車をこいでやがて冬の日本海に出る.
後は海岸に沿って北上する少年.
少年は母親を殺してきたらしい.それを示唆する新聞記事,その話題を喋り合う,大学生風のラーメン屋の客3人.画面はしかしそれ以外は,ただ自転車をこぎ続ける少年を追っていくのみ.
雪の中雨の中もひたすら少年はこぎ続ける.
途上のエピソードは2つだけ.171
信越線青梅川駅の待合室で出会った老人は,自分の終戦時19歳だった戦争体験を語って聞かせる.雪に埋もれた集落で足をくじいて動けなくなっていた老女は,強制連行されてから在日として過ごしてきた自分の人生を語り,朝鮮の歌を延々と歌って聴かせる.
やがて転倒して自転車も大破し,それでもそれを抱え上げて海岸に沿って進む少年.海の向こうに彼が見たものは…?
まだあどけなさの残る少年,しかしじろっと睨むと人一人殺してきた凄みのある顔だ.彼がどこに向かって何を目的に自転車をこぐのか,何の説明もない.173
しかし少年のこぎ方は尋常ではない.前のめりになって憑かれた様に一心不乱にこぐ.
バックに聞こえる,ギター伴奏のみの激しい叫びの様な歌.
時に少年は道路を離れ,砂浜の波打ち際を疾走する.その姿を望遠でとらえる映像は,あたかも荒波に向かって突撃する様な迫力で,少年の悲しみと絶望の深さが胸にしみる.
映画全体が緊張感を持って表現する少年のその有り様を,観客はどう受け止めればいいのだろう.
映画にしかできないものを見ることが出来る,映画らしい映画.一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:そのときは彼によろしく

日記:2008年6月某日
映画「そのときは彼によろしく」を見る.2
2007年.監督:平川雄一朗.
出演: 長澤まさみ(滝川花梨),山田孝之(遠山智史),塚本高史(五十嵐佑司),国仲涼子(柴田美咲),北川景子(葛城桃香),黄川田将也(夏目貴幸),本多力(松岡郁生),黒田凛(滝川花梨(子供時代)),深澤嵐(遠山智史(子供時代)),桑代貴明(五十嵐佑司(子供時代)),和久井映見(遠山律子),小日向文世(遠山悟郎).
冒頭,ベッドに眠る花梨とそれを見守る智史と佑司.この3人は小学生の頃の親友だった.
転校してきた智史は,湖の岸辺で廃車になっているバスを「秘密基地」にしている花梨と佑司と友達になる.二人は施設で暮らしているらしく,花梨は両親を知らず,佑司は父の死後母に捨てられた.3人は無二の親友となる.
佑司は将来画家に,智史は将来水草の販売をすると言い,花梨は画家のモデルと水草屋の看板娘になると言うのだった.1
やがて智史の再びの転校で彼らは別れ別れになる.智史はその後約束通り水草の専門店を開く.
ある日店を訪ね,押しかけ店員になったのは,人気モデルを引退したばかりの森川鈴音だった….
実はこの森川鈴音はもちろん滝川花梨で,再開した二人の元に消息の知れなかった佑司が交通事故にあったという知らせが入り,一方花梨は子供の頃から抱えていた難病が悪化して…という基本難病ものだけど韓流ドラマも裸足で逃げる様な大胆設定.
俳優達は皆善戦していたが,最後のどんでん返し含めてファンタジーとは言えあまりのご都合主義の展開に,やや引いてしまった.3
この映画を救ったのは,回想シーンの子役達の好演である.
特に花梨の誕生会のシーン,智史をホームで見送る別れのシーン(何故か大人が一人もいない)では,つい涙ぐんでしまった.
所々にすてきな映像もあったしおしゃれな映画ではあるが,物語としては度し難し.
★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:4分間のピアニスト

日記:2008年6月某日
映画「4分間のピアニスト」を見る.45
2006年.監督:クリス・クラウス.
出演:モニカ・ブライブトロイ(トラウデ・クリューガー),ハンナー・ヘルツシュプルング(ジェニー・フォン・レーベン),スヴェン・ピッピッヒ(ミュッツェ),リッキー・ミューラー(コワルスキー).
冒頭,刑務所の全景に続き,房室で首つりをしている女囚が映る.
その横で寝ているジェニーが目覚め,死体を見るが特に驚くこともなく,やがて死体のポケットから取り出したタバコをくゆらす.
クリューガーは80歳の名ピアニスト,長年この刑務所でピアノ教師を務めてきたが,収監者の中にジェニーを見いだしその才能に期待をかける.44
ジェニーはピアノには天才的な腕を持つが心の荒みきった殺人犯,誇り高く厳格な教師クリューガーとは事ごとに対立する.
クリューガーは,以前この刑務所がナチスの収容所だった時代に看護婦として勤めた経験があり,その時期に誰にも言えぬ辛い経験をしている.
一方物語の進展と共にジェニーの生い立ちも明らかになってくる.ジェニーをコンクールに出場させようとがんばるクリューガー,しかしジェニーの暴力性は止まらず,それに反発する同房の囚人や看守の圧迫は激しくなる一方.
署長はジェニーのコンクール出場を禁じ,クリューガーが寄付したピアノも撤去されることになった.この苦境を二人は,どう切り抜けるのか….42
ジェニーとクリューガーの設定がよく考えられていて,その二人の織りなすドラマに引き込まれる.
もとより映画中で演奏されるピアノ曲には心打たれるが,特に最後のコンテストでのジェニーの演奏は,良い意味で予想を覆される内容だった.
いろいろ説明不足と思うところもあるが,ラストシーンの迫力はすべてを納得させる力を持つ.ジェニー役のハンナー・ヘルツシュプルングのとんがった演技と眼力は一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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2008/06/11

独断的映画感想文:パッチギ!LOVE&PEACE

日記:2008年6月某日
映画「パッチギ!Love&Peace」を見る.Pdvd_046
2007年.監督井筒和幸.
出演:井坂俊哉(李安成(アンソン)),中村ゆり(李慶子(キョンジャ)),西島秀俊(野村健作),藤井隆(佐藤政之),風間杜夫(ビョンチャン),キムラ緑子(兄妹の母),ラサール石井(三浦プロデューサー),杉本哲太(「太平洋のサムライ」監督),麿赤兒(石橋中将役の大物俳優),でんでん(ライトエージェンシー社長),寺島進(イカ釣り船の船長),国生さゆり(お志摩),田口浩正(南プロデューサー),山本浩司(ライトエージェンシー松井),松尾貴史(ギャグ好きのおじさん),中村有志(宇野重吉)(これどういう洒落か?),温水洋一(マスター),木村祐一(漁船の船長).
話題作「パッチギ!」の続編だが,これほどむちゃくちゃな映画も珍しい.
映画は難病の息子をかかえるアンソン,芸能界の仕事を始め戦争映画の日本人ヒロインを演じるキョンジャ,彼らの父達の徴兵忌避事件を軸に進むのだが,まず続編と言っても俳優陣は総取っ替え,おまけに前作で主人公であった松山康介は今回は出てこない.冒頭の突然始まる主人公達と国土館高校応援団との殴り合いも,何故そうなるかは全く判らず(特に説明の必要もないが).
おまけにアンソンの息子が筋ジストロフィーだという難病テーマが,突然主題の一つに入っている.
映画の進行に伴って挿入されるアンソン等の父親の,徴兵忌避からヤップ島守備戦に巻き込まれるにいたる物語も,何のことか判然としない.
突っ込みたいところは山のようにあるが,何故か最後まで見てしまうのは,ひとえにこの映画の異常な迫力・エネルギーにあるのだろう.このチャンスに言いたいことを皆詰め込み言ってやろうという,制作者の構えに圧倒される思いだ.Pdvd_048
この映画は大勢で見て,その後つっこみ大会をやるのが正しい見方かも知れない.
この映画は文化庁の支援を受けているようだが,文化庁の太っ腹を褒めるべきか.幸か不幸か,週刊新潮の取り上げるところにはならなかったようである.
俳優ではアンソンとキョンジャを演じた両名が,共に新人ながら見応えあり.藤井隆のようなお笑いが副主人公等を演じるのは,個人的には好きではない.Lp1
★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:山桜

日記:2008年6月某日
映画「山桜」を見る.1
2008年.監督:篠原哲雄.
出演:田中麗奈(磯村野江),篠田三郎(浦井七左衛門),檀ふみ(浦井瑞江),北条隆博(浦井新之助),南沢奈央(浦井勢津),富司純子(手塚志津),高橋長英(磯村左次衛門),永島暎子(磯村富代),村井国夫(諏訪平右衛門),東山紀之(手塚弥一郎).
藤沢周平原作の時代劇.
冒頭,伯母の墓参りをすませ春の野辺を歩く磯村野江,美しく咲き誇る山桜に目をとめる.
その枝を取ろうと背伸びするが届かず,足袋を汚してしまう.その野江の後から「手折って進ぜよう」と声をかけ山桜の枝を折り取ってくれたのは,手塚弥一郎,かって野江とのあいだに縁談のあった男である.
野江は最初の夫の死後磯村に嫁いだが,磯村の家は金貸しが本業の如き家で,権力者に取り入り金貸しに励む夫に,野江は心を許すことができない.4
「今は幸せでござろうな」と言って去って行った弥一郎に,野江は心和むものを感じるのだった.
折しも権力者の座にある諏訪平右衛門は,富農と結託した新田開発を強行し,不作にあえぐ農民の不満は高まる一方だった.その諏訪平右衛門をある日手塚弥一郎が襲い殺害する.野江の心は激しく騒ぐ….
原作は短編であり,しかもラストの1行のために全編があるような作品,映画化は難しかろうと思っていたが,原作に思い入れのある作品としてはまずまずの出来に思える.
特に庄内の美しい風景,季節の鳥の声などが心にしみる.
田中麗奈,壇ふみ,東山紀之等の俳優の押さえた物静かな演技も期待通り.特筆すべきは富司純子で,彼女が登場した瞬間から映画の格まで変わったかのように感じた.彼女と田中麗奈が演じる映画のラストは,この映画の最大の見せ場と言えよう.5
ところがこの二人の演技が未だ続いている最中に,一青窈の歌う主題歌が突然始まったのには吃驚した.この極めて現代的な一青窈の歌の挿入は,それまで99分間積み上げてきた感動をまさにラスト1行でぶち壊すものとしか思えない.
監督は時代劇は初めてだそうだが,次回からはこういうことは止めて欲しい.
この歌をいれなければ★★★☆.この歌をいれれば★(★5個が満点).
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2008/06/05

独断的映画感想文:悪い男

日記:2008年6月某日
映画「悪い男」を見る.1
2001年.監督:キム・ギドク.
出演:チョ・ジェヒョン(ハンギ), ソ・ウォン(ソナ),チェ・ドンムン(ミョンス),キム・ユンテ(ジョンテ),キム・ジョンヨン(アンヒ).
キム・ギドク監督は3作目である.
冒頭街を行き交う人々のなか異彩を放つやくざものハンギ.ベンチに座る女子大生ソナに目をとめその隣に腰を下ろす.
嫌悪感も露わに立ち上がり,来合わせた恋人の胸に飛び込むソナ,そのソナに後ろから抱きつきハンギは強引にその唇を奪う.
周りにいた軍人に取り押さえられ袋だたきにされ,ソナには唾を吐きかけられるハンギ.物語はそこから始まる.2
ハンギはソナに罠を仕掛け,自分が2人の子分と取り仕切る売春宿に売り飛ばす.絶望のうちに娼婦としての暮らしを送るソナ,ハンギは男に抱かれるソナを夜ごとマジックミラー越しに見つめるのだった….
荒々しく暴力的な映画だが,これは紛れもない純愛映画である.
一目見て恋に落ちたソナに罠を仕掛け,娼婦に身を落とさせながら,ハンギはソナを抱くことも出来ない.日ごと夜ごと狂おしく彼女を見つめながら,ハンギに出来ることと言えば眠っている彼女の乱れた髪をそっと直すことくらい.3
ハンギはほとんど口を開かないのだが,後半になって彼が絞り出す様に叫ぶ「ヤクザ風情に愛だなんて…」という台詞が印象的だ.
そのハンギの思いに次第に気付いていくソナのこころ.物語は思いがけない終幕に向かって二転三転する.
僕は韓国映画は生理的に苦手なのだが,この映画でもそういう苦手な場面はいくつもあったのだが,そんなことはどうでも良いと思える映画の迫力だった.4
映画にしか描けない物語を断固として紡ぎ続ける監督の姿勢に敬礼.俳優も皆良かった.
一見の価値あり.
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