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2008/06/05

独断的映画感想文:悪い男

日記:2008年6月某日
映画「悪い男」を見る.1
2001年.監督:キム・ギドク.
出演:チョ・ジェヒョン(ハンギ), ソ・ウォン(ソナ),チェ・ドンムン(ミョンス),キム・ユンテ(ジョンテ),キム・ジョンヨン(アンヒ).
キム・ギドク監督は3作目である.
冒頭街を行き交う人々のなか異彩を放つやくざものハンギ.ベンチに座る女子大生ソナに目をとめその隣に腰を下ろす.
嫌悪感も露わに立ち上がり,来合わせた恋人の胸に飛び込むソナ,そのソナに後ろから抱きつきハンギは強引にその唇を奪う.
周りにいた軍人に取り押さえられ袋だたきにされ,ソナには唾を吐きかけられるハンギ.物語はそこから始まる.2
ハンギはソナに罠を仕掛け,自分が2人の子分と取り仕切る売春宿に売り飛ばす.絶望のうちに娼婦としての暮らしを送るソナ,ハンギは男に抱かれるソナを夜ごとマジックミラー越しに見つめるのだった….
荒々しく暴力的な映画だが,これは紛れもない純愛映画である.
一目見て恋に落ちたソナに罠を仕掛け,娼婦に身を落とさせながら,ハンギはソナを抱くことも出来ない.日ごと夜ごと狂おしく彼女を見つめながら,ハンギに出来ることと言えば眠っている彼女の乱れた髪をそっと直すことくらい.3
ハンギはほとんど口を開かないのだが,後半になって彼が絞り出す様に叫ぶ「ヤクザ風情に愛だなんて…」という台詞が印象的だ.
そのハンギの思いに次第に気付いていくソナのこころ.物語は思いがけない終幕に向かって二転三転する.
僕は韓国映画は生理的に苦手なのだが,この映画でもそういう苦手な場面はいくつもあったのだが,そんなことはどうでも良いと思える映画の迫力だった.4
映画にしか描けない物語を断固として紡ぎ続ける監督の姿勢に敬礼.俳優も皆良かった.
一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)
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コメント

TB有難うございました。

僕もこれが三本目でしたよ。^^
その前に観た「春夏秋冬そして春」「サマリア」に劣らず衝撃を受けました。

最近観た「絶対の愛」辺りはこねくりまわした感じが強くて我々の生活感情との接点が(感じられそうで)感じられなかったのですが、この作品の歪んだ愛情表現は凄かったですね。
歪んだ愛情を歪んだ愛情で受けるから、純愛になるのでしょう。こんな発想は他の作家にはなかなかないですね。

投稿: オカピー | 2008/06/06 03:31

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☆☆☆☆(8点/10点満点中) 2001年韓国映画 監督キム・ギドク ネタバレあり [続きを読む]

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