« 2008年6月 | トップページ | 2008年8月 »

2008年7月に作成された記事

2008/07/23

独断的映画感想文:見知らぬ女からの手紙

日記:2008年7月某日
映画「見知らぬ女からの手紙」を見る.2_3
2004年.監督:シュー・ジンレイ.
出演:シュー・ジンレイ, チアン・ウェン.
1948年暮れ,北京に住むある作家の許に見知らぬ女からの手紙が届く.
「昨日息子が死にました」と書き始めたその手紙は,「この手紙が着く頃には私もこの世にはいない」と続く.
話は1930年にさかのぼる.北京に暮らす少女,その少女の住む同じ街区の大きな家に作家が引っ越してきた.
運び込まれる立派な家具調度,大量の外国の書籍,しかも越してきたのはオートバイを駆る若い男性だ.共通に使う門でその作家とすれ違う.作家は「Sorry」と微笑んだ.6_2
「その瞬間に私はあなたに恋をした」と手紙はつづる.
作家の布団を干す大家の手伝いをしてその家に入った少女,陶器の西洋人形,ダブルベッドを見てその生活を想像する.少女は男を慕い,空想の恋に幸せな日々を送る.
ところが少女は突然山東に引っ越すことになった.最後の晩,ひと目作家に会いたいと夜そのドアをノックする少女.しかし作家は不在で,彼をものかげで待った少女は,夜遅くなって女連れで戻ってくる作家を見ることになる….
6年後,彼女は北京の師範学校に合格して再び北京に住むことになった.5_4
幾たびか道で作家とすれ違うが,ある日抗日デモに参加した彼女は警官隊に追われ作家に救われる.その夜,思い出の家に誘われ一夜を共にする彼女.
しかしその幸せもつかの間,作家は「必ず連絡する」と言い置いて取材旅行に出かけ,そのまま連絡はなかった.妊娠に気付いた彼女は出産のために北京を後にする….3_3
原作はユダヤ人の作家シュテファン・ツヴァイク,その戦前のウィーンを舞台にした小説を,監督は戦中戦後の北京を舞台に翻案した.
この映画はなんと言っても映像が美しい.特に夜の胡同の光と影の描き方は誠に印象的.
また,このいい加減な作家をひたすら恋する女を演じるシュー・ジンレイと,その少女時代を演じる俳優(名前は読み取れず)が非常に美しく魅力的.1_4
これらの魅力に惹かれ,手紙を読む主人公の声に導かれ,一気に最後まで見てしまう.
映画らしい映画,一見の価値あり.★★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (1) | トラックバック (1)

独断的映画感想文:インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国

日記:2008年7月某日
映画「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」を見る.1_3
2008年.監督:スティーヴン・スピルバーグ.
出演:ハリソン・フォード(インディアナ・ジョーンズ),シャイア・ラブーフ(マット・ウィリアムズ),レイ・ウィンストン(ジョージ・マクヘイル),カレン・アレン(マリオン・レイヴンウッド),ケイト・ブランシェット(イリーナ・スパルコ),ジョン・ハート(オクスリー教授),ジム・ブロードベント,ディーン・チャールズ・スタンフォース.
1950年代のアメリカのハイウェイ,軍隊の車列を男女を乗せたオープン・カーが派手にロックンロールを鳴らしながら追い抜いていく.
車列はハイウェイから逸れ軍の基地に吸い込まれるが,実は彼らはKGB,女性エージェント・スパルコに率いられ宇宙のパワーを秘めたクリスタル・スカルの秘密を追っている.
彼らに捕らわれクリスタル・スカルの探索に協力させられていたインディ・ジョーンズは何とかその場を逃げ出し,考古学教授として赴任していた大学に舞い戻るが,そこにマットと名乗る若者が現れ,旧友のオクスリー教授がクリスタル・スカルの謎を追ったまま行方不明になったと告げる….5_3
派手なラッパのテーマ音楽と共に,あの不死身で無敵のインディ・ジョーンズが帰ってきた.
お約束のネタ満載で血湧き肉躍り手には汗を握る爆笑アクションドラマ.
スパルコに銃を突きつけられむっとしながらも,「謎」を突きつけられるとついいそいそと謎解きに励んでしまう,後先を考えない最高の頭脳が好ましい.6
マットがジャングルで出会った猿がブラッド・ピットそっくりなのもおかしかった.
結末はいつも通り後にはぺんぺん草も生えない破壊の限りが尽くされ,ジョーンズは機嫌良く大学に戻っていく.今回は他にもジョーンズの機嫌を良くするネタもあった様だ.
次回作はどうなるのか,それもお楽しみ.
見て損は無し,★★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (1) | トラックバック (2)

独断的映画感想文:パンズ・ラビリンス

日記:2008年7月20日(日
映画「パンズ・ラビリンス」を見る.1_2
2006年.監督:ギレルモ・デル・トロ.
出演:イバナ・バケロ(オフェリア),セルジ・ロペス(ビダル),マリベル・ベルドゥ(メルセデス),ダグ・ジョーンズ(パン/ペイルマン),アリアドナ・ヒル(カルメン),アレックス・アングロ(フェレイロ医師),ロジェール・カサマジョール(ペドロ).
冒頭,血塗れで倒れている少女オフェリアの映像,その出血が逆回転で消えていくと地底の王国の王女モアナの伝説が紹介される.
画面は切り替わり,荒涼としたスペインの地方をゆく車列,少女オフェリアと母カルメンが乗っている.
仕立屋の夫を亡くしたカルメンは,その後つきあったファシストの大尉ビダルの子を宿し,今大尉の元に向かう途上である.
やがて大尉の拠点に着いたオフェリアは,近くにある不思議な迷宮に迷い込み,妖精の導くままパンと出会う.パンは彼女を女王モアナの生まれ変わりではと呼び,彼女に3つの試練を与えると言う.2_2
内戦後間もないスペインのファシスト軍とゲリラの緊張下,まもなく出産を迎える母に付き添いながら,オフェリアは3つの試練を受けようとするのだった….5_2
この映画はファンタジーではあるが子供映画ではない.実に苦い味の大人向けダークファンタジーだ.
ヨーロッパにはこのような苦い味のファンタジーの伝統があるようで,僕が思い出すのはヴィーヘルト作の岩波少年文庫収載の童話集「くろんぼのペーター」である.
この,先の大戦後まもなく書かれた本は,題名の差別性の故か内容があまりに暗く苦いものだったためか絶版となり,今では手にすることはできない.この童話集の中の一編「母の心」に,森のフクロウに主人公の少年が与えられる3つの試練というのがあるが,これも辛く悲しい旅路である.3_2
この映画も結末はハッピーエンドではあるが,まことに苦く暗い味の映画で,エンタテインメントとは言い難い.主人公オフェリアの子供らしい勇気が最後に勝利を収めるが,現実の世界は苦いままに映画は終了する.
監督はこの映画で我々に何かを警告しようとしているのだろうか?
★★★☆(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (1) | トラックバック (3)

独断的映画感想文:ぐるりのこと。

日記:2008年7月某日
映画「ぐるりのこと。」を見る.3
2008年.監督:橋口亮輔.
出演:木村多江(佐藤翔子),リリー・フランキー(佐藤カナオ),倍賞美津子(吉田波子),寺島進(吉田勝利),安藤玉恵(吉田雅子),八嶋智人(諸井康文),寺田農(吉田栄一),柄本明(安田邦正),木村祐一(夏目先輩),斎藤洋介(橋本浩二),温水洋一(和久井寛人),峯村リエ(生方圭子),山中崇(小久保健二),加瀬亮(田中ツヨシ),光石研(幼女誘拐殺人事件の弁護士),田辺誠一(売春事件の裁判長),横山めぐみ(資産家の母親),片岡礼子(小山悦子),新井浩文(大間真治).
佐藤翔子は小さな出版社に勤めるばりばりの編集員.佐藤カナオは日本画家を目指すが今は靴屋のバイトをしている.2
二人は結婚式も挙げていないが,翔子は子供をみごもっている.
カナオは先輩から紹介され法廷画家の仕事をするようになり,記者の安田等に教えられながら何とか仕事に慣れていった.しかし生まれたばかりの子供を失う悲劇に襲われ,翔子は次第に心を病んでいく.
カナオはその翔子を支えながら法廷画を描き続けるのだった….
画面が切り替わるときに日付が出て,この映画は1993年7月から2001年7月までのことと判っている.映画はその間の翔子とカナオの夫婦の死と再生の物語である.
几帳面な性格の翔子は,「やる」日もカレンダー上に予め記入し,カナオの帰りが遅くなってけんかになった日も予定通り「まずやろう」と言ってカナオを呆れさせる.対抗上カナオは「じゃあ口紅を塗ってくれ」と迫る…というくだりはやたら可笑しい.
しかしその几帳面さが子供の死という悲劇後彼女を追い詰める.
木村多江とリリー・フランキーというキャスティングは最高である.特にカナオはまるでリリー・フランキーのために書かれたような役だ.佐藤カナオの,優柔不断に見えて一本芯の通っている役柄は,九州もんのリリーであればこそ納得のできる表現となったと思う.1
嵐の夜の翔子とカナオの息詰まるやりとりは,この映画の最高の見せ場であり,見応えあり.
一方この映画は,カナオが法廷画家であることから,社会的に大きな影響を与えた犯罪事件を次々に見せていく.
思えば何と薄気味の悪い事件がこの8年間に起こっていることだろう.しかもそれらは未だ予兆に過ぎないのではないか.
2001年の9月には「米国同時多発テロ事件」が起きている.そしてそれは米国が主導し,我が国の連立政権が無条件に支持した「テロとの戦い」という今に至る諸戦争の始まりだ.5
この映画には「この戦争が始まる前の一市民の生活」という緊張感を見て取ることもできよう.
★★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (1) | トラックバック (4)

2008/07/16

独断的映画感想文:白い嵐

日記:2008年7月某日
映画「白い嵐」を見る.5
1996年.監督:リドリー・スコット.
出演:ジェフ・ブリッジス(シェルダン),キャロライン・グッドオール(アリス),ジョン・サヴェージ(マックレア),スコット・ウルフ(チャック),ライアン・フィリップ(ギル).
最初に「この物語は実話である」とコメントが入る.
冒頭,家族と別れを告げバスに乗る少年チャック,彼は自分の意志を押し通し,訓練航海船アルバトロス号への1年間の乗り組みのため出発するのだ.3
その停泊地に着くと,同年齢の少年達が集まってくる.しばらく停泊地での基礎的な訓練を行った後,船長シェルダンを含む大人4人,訓練生11人は,やがて停泊地を出帆した.
最初は角を突き合わせていた少年達も,船長の指揮による訓練のなかで友情を深め成長していく.
やがてガラパゴス諸島の無人島に到着した彼らは,死火山の山頂に登り,歴代の訓練生が記帳したノートを掘り出して彼らもまた記帳するのだった.
しかし停泊地に向けて戻る途上,仲間のフランクがイルカを殺して下船を命じられ,更に船は「白い嵐」と呼ばれる激しいスコールに遭遇する….1
オーソドックスな青春ドラマだが,価値観が明瞭で見た後が爽やかだ.
いかにも若々しい少年達が,帆船の操船訓練のなかでたくましく変貌していくのが素晴らしく,大海原や夕景・夜景,きらめく波間を進むアルバトロス号の映像が美しい.少年達一人一人の描写も過不足がない.
クライマックスの「白い嵐」のシーンの迫力は,筆舌に尽くしがたい.観客はただ息をのみ,体を乗り出すだろう.遭難の恐ろしさ,難船の悲しみが直に伝わってくる様だ.
この後船長はその資格剥奪を巡って審判に付されるが,政治的に動く一部の親に対する船長と訓練生の率直さが,良い結末をもたらしている.2
エンドロールに流れる「バルパライソ」というスティングの歌も素晴らしい.一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (2)

2008/07/14

独断的映画感想文:潜水服は蝶の夢を見る

日記:2008年7月某日
映画「潜水服は蝶の夢を見る」を見る.1
2007年.監督:ジュリアン・シュナーベル.
出演:マチュー・アマルリック(ジャン=ドミニク・ボビー),エマニュエル・セニエ(セリーヌ・デスムーラン),マリ=ジョゼ・クローズ(アンリエット・デュラン),アンヌ・コンシニ(クロード),パトリック・シェネ(ルパージュ医師),マックス・フォン・シドー(パピノ).
映画の冒頭,制限された視界,ぼやけた焦点.
病院らしき部屋の中,スタッフがうごめいている.
やがて医師が現れ自己紹介した上で,主人公に重大なことを告げる.主人公ジャン=ドミニクは重篤な脳梗塞で“ロックト・イン・シンドローム(閉じ込め症候群)”になってしまったというのである.3
彼の自由になるのは左目のみ,動かない右目は水晶体が乾いてしまうので,まぶたを縫いつけられてしまう.
パニックから落ち着くと,言語療法士アンリエットが左目の瞬きを用いたコミュニケーション法を彼に教えてくれる.
使用頻度順に読み上げられるアルファベットを用い,ジャン=ドミニクは言葉を,文章を表現できるようになる.
やがて記憶も蘇り,妻と3人の子供達の看病を受けながら,彼は自分の伝記を書こうと決意する….
この映画はいわゆる難病ものとはいささか趣を異にする映画だ.また「海を飛ぶ夢」とも似て非なる映画である.
主人公は全身麻痺だが意識は鮮明,重病人だが精神は健康,今は左目しか動かないがELLEの編集長として大金を稼ぎ愛人もいた身の上だ.
今は家族が回りで看病してくれるが,病床には愛人からの電話もかかってくる.何より主人公はこの不自由な体で人生に前向きであり,人生を楽しんでさえいるかのようだ.4
主人公の目線を忠実に再現し,更にその明るい気構えを表現し得ているカメラと映像に,敬意を表したい.主人公とその老齢の父親,主人公と彼の脳梗塞発症時に居合わせた未だ幼い息子との,いくつかのシーンが,心に残った.
★★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (1) | トラックバック (7)

2008/07/09

独断的映画感想文:インベージョン

日記:2008年7月某日
映画「インベージョン」を見る.Invasion2
2007年.監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル.
出演:ニコール・キッドマン(キャロル・ベネル),ダニエル・クレイグ(ベン・ドリスコル),ジェレミー・ノーサム(タッカー・カウフマン),ジャクソン・ボンド(オリバー),ジェフリー・ライト(Dr.スティーヴン・ガレアーノ),ヴェロニカ・カートライト(ウェンディ・レンク),ジョセフ・ソマー(Dr.ヘンリク・ベリチェク),セリア・ウェストン(リュドミラ・ベリチェク),ロジャー・リース(ヨリシュ),エリック・ベンジャミン(ジーン).
大気圏突入後爆発を起こしてスペース・シャトルが四散した.地上に散乱したその破片には謎の生命体が付着しており,やがて全人類を謎の感染症が襲う.
感染者は何ものかにコントロールされ無表情のまま街を歩く.
離婚し一人息子オリバーと共に暮らす精神科医キャロルに元夫タッカーから電話があり,息子と会いたいと言ってくる.不本意ながら息子を彼の許に泊まらせたキャロルは,友人の医師ベンとパーティーに行くが,街には無表情な人々があふれ,ようやくその異常な事態に気がつくのだった.Invasion3
オリバーを取り戻しにタッカーの家に行ったキャロルは,タッカーからウィルスを伝染されてしまう.感染者は眠ると発症してしまうのだ.
一方このウィルスへの免疫をオリバーが持っていることが分かり,キャロルはオリバーの行方を必死で捜索する….
原作は初期SFの傑作,ジャック・フィニイの「盗まれた街」.
ゾンビの様な感染者の群れに狩りたてられながらオリバーを探すキャロルというサスペンス展開が中心となる.
一方,感染者は互いに争わないので,世界中は戦争がなくなり平和がもたらされるというニュース画面も描かれ,パーティーでも議論好きなロシア人がアメリカの好戦性を批判するという一幕もあるが,このあたりは付け足し程度.Invasion1
映画は,ニコール・キッドマンの魅力はあるものの,火曜サスペンス劇場という感じをぬぐえず,感動的というところまでは行かない.
007ダニエル・クレイグも印象は薄い.
★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (3)

2008/07/07

独断的映画感想文:ブレイブワン

日記:2008年7月某日
映画「ブレイブワン」を見る.Braveone1
2007年.監督:ニール・ジョーダン.
出演:ジョディ・フォスター(エリカ・ベイン), テレンス・ハワード(ショーン・マーサー刑事),ナヴィーン・アンドリュース(デイビッド・キルマーニ),メアリー・スティーンバージェン(キャロル),ニッキー・カット(ビタール刑事),ジェーン・アダムス(ニコール).
エリカ・ベインはN.Y.でラジオのパーソナリティを務める.恋人デイビッドとの挙式も近く幸せな日々を過ごしていた.
ある夜,犬の散歩に出かけた2人は暴漢に襲われ,叩きのめされ金品を奪われる.重傷を負い3週間の昏睡から目覚めたエリカは,デイビッドの死を告げられた.
退院しアパートに戻った彼女だが,心の傷は深く,足がすくみ街中に出ることが恐ろしい.警察に行ってその後の経過を訪ねても,待合室で待たされるだけ.彼女は恐怖心から,即座に手に入る非合法の銃を購入する.
その後偶然入ったコンビニでエリカは射殺事件を目撃,口封じに銃をかざして迫る犯人に彼女は夢中で発砲する.犯人は息絶え,エリカは監視カメラのビデオを抜き取って店を後にする….Braveone3
このように始まる「処刑人」の物語.
最後に自分たちを襲った犯人にたどり着くまで,彼女は幾人もの犯罪者を「処刑」することになる.
最初の発砲事件でビデオテープを抜き取ったことからも明らかな様に,彼女は自分の行為の違法性を百も承知している.しかしその一方で,犯罪者を殺したいという押さえきれない自分がいる.
その葛藤と苦悩を演じるジョディ・フォスターは,うまい.肩を落としうつむいて歩く小柄な彼女は,まるで「ロード・オブ・ザ・リング」のイライジャ・ウッドの様に見えた.Braveone2
ところで,この映画のオチはもう一つ納得がいかない.数あるオチのなかでも最悪のものではないだろうか.
エリカは明らかにモンスターになりかけていたのだ.それを本人も自覚してあの葛藤があったのだろう.それに対してこのオチはいささかバランスを失してはいないだろうか.
まあアメリカだから仕方がないと言ってしまえばそれまでだが.
★★★(★5個が満点)

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (1)

2008/07/03

独断的映画感想文:GONIN

日記:2008年7月某日
映画「GONIN」を見る.Gonin1
1995年.監督:石井隆.
出演:本木雅弘(三屋純),ビートたけし(京谷一郎),佐藤浩市(万代樹木彦),竹中直人(萩原昌平),根津甚八(米頭要),椎名桔平(ジミー),永島敏行(大越康正),鶴見辰吾(久松茂),木村一八(柴田一馬),室田日出男(式根),横山めぐみ(ナミィ),永島暎子(早紀),川上麻衣子(「ピンキー」のホステス),岩松了(バッティング・センターのトイレの男).
ネタバレあります,注意!!
冒頭,佐藤浩市の見る悪夢.
本木が女と踊りまくるディスコのシーン,続いて雨の路地で男を暴行する本木,佐藤が近づくと飛び出しナイフを片手に振り返るその顔は,ルージュを塗ったゲイの顔だ.Gonin2
夢から覚め出かける佐藤,バッティングセンターでトラブルとなり殴り倒した男竹中を自分の経営するディスコに案内すると,店には借金の取り立てにやくざが来ている.彼のディスコはやくざに借金を抑えられ,のっぴきならない状況になっているのだ.
店には本木が来ていた.竹中と本木がやくざとトラブルとなり,佐藤は本木を自宅に連れて帰る.Gonin3
佐藤には計画があった.佐藤をしゃぶりにかかっているヤクザの金庫をその集金日を狙って襲い,現金を強奪するのだ.
ある日ぼったくりバーで用心棒に叩きのめされた佐藤は,その用心棒がかって彼の店に踏み込んできた刑事であることを知る.Gonin4
その刑事根津と竹中,本木,それにヤクザのちんぴらでパンチドランカーの椎名を抱き込み,5人はある夜ヤクザの事務所を襲う.襲撃はまんまと成功し,現金を手にした5人はそれぞれの道をたどるが,ヤクザは二人の殺し屋,北野と木村を雇い,椎名とその恋人を拉致して口を割らせ,残る4人を狩りたてにかかる….
登場人物のほとんどが死んでしまう徹底したヴァイオレンス・アクション.しかしキャスティングが良く,一人一人の人物に魅力がある.Gonin5
カメラワークも実に素晴らしく,佐藤と本木が二人白いスーツ姿で祝杯を挙げるシーンの美しさ,佐藤を殺された本木が雨中ヤクザの事務所を襲撃するシーンの望遠ショット等,絵になるシーンの連続に心が奪われる.
俳優達のアクションも素敵.椎名が4人のヤクザを一瞬で殴り倒す目にも止まらぬ動き,根津が背後から襲撃され車のボンネットを転がって反対側に落ち,次の瞬間茂みに身を躍らせて姿を消すその身のこなし等,目を奪われる.Gonin6
リストラされてぶち切れた男と見える竹中の,身の毛もよだつサイドストーリーも印象的.
最も魅力的なのはやはり本木雅弘だろう.冒頭の息をのむほど美しいゲイの姿,その後佐藤とつるんで動くときのやんちゃぶり,佐藤を失い単身ヤクザを襲うときの冷たい横顔,そして映画の最後で佐藤の遺骨を抱き,白いシャツに折り目正しいスーツ姿で北野を迎えるときの少年の様な美しさ.Gonin8
この監督と俳優達の代表的アクション映画として,一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (1)

« 2008年6月 | トップページ | 2008年8月 »