独断的映画感想文:ぐるりのこと。
日記:2008年7月某日
映画「ぐるりのこと。」を見る.
2008年.監督:橋口亮輔.
出演:木村多江(佐藤翔子),リリー・フランキー(佐藤カナオ),倍賞美津子(吉田波子),寺島進(吉田勝利),安藤玉恵(吉田雅子),八嶋智人(諸井康文),寺田農(吉田栄一),柄本明(安田邦正),木村祐一(夏目先輩),斎藤洋介(橋本浩二),温水洋一(和久井寛人),峯村リエ(生方圭子),山中崇(小久保健二),加瀬亮(田中ツヨシ),光石研(幼女誘拐殺人事件の弁護士),田辺誠一(売春事件の裁判長),横山めぐみ(資産家の母親),片岡礼子(小山悦子),新井浩文(大間真治).
佐藤翔子は小さな出版社に勤めるばりばりの編集員.佐藤カナオは日本画家を目指すが今は靴屋のバイトをしている.
二人は結婚式も挙げていないが,翔子は子供をみごもっている.
カナオは先輩から紹介され法廷画家の仕事をするようになり,記者の安田等に教えられながら何とか仕事に慣れていった.しかし生まれたばかりの子供を失う悲劇に襲われ,翔子は次第に心を病んでいく.
カナオはその翔子を支えながら法廷画を描き続けるのだった….
画面が切り替わるときに日付が出て,この映画は1993年7月から2001年7月までのことと判っている.映画はその間の翔子とカナオの夫婦の死と再生の物語である.
几帳面な性格の翔子は,「やる」日もカレンダー上に予め記入し,カナオの帰りが遅くなってけんかになった日も予定通り「まずやろう」と言ってカナオを呆れさせる.対抗上カナオは「じゃあ口紅を塗ってくれ」と迫る…というくだりはやたら可笑しい.
しかしその几帳面さが子供の死という悲劇後彼女を追い詰める.
木村多江とリリー・フランキーというキャスティングは最高である.特にカナオはまるでリリー・フランキーのために書かれたような役だ.佐藤カナオの,優柔不断に見えて一本芯の通っている役柄は,九州もんのリリーであればこそ納得のできる表現となったと思う.
嵐の夜の翔子とカナオの息詰まるやりとりは,この映画の最高の見せ場であり,見応えあり.
一方この映画は,カナオが法廷画家であることから,社会的に大きな影響を与えた犯罪事件を次々に見せていく.
思えば何と薄気味の悪い事件がこの8年間に起こっていることだろう.しかもそれらは未だ予兆に過ぎないのではないか.
2001年の9月には「米国同時多発テロ事件」が起きている.そしてそれは米国が主導し,我が国の連立政権が無条件に支持した「テロとの戦い」という今に至る諸戦争の始まりだ.
この映画には「この戦争が始まる前の一市民の生活」という緊張感を見て取ることもできよう.
★★★★(★5個が満点)
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コメント
ほんやら堂さん、こんにちは^^
TB、ありがとうございましたm(__)m
内容からして、このキャスティングはベストマッチだと僕も思いました^^ 特にリリ-さんを最後まで口説いてた監督の手腕だと思います。 というよりは相変わらずオファーからギリギリまでリリーさんの出演OKの返事が来なくて催促したそうですから、実物も優柔不断、映画のカナオも優柔不断(笑)、まんまでした(笑)
投稿: cyaz | 2008/07/24 08:11