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2008/07/23

独断的映画感想文:ぐるりのこと。

日記:2008年7月某日
映画「ぐるりのこと。」を見る.3
2008年.監督:橋口亮輔.
出演:木村多江(佐藤翔子),リリー・フランキー(佐藤カナオ),倍賞美津子(吉田波子),寺島進(吉田勝利),安藤玉恵(吉田雅子),八嶋智人(諸井康文),寺田農(吉田栄一),柄本明(安田邦正),木村祐一(夏目先輩),斎藤洋介(橋本浩二),温水洋一(和久井寛人),峯村リエ(生方圭子),山中崇(小久保健二),加瀬亮(田中ツヨシ),光石研(幼女誘拐殺人事件の弁護士),田辺誠一(売春事件の裁判長),横山めぐみ(資産家の母親),片岡礼子(小山悦子),新井浩文(大間真治).
佐藤翔子は小さな出版社に勤めるばりばりの編集員.佐藤カナオは日本画家を目指すが今は靴屋のバイトをしている.2
二人は結婚式も挙げていないが,翔子は子供をみごもっている.
カナオは先輩から紹介され法廷画家の仕事をするようになり,記者の安田等に教えられながら何とか仕事に慣れていった.しかし生まれたばかりの子供を失う悲劇に襲われ,翔子は次第に心を病んでいく.
カナオはその翔子を支えながら法廷画を描き続けるのだった….
画面が切り替わるときに日付が出て,この映画は1993年7月から2001年7月までのことと判っている.映画はその間の翔子とカナオの夫婦の死と再生の物語である.
几帳面な性格の翔子は,「やる」日もカレンダー上に予め記入し,カナオの帰りが遅くなってけんかになった日も予定通り「まずやろう」と言ってカナオを呆れさせる.対抗上カナオは「じゃあ口紅を塗ってくれ」と迫る…というくだりはやたら可笑しい.
しかしその几帳面さが子供の死という悲劇後彼女を追い詰める.
木村多江とリリー・フランキーというキャスティングは最高である.特にカナオはまるでリリー・フランキーのために書かれたような役だ.佐藤カナオの,優柔不断に見えて一本芯の通っている役柄は,九州もんのリリーであればこそ納得のできる表現となったと思う.1
嵐の夜の翔子とカナオの息詰まるやりとりは,この映画の最高の見せ場であり,見応えあり.
一方この映画は,カナオが法廷画家であることから,社会的に大きな影響を与えた犯罪事件を次々に見せていく.
思えば何と薄気味の悪い事件がこの8年間に起こっていることだろう.しかもそれらは未だ予兆に過ぎないのではないか.
2001年の9月には「米国同時多発テロ事件」が起きている.そしてそれは米国が主導し,我が国の連立政権が無条件に支持した「テロとの戦い」という今に至る諸戦争の始まりだ.5
この映画には「この戦争が始まる前の一市民の生活」という緊張感を見て取ることもできよう.
★★★★(★5個が満点)
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コメント

ほんやら堂さん、こんにちは^^
TB、ありがとうございましたm(__)m
内容からして、このキャスティングはベストマッチだと僕も思いました^^ 特にリリ-さんを最後まで口説いてた監督の手腕だと思います。 というよりは相変わらずオファーからギリギリまでリリーさんの出演OKの返事が来なくて催促したそうですから、実物も優柔不断、映画のカナオも優柔不断(笑)、まんまでした(笑)

投稿: cyaz | 2008/07/24 08:11

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» 「ぐるりのこと。」 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「ぐるりのこと。」□監督・原作・脚本・編集 橋口亮輔 □キャスト 木村多江、リリー・フランキー、倍賞美津子、寺島進、安藤玉恵、八嶋智人、寺田農、柄本明■鑑賞日 6月21日(土)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆は0.5)<感想> 夫婦のことは夫婦にしかわからない。 傍から見ていてどんな仲の良い夫婦でも、実際に本当に仲が良いどうかなんて他人が何で図れるものだろうか。 夫婦の姿が見えているかと言うと決してそうではない。 橋口監督はその見えない部分の夫婦... [続きを読む]

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