独断的映画感想文:パンズ・ラビリンス
日記:2008年7月20日(日
映画「パンズ・ラビリンス」を見る.
2006年.監督:ギレルモ・デル・トロ.
出演:イバナ・バケロ(オフェリア),セルジ・ロペス(ビダル),マリベル・ベルドゥ(メルセデス),ダグ・ジョーンズ(パン/ペイルマン),アリアドナ・ヒル(カルメン),アレックス・アングロ(フェレイロ医師),ロジェール・カサマジョール(ペドロ).
冒頭,血塗れで倒れている少女オフェリアの映像,その出血が逆回転で消えていくと地底の王国の王女モアナの伝説が紹介される.
画面は切り替わり,荒涼としたスペインの地方をゆく車列,少女オフェリアと母カルメンが乗っている.
仕立屋の夫を亡くしたカルメンは,その後つきあったファシストの大尉ビダルの子を宿し,今大尉の元に向かう途上である.
やがて大尉の拠点に着いたオフェリアは,近くにある不思議な迷宮に迷い込み,妖精の導くままパンと出会う.パンは彼女を女王モアナの生まれ変わりではと呼び,彼女に3つの試練を与えると言う.
内戦後間もないスペインのファシスト軍とゲリラの緊張下,まもなく出産を迎える母に付き添いながら,オフェリアは3つの試練を受けようとするのだった….
この映画はファンタジーではあるが子供映画ではない.実に苦い味の大人向けダークファンタジーだ.
ヨーロッパにはこのような苦い味のファンタジーの伝統があるようで,僕が思い出すのはヴィーヘルト作の岩波少年文庫収載の童話集「くろんぼのペーター」である.
この,先の大戦後まもなく書かれた本は,題名の差別性の故か内容があまりに暗く苦いものだったためか絶版となり,今では手にすることはできない.この童話集の中の一編「母の心」に,森のフクロウに主人公の少年が与えられる3つの試練というのがあるが,これも辛く悲しい旅路である.
この映画も結末はハッピーエンドではあるが,まことに苦く暗い味の映画で,エンタテインメントとは言い難い.主人公オフェリアの子供らしい勇気が最後に勝利を収めるが,現実の世界は苦いままに映画は終了する.
監督はこの映画で我々に何かを警告しようとしているのだろうか?
★★★☆(★5個が満点)
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コメント
TBありがとう。
「くろんぼのペーター」ですか。
僕は読んでいませんが、こういうのも、絶版になるんですかね。つまらない、自主規制です。
投稿: kimion20002000 | 2008/07/24 21:21