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2008年8月に作成された記事

2008/08/27

独断的映画感想文:腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

日記:2008年8月某日
映画「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」を見る.4
2007年.監督:吉田大八.
出演:佐藤江梨子(和合澄伽),佐津川愛美(和合清深),永作博美(和合待子),永瀬正敏(和合宍道),山本浩司(萩原),土佐信道(小森哲生(明和電機)),上田耕一(和合曾太郎),谷川昭一朗(神野),吉本菜穂子(審査員),湯澤幸一郎(審査員),ノゾエ征爾(オーディションの相手役),米村亮太朗(田嶋).
冒頭,トラックが暴走し道端に突っ込む.タイヤの跡に長い血痕,少女が呆然と立ちすくむ.
轢かれたのは少女和合清深の両親,その葬式に姉の「女優」和合澄伽が戻ってくる.家には他に父親の後妻の連れ子だった宍道が妻の待子と暮らしている.
澄伽は演技力ゼロの超勘違い傲慢女.自分が売れないのはすべて人のせい,特に妹清深のせいだとして妹をいじめ抜く.
清深は4年前の14歳の時,女優になるため東京に出たいと言って姉が暴れ,包丁を振り回して兄の額を傷つけ,上京資金を得るため自宅で体を売っていた顛末をすべて漫画に書いて投稿し,見事ホラー系雑誌の新人賞に輝いたことがある.家族は崩壊し,澄伽は自分が「演技」に集中できなくなったのはその事件のせいだと未だに清美を許さない.3
澄伽と宍道には血縁関係はないが肉体関係がある.そのため宍道は澄伽に頭が上がらない.
妻の待子は東京都港区のコインロッカー出身の孤児,施設で育ち30歳で結婚紹介誌で宍道と知り合い結婚したが,未だに肉体関係はない.
清深は天性の観察者,今は漫画を封印しているが,時に我慢できなくなって両親の死亡状況や姉の現状を描き始めると止まらない.
この4人の「家族」の行く末を描くブラックコメディ.2
何と言っても4人(というより女性3人ですね.永瀬君は刺身のつま)の個性が凄くそれを演じる女優が凄い.
サトエリは素のままなんだか演技なんだか定かではないし,永作の怪演は筆舌に尽くし難し.いたいけな佐津川愛美も実はこの子が一番したたかなのである.彼らのやりとりは一見の価値あり.
他に相変わらず脱力系の名優山本浩治が快調.
しかし何故この姉妹は二人ともペンネーム・芸名を名乗らなかったのか.和合という皮肉な名前がそれほど捨てがたいか.5
和合:やわらぎあうこと,仲よくすること(広辞苑).
★★★★(★5個が満点)
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2008/08/22

独断的映画感想文:ONCE ダブリンの街角で

日記:2008年8月某日
映画「ONCE ダブリンの街角で」を見る.Once6
2006年.監督:ジョン・カーニー.
出演: グレン・ハンサード(男),マルケタ・イルグロヴァ(女),ヒュー・ウォルシュ(ティミー ドラマー),ゲリー・ヘンドリック(リード ギタリスト),アラスター・フォーリー(ベーシスト),ゲオフ・ミノゲ(エイモン),ビル・ホドネット(男の父親),ダヌシュ・クトレストヴァ(女の母親),ダレン・ヒーリー(ヘロイン中毒者),マル・ワイト(ビル),マルチェラ・プランケット(昔の彼女),ニーアル・クリアリー(ボブ).
ダブリンの街角でギターをかき鳴らし歌っている男.
その前にはギターケースが置いてある.彼はそこそこの収入を歌で得ているらしい.Once2
やがて夜になりまだ歌っている男,その歌はなかなかに素晴らしいが,ギターはぼろぼろである.聴衆は少女のような女が一人,言葉を交わすうち男の家業が掃除機の修理だと知った彼女は,壊れている掃除機の修理を依頼して別れた.
翌日,街角で歌っている男の前に掃除機をがらがらと牽いて現れた女,二人は昼食を共にする.
彼女はチェコからの移民で,ピアノを弾き歌も作る.二人は彼女がピアノを弾かせてもらっている楽器店に行って,即興のセッションで意気投合する.Once1
その日女は掃除機を直してもらい,翌日また会った二人は彼女の家に行く.何と彼女は2歳の娘を育てていた.男にはロンドンに別れた彼女がいて,女には国に夫がいることも分かる.
やがて男はロンドンに行くことを決意,プロモーションCDを彼女と作るためにスタディオを借りる….
アイルランドのバンド「ザ・フレイムス」のヴォーカル,グレン・ハンサードとチェコのシンガー・ソングライター,マルケタ・イルグロヴァがその楽曲を歌い主演する音楽映画.Once4
この二人は実際に共同でアルバムも作っている同士だ.監督も元「ザ・フレイムス」のベーシストだったジョン・カーニー.こういうメンバーで作られたこの映画はとにかく音楽が素晴らしい.
最初の楽器店でのセッションで二人が即興でハーモニーを奏で出す瞬間の鳥肌が立つような興奮,パブで皆が楽器を持ち寄り歌が次々に広がっていくシーンの心地よさ,そしてスタディオ録音でストリートミュージシャンを加えたバンドの演奏する5拍子の曲の劇的に盛り上がっていくスリル.
映画はオペレッタのように次から次へと彼らの楽曲を繰り出していって飽きることがない.誠にアイルランドは音楽の国だ.Once3
そしてその音楽を囲む人たちの優しさも印象的である.日がな掃除機を修理し続けるやもめの父親は,男がロンドンに持って行くテープを聴いて「おまえを誇りに思う」と言ってくれるのだ.
映画の最後では男と女はそれぞれの道を歩むのだが,音楽の交流が二人に与えた喜びは何ものにも代え難い.
一見の価値ある映画.Once5
★★★★☆(★5個が満点)
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2008/08/19

独断的映画感想文:レンブラントの夜警

日記:2008年8月某日
映画「レンブラントの夜警」を見る.1_3
2007年.監督:ピーター・グリーナウェイ.
出演:マーティン・フリーマン(レンブラント・ファン・レイン),エミリー・ホームズ(ヘンドリッケ),マイケル・テイゲン(カレル・ファブリティウス),エヴァ・バーシッスル(サスキア), ジョディ・メイ(ヘールチェ),トビー・ジョーンズ(ヘラルド・ダウ),ナタリー・プレス(マリッケ).
17世紀のオランダ,スペイン・ポルトガルに代わり世界の貿易を英国と共に制しはじめたこの国は,内乱の続く英国に比べ安定した繁栄を享受していた.
その国の肖像画の第一人者であるレンブラントは,妻サスキアの経営手腕もあって富と名声を欲しいままにしていた.4
折しも地元アムステルダムの市警団から,集団肖像画の制作依頼が舞い込む.レンブラント自身は乗り気ではなかったが,サスキアの勧めもありこの仕事を引き受けることにした.レンブラントは肖像画に加わる人物の背景を取材していくが,それは思いの外の陰謀と腐敗に満ちたものだった….
レンブラントの傑作「夜警」の制作にまつわる逸話を,ミステリー仕立てに創作した監督のオリジナル作品.
映画は舞台仕立てになっていて,画面はレンブラント張りの光と闇の操作があり全体としては見辛い.登場人物は多くオランダ名の名前は覚えにくい.その上,引きの画面が多用されており,今しゃべっているのは誰かということが極めて分かり難い.2
このような様々なハードルのため,映画の前段はほとんど何のことか理解できなかった.僕は元来こういう会話主体の対話劇は苦手である.
後段になって問題点が絞り込まれてきてようやく全体の構成が理解できるようになるが,物語全体としては感動を呼ぶところまでは行かなかった.
それは映画が舞台劇的な様式を取りながら,その表現が様式美とまでは言えず,逆にダイナミックな映画表現を制約していることによるのかもしれない.3
「夜警」の絵に込められたミステリもそれほどのものとは思えず,この絵を境とするレンブラントの凋落もそれほどのものとは思えない.
総じて物語全体は平板で印象は希薄と言わざるを得なかった.
ただ,画面の隅々にまで衒学的・趣味的な拵えが施されているようで,その手が好きだという方には魅力ある映画となろう.7
★★★(★5個が満点)
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2008/08/17

独断的映画感想文:僕のピアノコンチェルト

日記:2008年8月某日
映画「僕のピアノコンチェルト」を見る.Pc1
2006年.監督:フレディ・ムーラー.
出演:テオ・ゲオルギュー(ヴィトス・フォン・ホルツェン(12歳)),ブルーノ・ガンツ(祖父),ジュリカ・ジェンキンス(ヘレン・フォン・ホルツェン),ウルス・ユッカー(レオ・フォン・ホルツェン),ファブリツィオ・ボルサニ(ヴィトス・フォン・ホルツェン(6歳)),エレニ・ハウプト,タマラ・スカルペリーニ.
映画の冒頭,鞄を提げた少年が飛行場に侵入.とある小型機に歩み寄るとドアの鍵を開け乗り込み,エンジンを始動.駆け寄る整備員の制止を振り切ると,飛行機は空に舞い上がる….
ヴィトス・フォン・ホルツェンは天才児,幼稚園児なのに辞典を読み,地球温暖化の恐ろしさを説いて友達の園児をびびらせている.Pc4
特にピアノの才能は素晴らしく,譜面を独力で読んで難しい曲もマスターしてしまう.ついに幼稚園は退園し,ベビーシッター・イザベルがやってくるがヴィトスは彼女に一目惚れしてしまうのだった….
12歳になったヴィトスは高校に通うが,授業は退屈で教員・同級生を馬鹿にするためトラブルが絶えない.母親ヘレンは彼をピアニストに大成させるためその自由をことごとく奪うため,ヴィトスは閉塞感に悩まされる.
ついにある日ヴィトスは,ベランダから幼い日に祖父と作った翼をまとって飛び降りてしまう.幸い怪我はなかったが,脳しんとうの昏睡から目覚めた彼はただの凡才になっていた….
この映画は楽しいファンタジーであり,かつ主人公のピアノの腕前を楽しむ音楽映画でもある.
とにかく6歳の子役ファブリツィオ君の可愛らしさ,12歳を演じるテオ君の本当のピアノの天才ぶりには,うっとりしてしまう.Pc5
この天才が人生を悩み,おじいちゃんや父親との交流で道を開いていく過程が印象的である.
特におじいちゃんは素敵で,子供の頃から空にあこがれたがチャンスに恵まれず,家具作りの木工職人として成功した人だ.
そのおじいちゃんが天才ヴィトスが株の操作で儲けた金で買ったものは本格的飛行訓練シミュレーター.これで祖父と孫は数百時間の飛行訓練を繰り返すのだ.
物語の進展は波瀾万丈で,ヴィトスが自分を解放していくくだりは(株のインサイダー取引っぽいやり方は必ずしも支持されるとは限らないが)なかなか面白い.Pc6
天才少年の物語が嫌みにならないのは,結局すべてのエネルギーがピアニストという大きな目標に収れんするからで,最後のフルオーケストラを従えてのコンサートはやはり感動的.
この後映画は冒頭のヴィトスの飛行シーンに戻り終局となる.見て損はなし.Pc2
★★★★(★5個が満点)
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2008/08/16

独断的映画感想文:ライラの冒険 黄金の羅針盤

日記:2008年8月某日
映画「ライラの冒険 黄金の羅針盤」を見る.Lyra001
2007年.監督:クリス・ワイツ.原作:フィリップ・プルマン.
出演:ニコール・キッドマン(コールター夫人),ダコタ・ブルー・リチャーズ(ライラ・ベラクア),サム・エリオット(リー・スコーズビー),エヴァ・グリーン(セラフィナ・ペカーラ),クリストファー・リー(第一評議員),トム・コートネイ(ファーダー・コーラム),デレク・ジャコビ(教権の密使),ベン・ウォーカー(ロジャー),サイモン・マクバーニー(フラ・パベル),ジム・カーター(ファー統領,クレア・ヒギンズ(マ・コスタ),ジャック・シェパード(学寮長),マグダ・ズバンスキー(家政婦ロンズデール), チャーリー・ロウ(ビリー・コスタ),ダニエル・クレイグ(アスリエル卿).Lyra002
我々の世界とはパラレルワールドになるある世界,ここでは人間は自分の魂をダイモンと呼ばれる様々な動物の形で同伴している.
その英国オックスフォード大学の学寮で暮らすライラは,男の子と駆け回って遊ぶお転婆娘だが,両親は幼い頃に亡くしている.
叔父のアスリエル卿は謎の粒子ダストの解明に北極に向かおうとするが,世界を支配しダストの存在自体を隠そうとする教権は,コールター婦人をライラに近づけ共に北極に向かおうとする.学寮長はやむなく,アスリエルから預かった「黄金の羅針盤」をライラに渡し,送り出すのだった.
「黄金の羅針盤」は3つのキーワードを指示し思いを凝らすとその問題の答えを与えてくれるが,それを扱えるのは特別な力を持つライラだけだ.コールター婦人は「黄金の羅針盤」を奪おうとするが,その手を逃れたライラは放浪の部族ジプシャンに救われる.Lyra010
折しもジプシャンを中心に子供が姿を消す事件が続発し,ライラは魔女セラフィナの協力も得てジプシャンと共に北極に向かうのだが….
世界観,登場人物とその関係等に説明時間が割かれ,いささか慌ただしいまま終わってしまうのは,3部作の第1巻としてはしょうがないのかしら.
キャラクター的にはシロクマ君が何といっても良かった.先行き,ライラとの女王と臣下としての緊密な関係がもっと出てきたら面白いかも知れない.Lyra022
魔女セラフィナも美しいけど,これってアスリエル卿と併せて「カジノ・ロワイヤル」コンビですね.Lyra011
後は子供を巻き込んだ氷上の戦闘シーンは画面が暗くって今ひとつだった.明るくすると魔女には都合が悪いかも知れないけど.
ライラは可愛くキャラクター的に先行きが楽しみ.この映画単独ではいまいちという感じです.
★★★(★5個で満点)
ちなみに公式HPによる診断では,僕のダイモンはネズミのAspasaでした.

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2008/08/13

独断的映画感想文:ノーカントリー

日記:2008年8月某日
映画「ノーカントリー」を見る.4
2007年.監督:ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン.
出演:トミー・リー・ジョーンズ(エド・トム・ベル保安官),ハビエル・バルデム(アントン・シガー),ジョシュ・ブローリン(ルウェリン・モス),ウディ・ハレルソン(カーソン・ウェルズ),ケリー・マクドナルド(カーラ・ジーン),ギャレット・ディラハント(ウェンデル),テス・ハーパー(ロレッタ・ベル),バリー・コービン(エリス),スティーヴン・ルート(ウェルズを雇う男),ロジャー・ボイス(エル・パソの保安官),ベス・グラント(カーラ・ジーンの母),アナ・リーダー(プールサイドの女).
冒頭,保安官補がボンベとエアガンを持った異相の男を逮捕する.その逮捕報告直後,保安官補は手錠のままの男に襲われ命を落とす.男アントン・シガーはパトカーを奪って姿を消した.
一方,ベトナム帰還兵のモスは,砂漠での狩猟中数台の車と多数の射殺死体を発見する.トラックの運転台には瀕死の男が未だ生きていて,水を欲しがっている.
車の荷台には大量の麻薬,近くの木陰に倒れていた男の傍らには200万ドルの現金の入った鞄.ヤクの取引がこじれて撃ち合いがあったらしい.モスはその200万ドルを持ち帰る.3
その夜モスは再び出かけ,瀕死の男に水を飲ませようと現場に舞い戻る.しかし男は射殺されていた.待ち伏せていた車がモスを急追し,モスは辛くも逃れるが乗っていった車は押さえられてしまった.
時間の問題で身元の割れることを知ったモスは,妻カーラ・ジーンを実家へ帰し,自分は鞄を持ってモーテルに隠れることにする.
砂漠での殺害事件を扱った地元の保安官ベルは,見知ったモスの車を発見し,モスを保護しようとその行方を捜し始める.金とヤクを巡る両グループは互いに相争いながらモスの行方を追求し,その中でシガーは死体の山を築きながら着実にモスを追い詰めていく….1
恐ろしい映画である.
映画は原作をかなり忠実に反映しているので,原作(コーマック・マッカーシー作「血と暴力の国」.原作と映画の原題は共に「NO COUNTRY FOR OLD MEN」)が恐ろしいのだが.
物語は当初サスペンスものかと思われるが,思いの他の展開を見せる.あたかも運命(その運命とはこの場合金とヤクだ)によって人々が死を迎え,その死の使いがアントン・シガーであるかのようだ.
そしてそれを見守り,物語を語っていくのが老保安官ベルであろうか.
原作の文体は極めて特徴的で(例えば会話体の表現に引用符を使わない),また作者は感情表現を行わず事実の描写だけで物語を書き進める.
その反映としてこの映画では,音楽は全編を通じ使われない.エンドタイトルの半ばになってようやく微かな音楽が流れるのみだ.
このように映画は強い緊張を維持して展開される.
不条理で理屈抜きの死をもたらす殺し屋シガーを演ずるハビエル・バルデムは圧倒的な存在感.つい先日見た「夜になるまえに」とは全く対照的な役を見事に演じている.2
現代の運命劇とはこういうものかも知れないと思わせる,希有な作品.
なお,シガーが使用するエアガンは,原作によれば牛のと殺用のものである.保安官がカーラ・ジーンに話す「チャーリーの件」にそのことが触れられている.また,原題はイェーツの詩から取られており,「老人に(住むべき)国はない」という意味らしい(原作解説による).
★★★★☆(★5個が満点)
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2008/08/08

独断的映画感想文:夜になるまえに

日記:2008年8月某日
映画「夜になるまえに」を見る.
2000年.監督:ジュリアン・シュナーベル(つい最近「潜水服は蝶の夢を見る」を見た).
出演:ハビエル・バルデム(レイナルド・アレナス),オリヴィエ・マルティネス,アンドレア・ディ・ステファノ,ジョニー・デップ,ショーン・ペン.1
冒頭森を幼児を抱えて歩く女(彼の母だ).次の画面ではその幼児が真っ裸でコーラの瓶をいじって遊んでいる.
彼が遊んでいるのは村の広場に四角形に掘られた穴の底だ(何とも象徴的なシーン).
キューバの作家レイナルド・アレナスの子供時代である.映画はこの作家レイナルドの一生を描く.
1943年生まれのレイナルドは詩を書く多感な少年へと成長する.祖父は詩作を許さなかったので彼は家を出,1959年,折しもバチスタ政権との対決に入っていた反乱軍に身を投じようとするが,革命は程なく成功する.
革命の熱気の中で成長した彼は作家を志し,図書館で働きながらチャンスを待つ.
少年時代から早熟な彼は自分が女性では満足できないことを知っていて,この頃長きにわたる恋人となるぺぺと付き合うようになる.ぺぺの世話で本格的に創作に没頭するようになった彼は,やがてコンクールで次点となり作家デビューを果たす.2
先輩作家レサマ・リマの指導で力をつけるが,その頃革命政権はゲイや反体制作家の取り締まりを強化,作家の転向が相次ぎ,レイナルド自身も些細な事件をきっかけに逮捕投獄され転向を迫られる….
この映画の魅力は数々あるが,最大のものは何といっても映像の魅力だろう.
冒頭のキューバの森の美しさ,またレイナルドが父親にあった場面から続く滝が奔流になり海の怒濤に連なる水の映像の素晴らしさ,しかもそれぞれのシーンが只美しいだけではなくいかにも象徴的であることが,映画の魅力を押し広げている.
俳優ではハビエル・バルデムの演技が素晴らしい.この人は本当に2004年に「海を飛ぶ夢」でラモンを演じた人と同一人物なのだろうか??若々しく自信に満ちたゲイの青年から亡命後,病のために面変わりした初老(?)の姿まで,その存在感は圧倒的だ.3
見応えのある映画.
映画の最後の場面はあのキューバの村の四角い穴の底,真っ裸の幼児が泣き叫んでいる….
★★★★(★5個が満点)

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2008/08/06

独断的映画感想文:カオス

日記:2008年7月某日
映画「カオス」を見る.3
2005年.監督:トニー・ジグリオ.
出演:ジェイソン・ステイサム(クエンティン・コナーズ),ウェズリー・スナイプス(ローレンツ),ライアン・フィリップ(シェーン・デッカー),ジャスティン・ワデル(テディー・ギャロウェー刑事),ヘンリー・ツェーニー(マーティン・ジェンキンス刑事),ニコラス・リー(ビンセント・デュラーノ刑事),ジェシカ・スティーン(カレン・クロス),ロブ・ラベル(銀行支配人),ジョン・カッシーニ(バーニー・カーロ).
冒頭,雨の夜のパール橋,大型トラックが立ち往生しているところに,猛スピードで走ってきた車が追突,中から白人の女を人質にした黒人男性が銃を構えて現れる.
追ってきたパトカーがこれを包囲し警官が見守る中,銃声が響く.この後は新聞記事のスクラップが流され,観客は銃の誤射により人質が死亡,犯人は射殺され警官一人が免職,一人が休職処分となったことを知る.
一方,シアトルのグローバル銀行が強盗団に襲われ,彼らは人質を取って立て籠もる.リーダーのローレンツはパール橋の事件で休職中のコナーズを交渉役に指名,警察はコナーズに若手刑事のデッカーをつけて現場に派遣する.4
しかし交渉は進まず,包囲したSWATが強行突入を図るが,現場は爆破され犯人グループは姿を消し,しかも金庫室からは何も盗まれていなかった.
おまけに身元のわかった犯人が次々と消されていき,また警察内部に共犯のいる可能性も出て事態は混沌としていく….1
ベテラン・コナーズと若手デッカーの体を張ったアクション映画かと思えば,デッカー対ローレンツの知恵の闘いという展開もあり,しかも最後のどんでん返しは全く別の様相を事件に与える.それなりに楽しめる映画である.
ただしコナーズとローレンツのそれぞれの最後は,今ひとつ詰めが甘い感じがしたのが残念.
しかしジェイソン.ステイサム,ウェズリー・スナイプスのご両人は期待通り,つい最近「白い嵐」で見たばかりのライアン・フィリップはなかなか魅力的である.その他,伊東美咲似のジャスティン・ワデルが色っぽい.2
映画としては楽しめます.
★★★☆(★5個が満点)
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