独断的映画感想文:ONCE ダブリンの街角で
日記:2008年8月某日
映画「ONCE ダブリンの街角で」を見る.
2006年.監督:ジョン・カーニー.
出演: グレン・ハンサード(男),マルケタ・イルグロヴァ(女),ヒュー・ウォルシュ(ティミー ドラマー),ゲリー・ヘンドリック(リード ギタリスト),アラスター・フォーリー(ベーシスト),ゲオフ・ミノゲ(エイモン),ビル・ホドネット(男の父親),ダヌシュ・クトレストヴァ(女の母親),ダレン・ヒーリー(ヘロイン中毒者),マル・ワイト(ビル),マルチェラ・プランケット(昔の彼女),ニーアル・クリアリー(ボブ).
ダブリンの街角でギターをかき鳴らし歌っている男.
その前にはギターケースが置いてある.彼はそこそこの収入を歌で得ているらしい.
やがて夜になりまだ歌っている男,その歌はなかなかに素晴らしいが,ギターはぼろぼろである.聴衆は少女のような女が一人,言葉を交わすうち男の家業が掃除機の修理だと知った彼女は,壊れている掃除機の修理を依頼して別れた.
翌日,街角で歌っている男の前に掃除機をがらがらと牽いて現れた女,二人は昼食を共にする.
彼女はチェコからの移民で,ピアノを弾き歌も作る.二人は彼女がピアノを弾かせてもらっている楽器店に行って,即興のセッションで意気投合する.
その日女は掃除機を直してもらい,翌日また会った二人は彼女の家に行く.何と彼女は2歳の娘を育てていた.男にはロンドンに別れた彼女がいて,女には国に夫がいることも分かる.
やがて男はロンドンに行くことを決意,プロモーションCDを彼女と作るためにスタディオを借りる….
アイルランドのバンド「ザ・フレイムス」のヴォーカル,グレン・ハンサードとチェコのシンガー・ソングライター,マルケタ・イルグロヴァがその楽曲を歌い主演する音楽映画.
この二人は実際に共同でアルバムも作っている同士だ.監督も元「ザ・フレイムス」のベーシストだったジョン・カーニー.こういうメンバーで作られたこの映画はとにかく音楽が素晴らしい.
最初の楽器店でのセッションで二人が即興でハーモニーを奏で出す瞬間の鳥肌が立つような興奮,パブで皆が楽器を持ち寄り歌が次々に広がっていくシーンの心地よさ,そしてスタディオ録音でストリートミュージシャンを加えたバンドの演奏する5拍子の曲の劇的に盛り上がっていくスリル.
映画はオペレッタのように次から次へと彼らの楽曲を繰り出していって飽きることがない.誠にアイルランドは音楽の国だ.
そしてその音楽を囲む人たちの優しさも印象的である.日がな掃除機を修理し続けるやもめの父親は,男がロンドンに持って行くテープを聴いて「おまえを誇りに思う」と言ってくれるのだ.
映画の最後では男と女はそれぞれの道を歩むのだが,音楽の交流が二人に与えた喜びは何ものにも代え難い.
一見の価値ある映画.
★★★★☆(★5個が満点)
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コメント
TBありがとうございます。
音楽の持つ力強さ、楽しさ、包み込む優しさを感じさせてくれる映画でした。ミュージシャンが主人公なので音楽とストーリーが無理なく結びついています。そしてあのあっさりとした別れ。それでいて淡白ではなく余韻が残る。素晴らしい映画でした。
投稿: ゴブリン | 2008/08/28 00:01
この映画、音楽に対する洞察は、本当に良かったですよね。
投稿: chuchu | 2008/09/08 20:59