独断的映画感想文:レンブラントの夜警
日記:2008年8月某日
映画「レンブラントの夜警」を見る.
2007年.監督:ピーター・グリーナウェイ.
出演:マーティン・フリーマン(レンブラント・ファン・レイン),エミリー・ホームズ(ヘンドリッケ),マイケル・テイゲン(カレル・ファブリティウス),エヴァ・バーシッスル(サスキア), ジョディ・メイ(ヘールチェ),トビー・ジョーンズ(ヘラルド・ダウ),ナタリー・プレス(マリッケ).
17世紀のオランダ,スペイン・ポルトガルに代わり世界の貿易を英国と共に制しはじめたこの国は,内乱の続く英国に比べ安定した繁栄を享受していた.
その国の肖像画の第一人者であるレンブラントは,妻サスキアの経営手腕もあって富と名声を欲しいままにしていた.
折しも地元アムステルダムの市警団から,集団肖像画の制作依頼が舞い込む.レンブラント自身は乗り気ではなかったが,サスキアの勧めもありこの仕事を引き受けることにした.レンブラントは肖像画に加わる人物の背景を取材していくが,それは思いの外の陰謀と腐敗に満ちたものだった….
レンブラントの傑作「夜警」の制作にまつわる逸話を,ミステリー仕立てに創作した監督のオリジナル作品.
映画は舞台仕立てになっていて,画面はレンブラント張りの光と闇の操作があり全体としては見辛い.登場人物は多くオランダ名の名前は覚えにくい.その上,引きの画面が多用されており,今しゃべっているのは誰かということが極めて分かり難い.
このような様々なハードルのため,映画の前段はほとんど何のことか理解できなかった.僕は元来こういう会話主体の対話劇は苦手である.
後段になって問題点が絞り込まれてきてようやく全体の構成が理解できるようになるが,物語全体としては感動を呼ぶところまでは行かなかった.
それは映画が舞台劇的な様式を取りながら,その表現が様式美とまでは言えず,逆にダイナミックな映画表現を制約していることによるのかもしれない.
「夜警」の絵に込められたミステリもそれほどのものとは思えず,この絵を境とするレンブラントの凋落もそれほどのものとは思えない.
総じて物語全体は平板で印象は希薄と言わざるを得なかった.
ただ,画面の隅々にまで衒学的・趣味的な拵えが施されているようで,その手が好きだという方には魅力ある映画となろう.
★★★(★5個が満点)
人気ブログランキングへ
コメント