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2008年9月に作成された記事

2008/09/25

独断的映画感想文:延安の娘

日記:2008年9月某日
映画「延安の娘」を見る.1
2002年.監督:池谷薫.
ドキュメント映画である.
北京長辛店の趙国棟は,同級生王露成を訪ねる.文化大革命後,下放した王露成が延安で生ませた娘が見つかったのだ.
文化大革命は1966年に始まった中国共産党の党内闘争,主導権を握った毛沢東は青少年に「造反有理(謀反には理由がある)」を訴え,実権派の共産党幹部の打倒を指示した.青少年は紅衛兵となって幹部打倒の闘争に起ち,その興奮は1968年の天安門広場での百万人集会で頂点に達した….
その後紅衛兵は農民に学べと下放を指示され,全国の農村に向かうことになる.
長辛店第1中学の生徒たちは,中国共産党の抗日戦争・国共内戦の聖地延安に送られ,その地で厳しい農作業に従事することになった.5
下放青年は厳しく監視され,男女の交流は反革命と見なされ禁止.王露成は密かに恋人に生ませた娘を延安の養家に託し北京に帰ったが,恋人とは別れボイラー工場で勤め,貧しい生活を支えている.
趙国棟は早めに北京に帰り,まずまずの暮らしをしているようだ.延安で同じく恋愛事件を起こした黄玉嶺は,労働改造刑務所に送られ非人間的な扱いを受け,子供は堕胎された.王露成の娘・何海霞を見いだし趙国棟に連絡したのは黄玉嶺である.2
何海霞は父親王露成を激しく慕うが,婚家も養家も彼女が北京に行くことをなかなか認めない….
すでに40年前の出来事となった文化大革命を巡る悲劇を追った長編.
長辛店第1中学の紅衛兵たちは皆辛酸をなめ挫折した経験者だが,その後の人生はそれぞれに違う.4
安定した人生を送っている趙国棟に比べ,服役時に受けた屈辱を未だに引きずっている黄玉嶺や,貧しいままの生活が長い王露成.
また未だに延安で一人暮らす王雄驥は,テレビもない貧しい部屋の壁にピンナップ写真を貼っている老いた独身者だが,箱の仲にはマルクスや毛沢東の文献を大事に抱え,カメラに向かって共産主義者としての総括を語るのが,何ともむなしく哀れである.6_2
一瞬のきらめきと高揚の「革命闘争」を経て,その後たどった厳しい人生を,各自が未だに扱いかねている様子が痛々しい.
最後のシーン,延安の乾いた山畑を耕す何海霞の家族3人.3_2
中国の共産主義革命とは何だったのだろう.この広い荒れた大地を集団の力で征服し,皆が平等に豊かに暮らす筈ではなかったのか?あの文化大革命の時,毛沢東はそう言ったのではなかったか?
訴える力を持つ映画.音楽が素晴らしい.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:グーグーだって猫である

日記:2008年9月某日
映画「ぐーぐーだって猫である」を見る.Googoo5
2008年.監督:犬童一心.
出演:小泉今日子(小島麻子),上野樹里(ナオミ),加瀬亮(青白),大島美幸(麻子のアシスタント),村上知子(麻子のアシスタント),黒沢かずこ(麻子のアシスタント),林直次郎(マモル),伊阪達也(タツヤ),高部あい(京子),柳英里紗(エリカ),田中哲司(編集長・近藤),村上大樹(編集者・田中),でんでん(梶原),山本浩司(小林),楳図かずお(UMEZU氏),マーティ・フリードマン(ポール・ウェインバーグ),大後寿々花(人間のサバ),小林亜星(山本泰助),松原智恵子(麻子の母).
漫画家大島弓子の自身を描いたエッセイ漫画の映画化.
15年間飼い続けた猫「サバ」を失い茫然自失の漫画家小島麻子.めっきり執筆作品も減って,アシスタントや編集者が固唾を飲んでいる.
ある日勇気を振り絞ってペット店に入った麻子は,かわいい子猫と運命的な出会い.猫はぐーぐーと名付けられ麻子は元気を取り戻す.Googoo1_2
ぐーぐーはすくすくと育って思春期を迎え,麻子が避妊手術を受けさせようとした日に脱走して,雌の白猫を追いかけ回す.その挙げ句木に登って下りられなくなったぐーぐーを救った青白に,麻子は好意を覚えた….
吉祥寺を舞台に天才漫画家と彼女を取り巻く人々を描く,ほのぼの映画.
大島弓子のコアなファンにはいろいろ突っ込まれそうな部分があるらしいが,僕は「綿の国星」他数冊程度読んだだけの緩いファン,むしろ小泉今日子のファンとしてこの映画は心和むものがある.Googoo4
吉祥寺の街も,唐突に現れるUMEZU氏も,中央特快(アシスタント・ナオミの彼氏のバンド)の男たちも優しい.
ぐーぐーの挙動はむしろ「ホワッツマイケル」を想起させるが,いずれにしろ肩のこらない映画.
脇役でまたも脱力系の名優山本浩二が出演.上野樹里ちゃんは肩から力の抜けた好演で良かった.
疲れたときにぴったりの和み映画.Googoo3
★★★☆(★5個が満点)
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2008/09/22

独断的映画感想文:ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

日記:2008年9月某日
映画「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」を見る2007年.監督:ポール・トーマス・アンダーソン.
出演:ダニエル・デイ=ルイス (ダニエル・プレインビュー),ポール・ダノ(ポール・サンデー/イーライ・サンデー),ケヴィン・J・オコナー(ヘンリー),キアラン・ハインズ(フレッチャー),ディロン・フレイジャー(H.W.),バリー・デル・シャーマン,コリーン・フォイ,ポール・F・トンプキンス.8_3

荒れ果てた岩山に囲まれた小さな縦坑で,ツルハシと発破を頼りに一人で掘る男.やがて男は金を含んだ鉱石を掘り当てる.
数年後その縦坑からは石油が出始め,数人の部下と共に男は石油をくみ上げる.
その男ダニエル・プレインビューは,その後もいくつかの油井を掘り当て,独立系の石油元売りとして頭角を現しはじめる.いつも息子H.W.を連れ歩く彼は,地権者の信頼も得て,次第に安定した地位を獲得していく.7_3
ある日彼の元をポールという青年が訪れ,リトル・ボストンにある彼の父の牧場は石油が出る,という話を持ち込む.親子はその牧場を訪れ,ポールの双子の兄弟,イーライが主宰する「第3の啓示」教会に多額の寄付をすることを条件に,土地の買い取り契約を結ぶ.
ダニエルは周囲の土地をすべて買い占め,大規模に掘削を始めた.ある日石油が出るが,その突出の衝撃でH.W.は吹き飛ばされ,聴力と精神の安定を失う….3_21_2
ダニエル親子の30年間にわたる軌跡を描く,重厚なドラマ.
ダニエルは自ら,人間が嫌いで人への憎悪が積み重なっていくと告白している.石油を掘り当て成功するために,あらゆる手段を使い人を騙すこと裏切ることもためらわない.息子H.W.も実は,人の信頼を得て交渉を有利に進めるため,捨て子を拾って育てたのだ(と本人は言う).
その息子との確執,カルト系牧師として彼とたびたび関わるイーライとの争い,石油メジャーとの争闘等がドラマの軸となる.
ダニエルは恐るべき個性の人である.5_2
その憎悪は止めようもなく本人の中に積み上がっていったのであろうか.石油メジャーの圧力の中で事業を成功させること自体が,大きなストレスを彼に与えたであろう.また独自の個性で彼の前に立ちはだかり彼を翻弄したイーライに対する彼の憎悪も,想像するに難くはない.
しかし幼年から少年にいたるH.B.への愛情や,異母弟ヘンリーの日記を読むときの彼の表情には,また別の彼の側面が見て取れよう.
だからこそ最後の2つのシークエンスは衝撃的であり,打ちのめされる思いがするのだ.
ダニエル・デイ=ルイスの演技が素晴らしい.この長大な叙事詩を,ナレーションなしに描き切れたのも,彼の演技力あればこそであろう.2
冒頭でこの映画の性格を明示し切ったジョニー・グリーンウッドの音楽は秀逸.エンドタイトルでのブラームスのヴァイオリン協奏曲第3楽章も素晴らしかった.
158分の長尺だが,あっという間だ.一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)
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2008/09/15

独断的映画感想文:マイ・ブルーベリー・ナイツ

日記:2008年9月某日
映画「マイ・ブルーベリー・ナイツ」を見る.1
2007年.監督:ウォン・カーウァイ.
出演:ノラ・ジョーンズ(エリザベス),ジュード・ロウ(ジェレミー),デヴィッド・ストラザーン(アーニー),レイチェル・ワイズ(スー・リン),ナタリー・ポートマン(レスリー).
ニューヨークの小さなカフェレストラン,オーナーのジェレミーが店を閉めようとしたとき入ってきたエリザベス.彼女は恋人との破局を目前に,ジェレミーに恋人の部屋の鍵を預ける.
ジェレミーがその鍵を入れた瓶には,幾多の客の鍵が入っていて,その中にはジェレミー自身の元恋人の鍵もある.3
エリザベスは幾晩かその店に通いジェレミーとうち解けるが,やがて恋人に新しい彼女ができたことを知り,ニューヨークを離れる決心をする.
メンフィスの酒場で働くエリザベスは,常連客アーニーと別居中の妻スー・リンの悲劇を目の当たりにし,ラスベガスの賭博場ではギャンブラー・レスリーと知り合いになる.5_2
それぞれの街からジェレミーに葉書を出すエリザベス,やがて彼女はニューヨークに帰る決心をする….
ウォン・カーウァイ監督は「恋する惑星」以来,ノラ・ジョーンズの音楽は聴いたことがないという僕ですが,このロード・ムービーはなかなかに魅力的.
特にアーニーとスー・リンの物語が,俳優の好演もあって印象的である.6
全体の映像はこの監督の個性を反映したファッショナブルなもの.「パリ・テキサス」等の映画で,もっと乾ききった風景の中で馴染んでいたライ・クーダーの音楽が,この映画に意外に合っているのも吃驚.
ノラ・ジョーンズは初見だが,レイチェル・ワイズやナタリー・ポートマンとは勝負にならないのは無理からぬところ.でもジュード・ロウとの絡みでは健闘している.7
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:おくりびと

日記:2008年9月某日
映画「おくりびと」を見る.2
2008年.監督:滝田洋二郎.
出演:本木雅弘(小林大悟),広末涼子(小林美香),山崎努(佐々木生栄),余貴美子(上村百合子),吉行和子(山下ツヤ子),笹野高史(平田正吉), 杉本哲太,峰岸徹,山田辰夫,橘ユキコ.
チェロ奏者小林大悟は,楽団があっけなく解散してプロの演奏者の道を諦め,故郷山形の実家に戻る.
父親は大悟が6歳の頃出奔したまま,母親は2年前に急死した.新妻美香とともに実家の廃業したスナックに落ち着いた大悟.「旅のお手伝い」という広告を見て就職したのは,納棺師という死体を清めて納棺する仕事だった.
その仕事の実情を妻に言えないまま働き始めた大悟だが,経験と共に納棺師の仕事に自信と誇りを持つようになる.4
ところが妻は彼の仕事を知り,実家に帰ってしまった….
特異な世界を描いた映画だが,脚本がよく練られていて感動的な作品となった.
闘病でやつれ果てた遺体を生前の美しい姿に化粧して家族に感謝されるシークエンスや,大悟自身の父との葛藤を巡るいくつかのシークエンスは涙を誘うが,その合間に笑いを誘うエピソードが挟まれるその塩梅が絶妙で,130分とやや長尺ながら時のたつのを忘れてしまう.
俳優では本木雅弘が良い.
死者に対する誠意あふれる所作も好感が持てたし,穏やかな仕種のあいだに一瞬爆発する激情など,その演技は印象的.
山崎努は昔から大好きな俳優で,この映画でも期待通りの好演.その他余貴美子,笹野高史,吉行和子などベテランの好演に混じっての広末涼子は健闘ながらもいっぱいいっぱいの感じ.あと一つ表情があれば…という印象.5
久石譲の音楽も素晴らしい.劇中たびたび流れる穏やかなモチーフは死(と旅立ち)のテーマと思われるのだが,エンドロールで流れる音楽は,その死のテーマに続いて生のテーマが爆発的に展開されまた死のテーマに戻っていくという,この映画の構造を象徴的に示したものとなっている(エンドロールは最後まで見ましょう).
ロケ地の庄内平野の光景も素晴らしい.近年,藤沢周平原作の映画で目に馴染んだ庄内の美しい風景は,この映画の背景として誠に相応しく感じられる.
生と死,挫折と再生のドラマとして,暖かさと勇気を得られる映画.見て損はなし.
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2008/09/14

独断的映画感想文:パーフェクト・ストレンジャー

日記:2008年9月某日
映画「パーフェクト・ストレンジャー」を見る.1
2007年.監督:ジェームズ・フォーリー.
出演:ハル・ベリー(ロウィーナ),ブルース・ウィリス(ハリソン・ヒル),ジョヴァンニ・リビシ(マイルズ), ゲイリー・ドゥーダン(キャメロン),クレア・ルイス,リチャード・ポートナウ,ニッキー・エイコックス,フロレンシア・ロザーノ,ハイジ・クラム,ポーラ・ミランダ,タマラ・フェルドマン.
6ヶ月間かけて上院議員のスキャンダルを暴く記事をものにしたロウィーナだが,新聞社に圧力がかかり記事は没,彼女は憤然と記者を辞める.
その頃幼なじみの女性が死体で発見された.彼女は死の直前ロウィーナに会い,広告業界の大立て者ハリソン・ヒルといい仲になったと言っていた.
女好きのヒルは恐妻家,スキャンダルのにおいを感じ取ったロウィーナはその広告社に派遣として雇われ,内偵を始めるが….3
美貌のハル・ベリーと貫禄のブルース・ウィリスという取り合わせはそれなりに見応えがあったが,この映画は何とも期待を外すことにかけては一級品である.
ここからはネタバレになるけど,例えば最初の方で,まずい画面が出たままコンピュータがフリーズしたときヒルが近づいてくるので,机の下でハイヒールでコンセントを抜こうとじたばたする場面.なぜモニターの電源をちょいと切らないのか疑問である.
ヒルの部屋に忍び込んで彼のコンピュータにアクセスしようとしてあっさり見つかってしまう場面も,あまりに工夫が無くてあきれてしまう.
その後も同様の,腰砕けのサスペンスと言うべき展開.それでも最後まで引っ張られたのは,ラスト7分11秒になるととんでもない真相があるらしいというキャッチに騙されたからで,それがまたお粗末.2
マイルズという男は台所で向こうを向いている女性に向かって丸腰で脅しをかけるという,信じられない馬鹿で,その報いを受けることになるのだが,このシーンにも呆れ果てた.
思わせぶりな展開がことごとく裏切られる中途半端な映画として,記憶されるだろう.
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2008/09/09

独断的映画感想文:舞妓Haaaan!!!

日記:2008年9月某日
映画「舞妓Haaaan!!!」を見る.1
2007年.監督:水田伸生.
出演:阿部サダヲ(鬼塚公彦),堤真一(内藤貴一郎),柴咲コウ(大沢富士子(駒富士)),小出早織(駒子),京野ことみ(小梅),酒井若菜(豆福),キムラ緑子(良江),大倉孝二(大下),生瀬勝久(先崎部長),山田孝之(修学旅行生),Mr.オクレ(老社員),須賀健太(カメラ小僧),日村勇紀(カメラ小僧(バナナマン)),北村一輝(医師),植木等(斉藤老人(特別出演)),木場勝己(玄太),真矢みき(こまつ),吉行和子(さつき),伊東四朗(鈴木大海).
京都の町でカメラ片手に舞妓はんを追いかける鬼塚公彦.
彼は高校の修学旅行で班長のくせに迷子になり,舞妓はんに遭遇して救われて以来,熱烈な舞妓ファンになった.今は舞妓専門のホームページを立ち上げて,夢は舞妓との野球拳という熱の入れよう.
即席麺会社の仕事にはさっぱり身が入らない彼は,なんと京都に左遷され,本人は大得意で茶屋を訪れるが,一見さんお断りと追い返されてしまう.
一念発起した彼は新しい即席麺を開発し,見事社長のお供で茶屋遊びを許される.
一方彼に捨てられた東京の恋人富士子は,彼を追って京都に来た上,舞妓の置屋で駒富士と名乗って修行を始める.2
彼の茶屋通いは,プロ野球選手で茶屋の息子,内藤というライバルを得ていよいよ狂騒的なものになっていく….
むちゃくちゃはちゃめちゃなコメディ,漫画のような荒唐無稽さ,どんどんスピードアップしていくアホさ加減.
それをテンション上がりっぱなしの阿部サダヲが絶叫調で演じます.
もうこの映画はこの阿部サダヲ次第.彼が受け入れられれば面白いし,受け入れられなければ最初から見ない方が….3
でも柴咲コウは可愛いし,年下の先輩役駒子を演じた小出早織ちゃんも可愛い.
もう一つ,植木等さんが出た最後の映画らしい.手を振りながら去っていく後ろ姿に思わずうるっと来てしまった.
後に何も残らない馬鹿コメディ.
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2008/09/03

独断的映画感想文:「白い馬」「赤い風船」

日記:2008年8月某日
映画「白い馬」「赤い風船」を見る.
「白い馬」監督:アルベール・ラモリス.脚本:アルベール・ラモリス.撮影:エドモン・セシャン.音楽:モーリス・ルルー.出演:アラン・エムリイ,パスカル・ラモリス.
「赤い風船」監督: アルベール・ラモリス.脚本:アルベール・ラモリス.撮影:エドモン・セシャン.音楽: モーリス・ルルー.出演:パスカル・ラモリス.シュザンヌ・クルーティエ.
この監督の,「素晴らしい風船旅行」は子供の頃見たことありましたね.
銀座シネスイッチで,この50年代に同一監督で作られた傑作2短編を上映しているのを鑑賞.ネタバレあります!!
どちらも主人公は少年,副主人公は擬人化された馬あるいは風船である.1
「白い馬」は南フランスの沼沢地に住む少年と野生馬の話.馬買いが何度捕らえても逃げ出してしまう誇り高い野生馬のリーダーは,少年とも激しく戦った後友達になる.二人と馬買いを巡るその地の自然を背景とした物語.
一方「赤い風船」はパリを舞台とした風船と少年の友情物語.朝の通学路で出会った風船は少年にすっかりなつき,どこに行くにもついてくる.ところが下町の悪たれガキに捕まり,石を投げつけられて風船は大ピンチ….
両方とも詩情あふれるおとぎ話だが,その擬人化にみる文化の違いが印象に残った.
馬はあくまでも誇り高く,少年は幼いながらその誇りを共有している.日本の少年と馬では少し違った感じになるかもしれない.
途中馬にまたがることができた少年が,出てきた野ウサギを人馬一体となって追いかける.そのウサギはどうなったかというと,次のシーンでは少年に皮をはがれて丸焼きに.これも如何にも狩猟民族らしい.
赤い風船で主人公と彼の行く学校の生徒は皆長ズボン,悪たれガキは全員半ズボンというはっきりした描き分けも印象的.2
映画を見ていてこんなつまらないことばかり考えるのも年をとった証拠である.こういう如何にもフランス映画らしい詩情の映画はもっと若い頃に見ていれば良かった.
しかしどちらも映画として傑作なのは間違いない.撮影技術を含めてすばらしい映像である.
「白い馬」のラストシーン,少年を伴った馬が,白波の立つ荒海を沖へ沖へといつまでも泳ぎ続けていく長回しは,いったいどのように撮ったのだろう?そのまま少年と馬は別の地へ向かったのだというナレーションが,胸に染みてくるラストだった.
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