独断的映画感想文:延安の娘
日記:2008年9月某日
映画「延安の娘」を見る.
2002年.監督:池谷薫.
ドキュメント映画である.
北京長辛店の趙国棟は,同級生王露成を訪ねる.文化大革命後,下放した王露成が延安で生ませた娘が見つかったのだ.
文化大革命は1966年に始まった中国共産党の党内闘争,主導権を握った毛沢東は青少年に「造反有理(謀反には理由がある)」を訴え,実権派の共産党幹部の打倒を指示した.青少年は紅衛兵となって幹部打倒の闘争に起ち,その興奮は1968年の天安門広場での百万人集会で頂点に達した….
その後紅衛兵は農民に学べと下放を指示され,全国の農村に向かうことになる.
長辛店第1中学の生徒たちは,中国共産党の抗日戦争・国共内戦の聖地延安に送られ,その地で厳しい農作業に従事することになった.
下放青年は厳しく監視され,男女の交流は反革命と見なされ禁止.王露成は密かに恋人に生ませた娘を延安の養家に託し北京に帰ったが,恋人とは別れボイラー工場で勤め,貧しい生活を支えている.
趙国棟は早めに北京に帰り,まずまずの暮らしをしているようだ.延安で同じく恋愛事件を起こした黄玉嶺は,労働改造刑務所に送られ非人間的な扱いを受け,子供は堕胎された.王露成の娘・何海霞を見いだし趙国棟に連絡したのは黄玉嶺である.
何海霞は父親王露成を激しく慕うが,婚家も養家も彼女が北京に行くことをなかなか認めない….
すでに40年前の出来事となった文化大革命を巡る悲劇を追った長編.
長辛店第1中学の紅衛兵たちは皆辛酸をなめ挫折した経験者だが,その後の人生はそれぞれに違う.
安定した人生を送っている趙国棟に比べ,服役時に受けた屈辱を未だに引きずっている黄玉嶺や,貧しいままの生活が長い王露成.
また未だに延安で一人暮らす王雄驥は,テレビもない貧しい部屋の壁にピンナップ写真を貼っている老いた独身者だが,箱の仲にはマルクスや毛沢東の文献を大事に抱え,カメラに向かって共産主義者としての総括を語るのが,何ともむなしく哀れである.
一瞬のきらめきと高揚の「革命闘争」を経て,その後たどった厳しい人生を,各自が未だに扱いかねている様子が痛々しい.
最後のシーン,延安の乾いた山畑を耕す何海霞の家族3人.
中国の共産主義革命とは何だったのだろう.この広い荒れた大地を集団の力で征服し,皆が平等に豊かに暮らす筈ではなかったのか?あの文化大革命の時,毛沢東はそう言ったのではなかったか?
訴える力を持つ映画.音楽が素晴らしい.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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コメント
ほんやら堂さん TBありがとうございました。大変ご無沙汰しておりました。
この映画は本当に忘れがたい、力強い映画ですね。しかも日本人の監督が撮ったということに大きな意義があると思います。
それにしても外国からでもまるで日本にいるようにTBを送ったりコメントが書けたりするというのは本当に便利な時代になりましたね。
投稿: ゴブリン | 2008/09/26 07:51