独断的映画感想文:ガーダ パレスチナの詩
日記:2008年10月某日
映画「ガーダ パレスチナの詩」を見る.
監督:古居みずえ,製作:安岡卓治,野中章弘,撮影:古居みずえ.
パレスチナ・ガザ地区に住む女性:ガーダを描いたドキュメントフィルム.
ガーダは難民キャンプで生まれ育った.
教師になることが希望だったが,イスラエルの侵攻で大学進学を諦め,教員養成所を経て教職に就く.その後ナセルと婚約し,男性中心の因習に抗して新しい生き方を模索する.
子供ができてからは,自分たちの上の世代の生き方を聞き集めるジャーナリストとしての活動に力を注ぐ.その彼女の活動を,イスラエルへの抵抗運動インティファーダを交え描く.
ガーダは難民キャンプ生まれ(その難民キャンプさえ,映画の最後ではイスラエル軍に破壊される),パレスチナの父祖の地を知らない.その当時と同じ農民の生活をしているアブー・バーシム,ウンム・バーシム夫妻を取材してその日常を聞き取る.
夫妻は仲むつまじく,農作業をしながら歌を歌いお互いを労り合う.しかしその夫妻の畑もある日イスラエル軍に強奪され,夫妻は土地から追い出される.
インティファーダの中ではガーダの従兄弟の13歳の息子がイスラエル軍によって後から撃たれ射殺される.
こういう痛ましい現実を描きながら,一方でパレスチナの人々の因習やその生活も映画は細やかに描く.その視点は優しく暖かい.
パレスチナの人々の暮らしに唄と踊りが豊かなことはどうだろう.
もう耕す畑もないのに,歌を歌うときに真っ赤にさびた鎌を手に振りながら歌う老女の姿には,胸を打たれる.
映画の最後で,ガーダはすべてが闘い(struggle)なのだと言う.「歌うことも,子供を育てることも,インティファーダも,学ぶことも」.
35年ぶりに聞いた,struggleという言葉と共に,心にしみるメッセージだった.これらの事実を映像に書き留めた監督の手腕と努力に敬礼.
★★★★(★5個が満点)
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