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2008年11月に作成された記事

2008/11/27

独断的映画感想文:俺は、君のためにこそ死にに行く

日記:2008年11月某日
映画「俺は、君のためにこそ死にに行く」を見る.2
2007年.監督:新城卓.
出演:岸惠子(鳥濱トメ),徳重聡(中西正也少尉),窪塚洋介(板東勝次少尉),筒井道隆(田端絋一少尉),多部未華子(鳥濱礼子),前川泰之(金山少尉),中村友也(河合惣一軍曹),渡辺大(加藤伍長),木村昇(安部少尉),蓮ハルク(松本軍曹),宮下裕治(石倉伍長),田中伸一(荒木少尉),古畑勝隆(大島茂夫),中越典子(鶴田一枝),桜井幸子(板東寿子),戸田菜穂(田端良子),宮崎美子(河合の母),寺田農(板東真太).
舞台は知覧の鳥濱食堂,主人のトメさんは特攻の母として有名な方らしい.
その知覧の昭和18年の風景の後,フィリピンの海軍軍令部で特攻の命令が発動されるシーンが描かれる.
そして更に昭和20年の知覧,沖縄海上を埋め尽くす米機動部隊に向け,次から次へと特攻が飛び立っていく.その若者達とトメさんとの出会いと別れを描く.
石原慎太郎の制作総指揮なので,どんなにファナティックな映画なのかと思ったが,それは杞憂であった.
しかしこの映画は,映画の基本的な部分で問題がある.まず,画面のつながりが悪くて時間の経過がわかりにくい.あるシーンの次のシーンが,直後なのか翌日なのか数日後なのかどうもぴんと来ない.
そしてこの映画は群像劇で,それも軍人の群像劇で,皆同じ格好をして丸坊主なので,誰が誰やら区別がつかない.しかも登場人物はほとんどアップにならず,またその生い立ちや境遇が全くと言っていいほど説明されないので,ますます訳が分からない.
映画を見ているうちに思い当たるのは,この映画は物語性よりも印象的なシーンや台詞に重きを置いているらしいということだ.
靖国で会おうと誓い合うシーン,若い兵達の大声で歌う軍歌,乙女達の唱歌の合唱,繰り返される出陣式のシーン,そして轟々と唸るエンジンの音とともに飛び立っていく特攻達.
これは石原慎太郎の特攻ファンタジーなのだ.彼自身が見たく聞きたかったシーンの数々,それで成り立っている映画である.1
だからこれは石原氏自身のライブラリーに取っておけば十分,人から金を取って見せる程のものではない.
リサ・モリモト監督の「TOKKO -特攻-」と見比べると,それぞれの映画の違いがよく分かるだろう.
★☆(★5個が満点)
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2008/11/23

独断的映画感想文:ザ・コミットメンツ

日記:2008年11月某日
映画「ザ・コミットメンツ」を見る.Commitments2
1991年.監督:アラン・パーカー.
出演: ロバート・アーキンズ,マイケル・エイハーン,アンジェリナ・ボール,マリア・ドイル,デイヴ・フィネガン,ブロナー・ギャラガー,フェリム・ゴームリー,グレン・ハンサード,アンドリュー・ストロング,ケネス・マクラスキー,ジョニー・マーフィ.
バンド仲間と共に新しいソウルバンドを目指したジミーは,新聞に広告を出し,「労働者階級」のソウルバンド結成を呼びかける.
しかし集まってくるのは期待外れの連中ばかり,それでもバスの車掌で個性的ヴォーカリストのデコ,中年のトランペッターだが世界の大物のバックを勤めたというジョーイ,真面目な医学生スティーブン等を採用,コーラスには皆が憧れていたイメルダとその友人を加え,ザ・コミットメンツがスタートする.
屋根裏を借りて練習して最初のライブは公民館の反ヘロイン・キャンペーン.
これに成功するも,ステージは途中で興奮したデコの振り回したマイク・スタンドがベーシスト・デレクを直撃し中止に.
しかしめげずにバンドは活動を重ね彼らは腕を上げていく.ステージは大受けだが,舞台裏では仲がしっくりいかない彼らだった….
これも音楽映画,素敵な音楽が次から次に楽しめるだけでご機嫌である.
しかしコミットメンツは大変なバンド,デコは自己中でスター気取り,バンドの全員と仲が悪く,ジョーイはコーラスの3人の女性に次々と手をつけて3人を犬猿の仲に落とし込む.
僕自身はバンド経験はないが,全くステージであれほど素晴らしい演奏を披露できる彼らが楽屋であれほど仲が悪いとは,どういうことなのだろう.
もっともビートルズもバラバラになった後であの「アビー・ロード」のように美しいコーラスアルバムを作ったし,バンドというのは謎であります.Commitments1
というわけでこの映画の結末はちょっぴり苦いものになるが,見た後の感想は爽やか.
ギタリスト役で出演のグレン・ハンサードは,2006年の映画「ONCE ダブリンの街角で」で主演を果たした.
ソウルミュージックの嫌いでない人には一見の価値あり.
★★★☆(★5個が満点)
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2008/11/22

独断的映画感想文:アース

日記:2008年11月某日
映画「アース」を見る.Earth1
2007年.監督:アラステア・フォザーギル,マーク・リンフィールド.
製作:アリックス・ティドマーシュ,ソフォクレス・タシオリス.脚本: デヴィッド・アッテンボロー,アラステア・フォザーギル,マーク・リンフィールド.音楽:ジョージ・フェントン.
英国BBC製作の地球ドキュメンタリー.
映像の美しさは期待したほどではない.
BBCの解説は特定の偏りを感じてあまり感心しない.地球温暖化の犠牲の象徴がホッキョクグマだというが,話が単純すぎないだろうか.また何故クジラとホッキョクグマと象が問題なのか,クジラはむしろ増えているではないか.Earth2
話を擬人化して偏った感情を持たせようとしている印象を受ける.ストーリー全体も退屈で寝てしまいました.
いろんなエピソードもすでに他の番組で見たものが多く,手垢のついた感じも否めない.
★☆(★5個が満点)
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2008/11/16

独断的映画感想文:赤ひげ

日記:2008年11月某日
映画「赤ひげ」を見る.01
1965年.監督:黒澤明.
出演:三船敏郎(新出去定),加山雄三(保本登),山崎努(佐八(車大工)),団令子(お杉(女中)),桑野みゆき(佐八の女房おなか),香川京子(狂女),江原達怡(津川玄三),二木てるみ (おとよ),根岸明美(おくに(六助の娘)),頭師佳孝(長次),土屋嘉男(森半太夫),東野英治郎(五平次(大家)),志村喬(和泉屋徳兵衛),笠智衆(登の父),杉村春子(娼家の女主人),田中絹代(登の母),西村晃(家老),千葉信男(松平壱岐),藤原釜足(おくにの父六助(蒔絵師)),内藤洋子(まさえ),野村昭子(おふく),菅井きん(長次の母),荒木道子(娼家の女主人),左卜全(入所患者),常田富士男(地廻り).05
山本周五郎の原作を黒澤が映画化した3時間を超す大作.
長崎帰りの気鋭の医者保本は御典医を夢見ていたが,貧民に医療を施す小石川養生所勤務を命じられ,釈然としない.所長の赤ひげの頭ごなしの指示にも反発し,従わない.
養生所に入院中の殺人狂の女が逃げ出した夜,保本はその女に羽交い締めにされ,危ういところを赤ひげに救われる.
以来赤ひげに従い診療に従事するようになった保本は,膵癌の六助や,結核の左八の死を看取る.
ある日赤ひげと保本は,娼家で虐待を受けているおとよを救い養生所に連れ帰る.おとよは誰にも心を開こうとしなかった….08
映画の醍醐味を心ゆくまで味わえる名作.セットの素晴らしさ,光と影の魔術,一場面一場面がこれしかないと思える吟味されたカメラワーク.
山本周五郎の原作だから下手をすると説教臭い物語になりかねないのだが,三船敏郎演じる赤ひげのキャラクターがその嫌みを帳消しにしてくれる.
物語は前半が死の看取り,後半は再生の看取りである.13
腕達者な名優が目白押しのこの映画で特筆すべき俳優は,なんといっても二木てるみと頭師佳孝であろう.二木てるみに頭師佳孝が別れを告げるシーンは涙を禁じ得ない.
大人では根岸明美の独白シーン,山崎努と桑野みゆきのエピソードが胸を打つ.12
この映画を初めて見たのは14歳の時だった.そのときの感動が甦った思いがして,嬉しかった.
★★★★☆(★5個が満点)
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2008/11/12

番外・独断的歌舞伎感想文:江戸宵闇妖鉤爪

日記:2008年11月某日
歌舞伎「江戸宵闇妖鉤爪えどのやみあやしのかぎづめ― 明智小五郎と人間豹 ―」を見る.
江戸川乱歩=作「人間豹」より.岩豪友樹子=脚色.九代琴松=演出.
松本幸四郎,市川染五郎,市川春猿他.Photo
江戸川乱歩ものであるが,時代を江戸時代とした翻案もの.原作は「人間豹」.
冒頭,不忍池のほとりの出会い茶屋で逢い引きする神谷とお甲,しかし神谷が迎えの駕籠に乗った後お甲は無惨な死を遂げる.
その事件解明に乗り出す同心明智小五郎.
ところが神谷の新しい恋人お蘭が更に襲われ,明智の愛妻お文(原作では文代さんですな)も狙われ….
幸四郎の同心明智小五郎というのがやや大時代な感があるが,染五郎と春猿(被害者3人は全てこの人)はすてき.
人間豹に扮する染五郎はワイヤーワークやトランポリンを駆使して健闘,最後には大凧に乗る宙乗りを披露.
この舞台で良かったものの一つは音楽で,時に登場人物の台詞を代行したりしながら,歌舞伎音楽の筋を通した演奏が印象的だった.
最後追い詰められた人間豹が大凧に乗り込み宙乗りに移って,どんちゃんどんちゃんという鳴り物に乗って舞い上がるシーンは,一見の価値あり.
時にはやって欲しい江戸川乱歩ものであった.
★★★☆(★5個が満点)

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2008/11/06

独断的映画感想文:ALWAYS 続・三丁目の夕日

日記:2008年11月某日
映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」を見る.Always22
2007年.監督:山崎貴.出演:吉岡秀隆(茶川竜之介),堤真一(鈴木則文),小雪(石崎ヒロミ),堀北真希(星野六子),もたいまさこ(大田キン),三浦友和(宅間史郎)(特別出演),薬師丸ひろ子(鈴木トモエ),須賀健太(古行淳之介),小清水一揮(鈴木一平),マギー,温水洋一,神戸浩,飯田基祐,ピエール瀧,小木茂光,小日向文世,吹石一恵,福士誠治,貫地谷しほり,藤本静,浅利陽介,小池彩夢,平田満,浅野和之,渡辺いっけい,手塚理美,上川隆也.Always24
日本アカデミー賞を独占し(怨)売れまくった前作の続編.
登場人物は前回とキャストともほぼ同じで,淳之介を引き取ると実父に迫られ一念発起芥川賞への再挑戦を試みる茶川と,彼を慕いながらストリッパーを続けるヒロミ,新しい家族の増えたお向かいの鈴木オートが軸になって物語は展開する.Always25
度肝を抜かれたのはオープニングのエピソード.なんと日本映画界最大のスターが3丁目に乗り込んでくるシーンから始まるのだ.彼と対峙する鈴木オートのかっこよさ.
この映画の特徴の一つは,セットとCGの力で昭和30年代的イメージを見事に構成していることだろう.実際はもちろんもっとあらゆるものが汚く道もでこぼこで,着ている服もみすぼらしかったと思うが,これはメルヘンなのだ.これで良いのだ.Always21
ストーリーは型どおりで泣かせるところも類型的だと思うが,ノスタルジーと相まって引き込まれていくのだろう.
見て損はない映画.
但し,役者が多すぎる.こんなに大勢の役者を湯水のように使うことはないだろうと思うのだが.
★★★☆(★5個が満点)
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2008/11/02

独断的映画感想文:ユメ十夜

日記:2008年10月某日
映画「ユメ十夜」を見る.Yume09
「第一夜」監督:実相寺昭雄,出演:小泉今日子(ツグミ),松尾スズキ(百閒).「第二夜」監督:市川崑,うじきつよし(男),中村梅之助(和尚).「第三夜」監督:清水崇,堀部圭亮(夏目漱石),香椎由宇(鏡子).「第四夜」監督:清水厚,山本耕史(漱石),菅野莉央(日向はるか).「第五夜」監督:豊島圭介,市川実日子(真砂子),大倉孝二(庄太郎).「第六夜」監督:松尾スズキ,阿部サダヲ(わたし),TOZAWA(運慶).石原良純(石原良純).「第七夜」監督:天野喜孝,河原真明.「第八夜」監督:山下敦弘,藤岡弘、(漱石(正造)),山本浩司.「第九夜」監督:西川美和,緒川たまき(母),ピエール瀧(父).「第十夜」監督:山口雄大,松山ケンイチ(庄太郎),本上まなみ(よし乃),石坂浩二(平賀源内).Yume06
何とも言えない映画.夢だからとりとめも無いことは仕方がないが,面白くも何ともないのには閉口する.
かろうじて面白かったのは,阿部サダヲが主演した第六夜(これは音楽も良かった)と山下敦浩監督の第八夜くらいか.また第一夜は如何にも夢という印象が残った.
後はほとんど印象に残らず,退屈だった.
ところが原作を読んでみると,これが映画とは似ても似つかない.何でこういう映画ができたんだろう?
第八夜のチクワのお化けはいったい何なのだ?Yume07
思い返せばそれぞれの作品はまあ,如何にもそれぞれの監督らしい.
要するに第一印象は自分の映画の好き嫌いに過ぎなかった.逆に思うのは,自分の好き嫌い許容範囲が如何にも狭いことである.
この映画は僕にとって面白い映画ではなかった.しかし思いがけなく興味深い映画であった.Yume08
点数はつけられない.
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