独断的映画感想文:俺は、君のためにこそ死にに行く
日記:2008年11月某日
映画「俺は、君のためにこそ死にに行く」を見る.
2007年.監督:新城卓.
出演:岸惠子(鳥濱トメ),徳重聡(中西正也少尉),窪塚洋介(板東勝次少尉),筒井道隆(田端絋一少尉),多部未華子(鳥濱礼子),前川泰之(金山少尉),中村友也(河合惣一軍曹),渡辺大(加藤伍長),木村昇(安部少尉),蓮ハルク(松本軍曹),宮下裕治(石倉伍長),田中伸一(荒木少尉),古畑勝隆(大島茂夫),中越典子(鶴田一枝),桜井幸子(板東寿子),戸田菜穂(田端良子),宮崎美子(河合の母),寺田農(板東真太).
舞台は知覧の鳥濱食堂,主人のトメさんは特攻の母として有名な方らしい.
その知覧の昭和18年の風景の後,フィリピンの海軍軍令部で特攻の命令が発動されるシーンが描かれる.
そして更に昭和20年の知覧,沖縄海上を埋め尽くす米機動部隊に向け,次から次へと特攻が飛び立っていく.その若者達とトメさんとの出会いと別れを描く.
石原慎太郎の制作総指揮なので,どんなにファナティックな映画なのかと思ったが,それは杞憂であった.
しかしこの映画は,映画の基本的な部分で問題がある.まず,画面のつながりが悪くて時間の経過がわかりにくい.あるシーンの次のシーンが,直後なのか翌日なのか数日後なのかどうもぴんと来ない.
そしてこの映画は群像劇で,それも軍人の群像劇で,皆同じ格好をして丸坊主なので,誰が誰やら区別がつかない.しかも登場人物はほとんどアップにならず,またその生い立ちや境遇が全くと言っていいほど説明されないので,ますます訳が分からない.
映画を見ているうちに思い当たるのは,この映画は物語性よりも印象的なシーンや台詞に重きを置いているらしいということだ.
靖国で会おうと誓い合うシーン,若い兵達の大声で歌う軍歌,乙女達の唱歌の合唱,繰り返される出陣式のシーン,そして轟々と唸るエンジンの音とともに飛び立っていく特攻達.
これは石原慎太郎の特攻ファンタジーなのだ.彼自身が見たく聞きたかったシーンの数々,それで成り立っている映画である.
だからこれは石原氏自身のライブラリーに取っておけば十分,人から金を取って見せる程のものではない.
リサ・モリモト監督の「TOKKO -特攻-」と見比べると,それぞれの映画の違いがよく分かるだろう.
★☆(★5個が満点)
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