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2009年1月に作成された記事

2009/01/30

独断的映画感想文:フィクサー

日記:2009年1月某日
映画「フィクサー」を見る.Fixer003
2007年.監督:トニー・ギルロイ.
出演:ジョージ・クルーニー(マイケル・クレイトン),トム・ウィルキンソン(アーサー・イーデンス),ティルダ・スウィントン(カレン・クラウダー),シドニー・ポラック(マーティ・バック),マイケル・オキーフ(バリー・グリッソム),デニス・オヘア(ミスター・グリーア), ジュリー・ホワイト(ミセス・グリーア),オースティン・ウィリアムズ(ヘンリー・クレイトン).
マイケルは元検事,弁護士事務所に所属するが法廷には立たない.
彼は公然と処理できない事件を裏で処理したりもみ消したりする専門家なのだ.冒頭,ひき逃げをした顧客からの連絡で自宅に急行したマイケルが,その顧客の相手をするシーンが出色.マイケルは有能だが,ただ相手の言うがままになるフィクサーではない.
一方彼は離婚した妻との間に可愛い息子がいて,またアル中の弟のこしらえた借金を完済すべく悪戦苦闘しており,決してスーパースターではない.Fixer004
ある日事務所の同僚アーサーが,農薬会社U-ノース社の代理人として被害者と交渉していた席で突然服を脱ぎ出すという奇行に走る.その後処理を依頼されたマイケルは,アーサーが被害者側有利の決定的証拠を掴んでいることを知る.
いっぽうU-ノース社の法務部長カレンもその秘密を追い,アーサーの口を封じるための行動に出る….
プロットが複雑で始めわかりにくいが,テンポも良いし最後まで緊張感の維持される好編.
フィクサーであるマイケルも,大企業の法務部長であるカレンも,いずれも等身大であるところがこの映画の面白いところ.アーサーを演じたトム・ウィルキンソンが存在感があった.Fixer009
ところで冒頭に続くシーンで,マイケルが車を降り丘に佇む3頭の馬に近づいていくシーンがあるが,これって何だったんだろうか?このとき背後で彼の車が爆発炎上し,彼は一命が助かるのだが,この馬に近づいた理由は分からないまま.誰か教えてくれる人はいないかしら.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:エリザベス:ゴールデン・エイジ

日記:2009年1月某日
映画「エリザベス:ゴールデン・エイジ」を見る.3
2007年.監督:シェカール・カブール.
出演:ケイト・ブランシェット(エリザベス女王1世),ジェフリー・ラッシュ(フランシス・ウォルシンガム),クライヴ・オーウェン(ウォルター・ローリー),リス・エヴァンス(ロバート・レストン),ジョルディ・モリャ(スペイン国王フェリペ2世),アビー・コーニッシュ(ベス・スロックモートン),サマンサ・モートン(スコットランド女王メアリー).
1585年,即位後27年を経たエリザベス1世はイングランドにおける揺るぎない王権を確立.しかし熱狂的なカトリック信仰を持つスペイン王フェリペ2世は,イングランドをカトリックに改宗せんと,エリザベスに対し攻撃を試みる.
彼はスペイン無敵艦隊の建艦を進める一方,スコットランド女王メアリーを扇動しエリザベスに対する謀反をたきつける.2
エリザベス側近のウォルシンガムを中心とした勢力と,スペイン王に支援されたカトリック系勢力との暗闘.その中,新大陸から帰還したウォルター・ローリーが宮廷に現れ,エリザベスはその自由な生き方に強く惹かれるのであった….
前作の続きだが前作の知識は必要ない.エリザベスの苦悩と決断を描き,その偉大さと高貴さが強く印象づけられる.
またこの時代のイングランドの情景や宮廷の雰囲気が堪能できるのも素敵.
アルマダの海戦の描写も適切で,大海原を染めて炎上する無敵艦隊を見下ろすエリザベスⅠ世のシーンは,一幅の絵のようだ.1
西洋時代劇ファンには充分満足できるエンタテインメント.クライブ・オーエンやジェフリー・ラッシュも素晴らしかった.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ラスト、コーション

日記:2009年1月某日
映画「ラスト、コーション」を見る.Lustcaution4
2007年.監督:アン・リー.
出演:トニー・レオン(イー),タン・ウェイ(ワン・チアチー(マイ夫人)),ワン・リーホン(クァン・ユイミン),ジョアン・チェン(イー夫人),トゥオ・ツォンホァ(ウー),チュウ・チーイン(ライ・シュウチン),チン・ガーロウ(ツァオ),クー・ユールン(リャン・ルンション),ガオ・インシュアン(ホァン・レイ).
映画の冒頭シェパード(犬)のアップ,その首輪を押さえる警備員のアップ.厳重に警戒が続くビルの描写に「1942年日本軍占領下の上海」とテロップが出る.
階段をスープを盆にのせて駆け上がる女中,それを受け取るばあや越しに麻雀卓を囲む婦人達が見える.実にスムースな映画の滑り出しである.Lustcaution2
やがて車で送られたマイ婦人ことヒロインのワン・チアチーが,喫茶店に入り電話をかける.電話の向こうではそれを合図に銃を掴んで飛び出す男達.何が起こるのか?
ここで画面は4年前に戻る.平凡な女学生ワン・チアチーが,友人の誘いで学生劇団に入り,抗日愛国劇を上演,成功させる.
やがて劇団は傀儡政府の情報部要人イーを暗殺する計画を立て,チアチーはマイ婦人と名乗ってイーを誘惑する役を演じるが,イーの突然の転勤で計画は未遂と終わる.
しかし彼らがイーの知人を殺害したため,皆ばらばらになり逃亡,3年後劇団員に偶然再会したワン・チアチーは,今度こそイーを暗殺するという計画に荷担,身体を張ってイーを誘惑する.ついにイーの愛人となったワン・チアチーだが….Lustcaution3
戦争下,侵略軍の傀儡政府の情報部要人と彼を誘惑し暗殺しようとする工作員,その緊迫感あふれるやりとりを,トニー・レオンとタン・ウェイが見事に演じている.
二人の刹那的で死に物狂いと言っていいようなセックスシーンはまさに圧巻.お互いの身体にしがみつく二人は,しかしエロティックというよりはむしろ哀切という印象で胸を打たれる.
全体的に映画のおもしろさを存分に味わえるシーンが満載で,例えば1942年の上海の雑踏をどうやって再現したのだろう?Lustcaution1
ビルの建ち並ぶ街にはトロリー・バスが走り,赤いターバンのインド人警官が交通整理する中,街を埋め尽くす人々が行き来する.人力車や自動車(中には木炭車さえ見られる)が通り抜けていく.
あるいは愛国劇が大成功に終わった後,夜雨の中を疾走する2階建てバスの上階で,風に髪をなぶらせながら興奮に酔いしれるワン・チアチーの姿.
映画ならではの魅力的なシーンが見事だ.
物語はカタストロフに終わるが,その余韻ある終わり方も納得がいく.映画らしい映画.音楽も素敵.
なお,題名の「ラスト、コーション」は中国語の原題名「色|戒」の直訳と考えられる.「最後の警告」というわけではない.
★★★★☆(★5個が満点)
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2009/01/26

独断的映画感想文:殯(もがり)の森

日記:2009年1月某日
映画「殯(もがり)の森」を見る.5
2007年.監督:河瀬直美.
出演:うだしげき(しげき),尾野真千子(真千子),渡辺真起子(和歌子),ますだかなこ(真子),斉藤陽一郎(真千子の夫).
映画の冒頭,画面一杯に映し出される風に揺れる緑の森.微かな鉦の音が規則正しく聞こえる.
やがて森を背景に青い田を風が渡っていくシーン,やがて鉦の音と共に2本の幡を先頭に画面をゆっくり横切っていく葬列.この開幕のシーンで既に映画に引き込まれてしまった.4_2
奈良の介護老人ホームで暮らすしげきは,33年前に亡くした妻,真子の面影を今も慕う認知症の老人.新任の介護士真千子は,事故で子供を亡くしそれが原因で夫とも別れた.
亡妻と似た名前の真千子,真千子としげきは次第に心を通わせるようになる.
ある日,亡妻の墓参りに真千子と共に出かけるしげき,その途上車が脱輪し,森に分け入った二人は嵐に襲われる….3
河瀬監督の映画は「萌えの朱雀」「沙羅双樹」以来,この監督は映画の出来不出来というより,その個性が好きか嫌いかという感想を持ってしまう人である.
見た後の不思議な感動という点で,この監督は僕は好きな人だ.2
出来不出来という点で言えば,「萌えの朱雀」は途中で眠ってしまったのを覚えているが,この映画は緊張感を持って最後まで見られた.台詞が聞き取れないなどの点は気になったが(英語字幕を表示してようやく判った部分あり),本質的な問題ではない.
生と死を,自然の息づかいを十分に表現する中で描いたこの映画は,満足度高し.
★★★★(★5個が満点)1
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2009/01/12

独断的映画感想文:幻影師アイゼンハイム

日記:2009年1月某日
映画「幻影師 アイゼンハイム」を見る.Illusionist1
2006年・監督:ニール・バーガー.
出演:エドワード・ノートン(幻影師アイゼンハイム),ポール・ジアマッティ(ウール警部),ジェシカ・ビール(公爵令嬢ソフィ),ルーファス・シーウェル(皇太子レオポルド),エドワード・マーサン(興行師フィッシャー),ジェイク・ウッド(ヤルカ),トム・フィッシャー(ウィリグート),アーロン・ジョンソン(若きアイゼンハイム),エレノア・トムリンソン(若きソフィ),カール・ジョンソン(医者/老紳士).
19世紀のウィーンで人気絶頂の幻影師アイゼンハイム,映画はその舞台中でのアイゼンハイム逮捕シーンから始まる.Illusionist3
家具職人の子として育ったアイゼンハイムは,少年の頃から手先が起用で奇術を得意とする.公爵令嬢ソフィーと知り合い二人は恋し合う仲となるが,身分違いのためその仲は引き裂かれる.
アイゼンハイムは出奔し,15年後幻影師となってウィーンの舞台に立ち人気を博した.
ある日皇太子レオポルドの観覧に際し,舞台に招いたその婚約者はソフィその人だった.その後宮殿に招かれたアイゼンハイムは,皇太子を挑発するショーを演じ,皇太子の怒りを買う….
アイゼンハイムの舞台は死者の幻を呼び寄せる.Illusionist5
その舞台の魅力がこの映画の中心,舞台に映画の中の観客が注目するその息づかいが,映画を見ている観客をも舞台に集中させる.
その集中がすでに幻影師の術中にはまっていることなのだ.
舞台に現れたソフィの幻とアイゼンハイムが目を見交わすシーンの哀切さ.幻影師の渾身の復讐は成功するのか?Illusionist2
最後の2分間のどんでん返しは,映画というエンタテインメントの醍醐味を味あわせてくれよう.
エドワード・ノートンの演技もさることながら,意図せずして観客を術中にはめる役割を果たす警部役のポール・ジアマッティも好演.一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:幽閉者 テロリスト

日記:2009年1月某日
映画「幽閉者 テロリスト」を見る.2_3
2006年.監督:足立正生.
出演:田口トモロヲ(M),PANTA(肖像人物),大久保鷹(マフラー男),梶原譲二(真面目屋),ARATA(サブリーダー),本多章一(リーダー),山本浩司(痩せの囚人),柄本時生(少年M),比嘉愛未(少女),仲野茂(保安情報部の中尉),荻野目慶子(長姉・女リーダー).
かってベイルートに渡り,日本赤軍に所属した足立正生による35年ぶりの監督作品.1972年のリッダ空港事件の実行者岡本公三をモデルとした作品.
3人で空港襲撃を行ったMは計画通り作戦を実行したが,一人手榴弾の不発で捕らえられてしまう.彼は独房に幽閉され,拷問,暴行,薬剤投与を受ける過酷な生活を強いられる.
次第に混乱と狂気に蝕まれるMは,自分の来し方行く末を自問するのだった….
映画はわずかな回想シーンを除けば殆どが独房の中での暴行シーンの繰り返しで,誠に見るのが辛い映画.
この映画の問題点は中途半端な抽象化にあるのではないだろうか.1_3
独房内で暴行される幽閉者という存在を描くならもっと徹底的に抽象化した方が良かった.日本赤軍の闘士を描くというコンセプトは,今の日本では受け入れられないし,ヒステリックな反対論者の悪口雑言罵詈讒謗を浴びるだけという気がする.
また,映画の出来自体は田口トモロヲの熱演にもかかわらず退屈で,60年代風の安っぽい画面作りが気になってしまう.
ノイズィな音響を多用した音楽は良かったと思うが,画面はそれに合っていなかった.
正月TVで柄本明が昨年のベストと言っていたが,時生君が出ているからってそこまで言わなくても.
★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ダークナイト

日記:2009年1月某日
映画「ダークナイト」を見る.Darkknight3
2008年.監督:クリストファー・ノーラン.
出演:クリスチャン・ベイル(ブルース・ウェイン/バットマン),マイケル・ケイン(アルフレッド),ヒース・レジャー(ジョーカー),ゲイリー・オールドマン(ゴードン警部補),アーロン・エッカート(ハービー・デント検事/トゥーフェイス),マギー・ギレンホール(レイチェル・ドーズ),モーガン・フリーマン(ルーシャス・フォックス),エリック・ロバーツ(マローニ),ネスター・カーボネル(ゴッサム市長),モニーク・カーネン(ラミレス),ロン・ディーン(ワーツ),キリアン・マーフィ(スケアクロウ),チン・ハン(ラウ).
ゴッサム市は犯罪が蔓延し,バットマンが身体を張ってそれと戦う日々,そこに新しい検事が着任する.
検事の悪と戦う姿勢にバットマンは期待するが,一方恋人のレイチェルを競う仲ともなる.Darkknight4
他方ジョーカーはその天才的な頭脳と躊躇することのない残忍さでマフィアを恐怖支配し,警察の腐敗にも乗じてゴッサム市の掌握に乗り出す.彼は,バットマンがマスクを取らない限り無差別に市民を殺害すると宣言,それを実行するやバットマンに市民の非難は集中する….
前作に続き耐えて耐えてというバットマンの苦闘が続く.
ジョーカーの手段を選ばぬ機動的・組織的な悪行に対し,バットマン・カーで乗り付け殴り倒すだけのバットマンの活動は,いかにも無力で意味がないと見える.
ハービー・デント検事はジョーカーとの戦いの中で,ついに手段を選ばぬ復讐に走り始める(このあたりはスター・ウォーズを思い出しますね).Darkknight
大詰めのフェリー爆破計画のシークエンスが,いかにもアメリカの現状を反映して印象的.もっとも日本の状況もこの映画からそれほど遠いとは思えなくなってきたのが恐ろしいが.
いろいろな意味で9/11後のブッシュ政権のやってきたことが,アメリカ社会にどう影響したかを感じさせる映画.
こういう映画を制作し大ヒットさせるという点が,アメリカの映画制作者の抜きんでたところかも知れない.
今後バットマンは如何に戦うのか,という点が宿題になってしまったような気がするが,ヒース・レジャーの演技とともに心に残る映画であった.Darkknight2
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独断的映画感想文:イースタン・プロミス

日記:2009年1月某日
映画「イースタン・プロミス」を見る.1_2
2007年.監督:デヴィッド・クローネンバーグ.
出演:ヴィゴ・モーテンセン(ニコライ),ナオミ・ワッツ(アンナ),ヴァンサン・カッセル(キリル),アーミン・ミューラー=スタール(セミオン),イエジー・スコリモフスキー(ステパン),シニード・キューザック(ヘレン),サラ=ジャンヌ・ラブロッセ(タチアナ).
クリスマスも近いロンドンのある夜,店仕舞いした床屋で男が一人ひげをあたって貰っている.やがて店の息子が戻ってくると,店主と息子は二人がかりで男を殺してしまう.
床屋の正体はロシアマフィア,そのボスはロシア料理店を開くセミオン,殺人はセミオンの息子キリルの指示によるものだった.
一方臨月の少女が病院に運び込まれ赤子は助かるが少女は命を落とす.少女はロシアから連れてこられた売春婦のようだった.3
助産師のアンナは,少女の残した日記を叔父のステパンに翻訳して貰う一方,日記に挟んであった名刺を頼りにロシア料理店を訪れ,セミオンと会う.その帰途アンナはセミオンの運転手・ニコライと出会った….
映画はセミオンのボスとしての冷厳な面とファミリーに対する優しい表情,キリルとニコライの不思議な友情と相克,マフィアの中で頭角を現すニコライという男の謎,マフィア同士の争い等複雑な物語を様々に展開していく.その手際はなかなかに見事.
圧巻はサウナでニコライが2人のチェチェン人の殺し屋と繰り広げる死闘のアクションシーン.
素っ裸のニコライがタイル張りの浴室で殴られ蹴られ投げ飛ばされ斬られ,見ているこちらが痛みを感じるような壮絶さ,ヴィゴ・モーテンセンはよくまあこのシーンを了承したものだ.2_2
ヴァンサン・カッセルの演じたキリルという男も興味深いキャラクター.
彼は酒浸りで女に汚く,ホモだという噂まであるどうしようもないマフィアのぼんぼん,出来ることと言えば人に命令することくらいだが,ニコライといると妙に憎めないキャラを覗かせる.不思議な魅力をカッセルが好演.
ナオミ・ワッツは相変わらず美しい.
前に見た同監督の「イグジスタンズ」に比べれば,エンタテインメントとしてこちらの方がうんと出来が良い.結末にも一安心.
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独断的映画感想文:めがね

日記:2009年1月某日
映画「めがね」を見る.1
2007年.監督:荻上直子.
出演:小林聡美(タエコ),市川実日子(ハルナ),加瀬亮(ヨモギ),光石研(ユージ),もたいまさこ(サクラ),橘ユキコ(おばさん),中武吉(おじさん),荒井春代(女性),吉永賢(氷屋),里見真利奈(少女),薬師丸ひろ子(森下).
空港に降り立つタエコ,ここはどこか南の島らしい.
がらがらとスーツケースを牽いて大分歩いた挙げ句たどり着いた宿は,ユージという主人とコージという犬のいる閑散としたところ.
部屋で一休みしたタエコが夕食はまだかと食堂に出ると,主人がお重箱にごちそうを詰めている.一緒に行きますかと聞かれタエコがいえ私は,と答えると,主人はじゃあ冷蔵庫の中のもの適当に食べてくださいと言って出かけてしまう.冷蔵庫には調理前の魚が1匹.
翌朝タエコが目覚めると枕元には正体不明の女(サクラ)が正座し,おはようと挨拶.サクラは浜でメルシー体操という体操を指導していて近隣の人が集まっている.タエコは堪りかねて近隣の別の宿に移ろうとするが,その宿は午前畑仕事・午後学習というもっと変な宿だった….
結局タエコはユージの宿でサクラたちと共に暮らすうち次第にその生活にはまっていく….
不思議な映画である.登場人物の過去とか事情とかは一切明かされない.場所も特定されず何時のことかも判らない.宿に入りびたるハルナは高校の教員らしいがその高校は描写されず,タエコを追って突如登場するヨモギもどういう事情があったかは不明.2
登場人物は皆,いつの間にかこの宿で「たそがれる」ことになるらしい.
物語がほとんどないので途中で何度も寝てしまったが,寝たから筋が判らなくなるということもない.見て心の和む美しい海の風景が,いつも画面を満たしている.
しかし考えようによっては不気味な映画で,ここに迷い込んだら二度と娑婆には戻れないのではないか,という気にもさせる映画.
題名は,ユージの宿に出入りする人が全員めがねを掛けているということ以外には,心当たりなし.
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2009/01/07

独断的映画感想文:実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)

日記:2009年1月某日
映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」を見る.1_3
2007年.監督:若松孝二.
出演:坂井真紀(遠山美枝子), ARATA(坂口弘),並木愛枝(永田洋子),地曵豪(森恒夫),伴杏里(重信房子),大西信満(坂東國男),中泉英雄(植垣康博),伊達建士(青砥幹夫),日下部千太郎(山田孝),椋田涼(山崎順),粕谷佳五(進藤隆三郎),川淳平(行方正時),桃生亜希子(持原好子),本多章一(田宮高磨),笠原紳司(高原浩之),渋川清彦(梅内恒夫),RIKIYA(金廣志),坂口拓(塩見孝也),玉一敦也(奥沢修一),菟田高城(吉野雅邦),佐生有語(寺岡恒一),奥田恵梨華(杉崎ミサ子),高野八誠(加藤能敬),小木戸利光(加藤倫教),タモト清嵐(加藤元久),佐野史郎(さらぎ徳二),倉崎青児(松本礼二),奥貫薫(あさま山荘管理人).
この事件の同時代を生きた身としては,見ないではいられない映画である.
また,若松監督はこの映画を「実録」と名付けたが,結果はまさにその命名に相応しい出来であった.
この映画は思うに,60年代末から70年代にかけて起こった学生運動への感情によって,評価は分かれるであろう.学生運動を単にアホな学生どもがゲバ棒振るって暴れ回ったと捉え,連合赤軍事件をその果てに起きた殺し合いの犯罪事件と捉えれば,この映画は嫌悪の対象でしかなかろう.
しかしそうでなければ,その学生運動の結末が何故このような悲惨な殺し合いになったかは,その時代に生きた人々にとって重大な問題となる.3_2
この評価の別れは,「実録」である以上致し方のないところである.
しかし,連合赤軍の誕生の前史からその崩壊までを映像で見せたことの意味は重要であると同時に,犠牲者一人一人への鎮魂としても大きな意味を持つだろう.
映画の冒頭で監督は,この映画には一部フィクションが含まれていると言う.それは終盤に挿入されるわずか数分の映像だが,その数分に,監督の死者への鎮魂と生き残ったものへの厳しい追及が込められている.
個人的には,任務の途中で入浴したばかりに,総括を求められ命を落とした山田氏の最後の言葉が印象的だ.
瀕死の状態になりながら彼は部隊と同行することを希望し,敵と戦うことを切望し,森恒夫に「おまえこそ総括しろ」と叫んで絶命する.
「敵と戦う」ことが,警官との銃撃戦という今となっては荒唐無稽な犯罪行為だということを承知の上でなお心を動かされるのは,それが殺されていったほとんど全員の願いだったであろうことが想像できるからである.
一方,森・永田らの発言を追いながら痛感するのは,軍事組織のリーダーがより強硬でより精神主義的に過激な方針を出して主導権を握るということで,それは旧帝国陸軍からオウム真理教にいたるまで,繰り返されてきた愚かな歴史に明らかだ.2_2
長くしんどい映画ではあるが,見るべき映画と思う.ジム・オルークの音楽も印象的だった.
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番外・独断的歌舞伎感想文:2009年新春国立劇場歌舞伎公演

日記:2009年1月某日
国立劇場に行くと,振る舞い酒の列に人が並んでいる.10:20から酒樽の前で芝翫,團十郎,福助,橋之助,三津五郎が挨拶し鏡割り.TV中継や太神楽も入って正月らしい楽しさである.09011
演目は歌舞伎十八番の内「象引(ぞうひき) 一幕」,踊り「十返りの松(とかえりのまつ)」,「誧競艶仲町(いきじくらべはでななかちょう) 四幕六場」.
出演:中村芝翫,坂東三津五郎,中村橋之助,市村家橘,河原崎権十郎,坂東亀三郎,坂東巳之助,中村国生,中村宜生,中村宗生,坂東新悟,坂東亀寿,片岡市蔵,坂東秀調,市川團蔵,中村福助,市川團十郎.
象引きは荒事の定番,今回は何と云っても團十郎復活の舞台が注目の的である.家の芸のダイナミックな所作,館内に轟き渡る口跡と,元気な團十郎がみられて大満足,
やはり團十郎が元気でいることが歌舞伎にとって大切なこと.
十返りの松は芝翫親子3代の踊りが鮮やか,国生君はいささか体格に恵まれ過ぎか?芝翫がかくしゃくとして元気なのが嬉しい.
最後の狂言は4世鶴屋南北の作で,初演以来200年ぶりに台本化して上演とのこと.如何にも歌舞伎らしい見せ場に富んだ芝居,團蔵の悪人がもう少し凄みがあったら良かったが.
片岡市蔵の番頭は是非亀蔵でやって欲しいところ.
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独断的映画感想文:明日への遺言

日記:2009年1月某日
映画「明日への遺言」を見る.1_2
2007年.監督:小泉堯史.
出演:藤田まこと(岡田資),ロバート・レッサー(フェザーストン主任弁護人),フレッド・マックィーン(バーネット主任検察官),リチャード・ニール(ラップ裁判委員長),西村雅彦(町田秀実),蒼井優(守部和子),近衛はな(小原純子),加藤隆之(岡田陽),田中好子(水谷愛子),富司純子(岡田温子).
ピカソの「ゲルニカ」の提示から始まるこの映画.戦争における(日本軍を含めた)無差別爆撃の進展を紹介した後,昭和20年の名古屋大空襲の時,撃墜されたB29から降下した36名の米兵を処刑した責任者,東海軍司令官・岡田資(たすく)中将の戦犯としての裁判が開始される.2
映画は巣鴨プリズンと横浜地裁に置かれた軍事法廷を往復する描写,映像としては退屈なものだが,映画を充実させる藤田まこと・富司純子の演技と中将の「法戦」と自ら名付けた弁論が印象的である.
岡田の論点は,無差別爆撃は違法であること,その加担者を処罰したことは適法であること,責任は一切自分にあることの3つである.
一方検察側・裁判委員側は岡田の毅然とした態度と論理に圧倒されるが,無差別爆撃を違法と認めることはできない.裁判長は,米軍は報復を適法と認めているが,と示唆する.これは無差別爆撃への処罰という主張を引っ込めれば罪を減じようという誘いと考えられるが,岡田の主張は変わらない.絞首刑判決を受け,「本望である」と言い残し法廷を去る.
旧軍の主流であった戦略意識に欠け,官僚的で私利私欲に走り,その結果国を未曾有の災厄に巻き込んでその責任を取ろうとしない将校達の中で,若い頃英国の大使館勤務を経験し,一方で仏教に帰依したという岡田中将のような例は希であろう.3
中将の,斬首が名誉ある処刑だという主張,36人の裁判に依らない処刑指示は致し方ないという主張は今の時点から見て納得はできないが,厳しい状況下での法戦を展開した中将の姿勢には,日本人として敬意を覚える.
映画は中将の独白,妻の独白の他に竹野内豊のナレーションが入るが,これは減点対象.ナレーションそのものの出来が悪い上,内容が客観的でなく感情的で,このナレーションで映画そのものがプロパガンダ的に見えてしまう恐れがある.4
映画そのものは丁寧に作られた映画らしい映画.
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独断的映画感想文:ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト

日記:2008年12月某日
映画「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」を見る.Sal01
2008年.監督:マーティン・スコセッシ.
出演:ミック・ジャガー,キース・リチャーズ,チャーリー・ワッツ,ロン・ウッド,バディ・ガイ,クリントン夫妻.
2006年秋,ニューヨーク「ビーコン・シアター」でのローリング・ストーンズ公演ライブ.
出だし十数分は公演前の監督スコセッシとストーンズの面々の緊迫感あふれるやりとり.監督に当日の曲目リストがなかなか届かない.Sla02
それがついに届いたと同時に幕が開き,キース・リチャーズがギターから繰り出す「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」が始まったときの総毛立つ感動,後はもうストーンズのなすがままキュウリがパパ.
終曲まで恍惚の時を過ごす.
ミックの動きのなんと軽快でエネルギッシュなこと,とても60を越えたとは思えない.逆に少し腹の出たキースの省エネ的で味のあるギタープレイと,思いがけずソロで歌った曲の魅力的なこと.
寡黙なチャーリー・ワッツの時に見せる溜め息やほほえみ,ロン・ウッドの「キースと比べれば自分の方がうまい」との談話等,それぞれの魅力があって飽きることなし.Sla03
今から40年近く前に見た「ギミー・シェルター」では,ヘルス・エンジェルスが公演会場で殺人事件を起こし,その映像を見るストーンズの面々の沈痛な表情が印象的だった.
今回はクリントン元大統領の紹介という栄誉に包まれてスタートし,成功のうちに全曲を終えるなど,時代の移り変わりを痛感する.
同じ夜NHKで我らが沢田研二の60歳記念ライブを見た.ジュリーの声は美しかった.これも感動的.
しかしジュリー!君の手足は圧倒的に短い.君の顎下とおなかは圧倒的にだぶついている.ミックの肢体と比べるのは酷だったかな?Sla04
★★★★(★5個が満点)
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