独断的映画感想文:実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)
日記:2009年1月某日
映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」を見る.
2007年.監督:若松孝二.
出演:坂井真紀(遠山美枝子), ARATA(坂口弘),並木愛枝(永田洋子),地曵豪(森恒夫),伴杏里(重信房子),大西信満(坂東國男),中泉英雄(植垣康博),伊達建士(青砥幹夫),日下部千太郎(山田孝),椋田涼(山崎順),粕谷佳五(進藤隆三郎),川淳平(行方正時),桃生亜希子(持原好子),本多章一(田宮高磨),笠原紳司(高原浩之),渋川清彦(梅内恒夫),RIKIYA(金廣志),坂口拓(塩見孝也),玉一敦也(奥沢修一),菟田高城(吉野雅邦),佐生有語(寺岡恒一),奥田恵梨華(杉崎ミサ子),高野八誠(加藤能敬),小木戸利光(加藤倫教),タモト清嵐(加藤元久),佐野史郎(さらぎ徳二),倉崎青児(松本礼二),奥貫薫(あさま山荘管理人).
この事件の同時代を生きた身としては,見ないではいられない映画である.
また,若松監督はこの映画を「実録」と名付けたが,結果はまさにその命名に相応しい出来であった.
この映画は思うに,60年代末から70年代にかけて起こった学生運動への感情によって,評価は分かれるであろう.学生運動を単にアホな学生どもがゲバ棒振るって暴れ回ったと捉え,連合赤軍事件をその果てに起きた殺し合いの犯罪事件と捉えれば,この映画は嫌悪の対象でしかなかろう.
しかしそうでなければ,その学生運動の結末が何故このような悲惨な殺し合いになったかは,その時代に生きた人々にとって重大な問題となる.
この評価の別れは,「実録」である以上致し方のないところである.
しかし,連合赤軍の誕生の前史からその崩壊までを映像で見せたことの意味は重要であると同時に,犠牲者一人一人への鎮魂としても大きな意味を持つだろう.
映画の冒頭で監督は,この映画には一部フィクションが含まれていると言う.それは終盤に挿入されるわずか数分の映像だが,その数分に,監督の死者への鎮魂と生き残ったものへの厳しい追及が込められている.
個人的には,任務の途中で入浴したばかりに,総括を求められ命を落とした山田氏の最後の言葉が印象的だ.
瀕死の状態になりながら彼は部隊と同行することを希望し,敵と戦うことを切望し,森恒夫に「おまえこそ総括しろ」と叫んで絶命する.
「敵と戦う」ことが,警官との銃撃戦という今となっては荒唐無稽な犯罪行為だということを承知の上でなお心を動かされるのは,それが殺されていったほとんど全員の願いだったであろうことが想像できるからである.
一方,森・永田らの発言を追いながら痛感するのは,軍事組織のリーダーがより強硬でより精神主義的に過激な方針を出して主導権を握るということで,それは旧帝国陸軍からオウム真理教にいたるまで,繰り返されてきた愚かな歴史に明らかだ.
長くしんどい映画ではあるが,見るべき映画と思う.ジム・オルークの音楽も印象的だった.
★★★★☆(★5個が満点)
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