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2009年2月に作成された記事

2009/02/22

追悼,中村又五郎

中村又五郎が亡くなった.
昔からテレビや舞台中継で見知った人だったが,歌舞伎を見に行く様になってからの舞台では,あまり見た記憶がない.
どの狂言か,商家の老主人の役で見た記憶がぼんやりとあるが,定かではない.
新聞によれば2005年の勘三郎の襲名披露の口上に出ていたといい,これは自分も見た筈なのだが,又五郎の記憶はない.このときは左団次が例によってとんでもない話をしていた(舞台で勘三郎に屁をかましたという)のを覚えているだけ.
中村又五郎に愛着を覚えたのは,大好きな作家池波正太郎の連作小説「剣客商売」の主人公・秋山小兵衛を,芝居好きのこの作家が中村又五郎をモデルに造形したということ,また「剣客商売」が劇化されたときの主演が中村又五郎だったと知ったからである.この上演時の面白いエピソードが,戸板康二の「ちょっといい話」に紹介されていたことも,楽しい記憶である.
又五郎の印象がもっとも鮮明なのは,「鬼平犯科帳」への出演だ.
出演作は第1シリーズの「暗剣白梅香」,第4シリーズの「討ち入り市兵衛」で,後者では主演格で殺陣もやった.「討ち入り市兵衛」の演技は秀逸で,泣かされた.
歌舞伎界の至宝にして名優,また国立劇場の研修生の指導者としてかけがえのない存在だったことは,報道されているとおり.大往生した播磨屋の長老のご冥福を改めてお祈り申し上げる.
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2009/02/18

独断的映画感想文:胡同の理髪師

日記:2009年2月某日
映画「胡同の理髪師」を見る.1
2008年.監督:ハスチョロー.
出演 チン・クイ(チンお爺さん),チャン・ヤオシン(チャン老人),ワン・ホンタオ(チャオ老人),ワン・シャン(ミー老人).
北京の胡同に住むチン爺さんは93歳の現役理髪師.以前は自分の店を持っていたが,今は3輪自転車に道具を積んで,胡同の路地を回ってはお得意さんの髪を刈りヒゲを剃る.
お得意さんは皆お年寄り,一人暮らしの人も多い.2
チン爺さんの息子ももう年金暮らしの元工場労働者だが,父のもとに来ては自らの不運を嘆き愚痴をこぼす.チン爺さんはそれを聞きながら黙ってたばこをふかすだけだ.
一人住まいのミー老人のもとを訪れると,彼は死んでいた.
当局に届け死体は運ばれていく.帰ろうとするとミー老人の愛猫ニューニューがいつの間にか爺さんの3輪自転車に乗り込んでいる.ニューニューを連れ帰った爺さんは,理髪師の仕事や常連との麻雀という日常を続ける….
爺さんを取り巻くもつやき屋のチャン老人や,チャオ老人とその息子夫婦のエピソード等を交えながら描く,胡同の暮らし.4
その胡同の街並みは,北京五輪を控えて破壊計画がじわじわと進行している.老人達は自分たちの死に方を互いに語り合う.
しかしチン爺さんはそんなことには悩まない.爺さんの生き方はあくまでも前向きである.そのチン爺さんを描くドキュメントタッチの映画.
ひょうひょうと生きるチン爺さんの,巧まざるユーモアも交えた日常の描写を見て,飽きることがない.
チン爺さんの様に,思い煩うことなく人のために生きたいものだ.3
ある種の元気を与えてくれる映画.仲間は死んでいき,若い世代には世知辛い者が多いけれど,爺さんの息子が初孫が生まれてえらく前向きになってやってきたりもする.人生はなかなか捨てたもんではありません.
見て良かった映画.
★★★★(★5個が満点)
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2009/02/10

独断的映画感想文:あの胸にもういちど

日記:2009年2月某日
映画「あの胸にもういちど」を見る.Marianne1
1968年.監督:ジャック・カーディフ.
出演:マリアンヌ・フェイスフル,アラン・ドロン,ロジャー・マットン,マリウス・ゴーリング,カトリーヌ・ジュールダン.
レベッカはアルザスの書店の娘,小学校の教師レイモンと結婚する直前,スキー宿で書店の顧客だったハイデルベルヒの大学教員ダニエルと結ばれる.
ダニエルにオートバイの乗り方を習ったレベッカは,ダニエルから送られたハーレイダビットソンを乗りこなし,レイモンと結婚後もハーレイを駆って130キロ離れたハイデルベルヒのダニエルの元に通うのだった….
「60年代のミック・ジャガーの恋人」だったマリアンヌ・フェイスフル,その美しい裸身に直接着るレザーのつなぎ,疾走するハーレイ・ダビッドソンのバイク.この映画はこれらのキーワードが圧倒的で,大スター,アラン.ドロンさえ影が薄い存在だ.
映画の作りは安っぽくて,フェイスフルもドロンも実際にはバイクに乗らず,バイクシーンはスタントを使っているようだが,そんなことは問題ではない.
何と言ってもこの映画はフェイスフルの映画なのだ.
レベッカの少女のようにあどけない笑顔,奔放な行動,そしてセックス.ダニエルとの情事の後の,その官能的な表情の生々しさはどうだろう.
そしてその衝撃的なラストシーンも,「イージー・ライダー」のラストシーン同様,長く印象に残るだろう.
これも映画の魅力を存分に発揮した作品.★★★☆(★5個が満点)
蛇足:フェイスフルは,同じ年に「若草の萌える頃」で主役を演じたジョアンナ・シムカスと並んで忘れられない女優.ところでこの映画の原題は「バイクに乗る少女」で,日本語名の方が素敵.一方「若草の萌える頃」の原題は「ジタおばさん」で,こっちはどちらが勝ちとも言えない.
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2009/02/04

独断的映画感想文:転々

日記:2009年2月某日
映画「転々」を見る.Photo
2007年.監督:三木聡.
出演:オダギリジョー(竹村文哉),小泉今日子(麻紀子),吉高由里子(ふふみ),岩松了(国松),ふせえり(仙台),松重豊(友部),広田レオナ(鏑木),津村鷹志(時計屋の主人),石井苗子(多賀子),横山あきお(石膏仮面),麻生久美子(三日月しずか(友情出演)),笹野高史(畳屋のオヤジ),鷲尾真知子(愛玉子店のおばさん),石原良純(愛玉子店の息子),岸部一徳(岸部一徳),三浦友和(福原愛一郎).
「時効警察」の三木監督がゆるく作った一種のロードムービー.
文哉は怠惰な日々を送る大学8年生,ある日下宿に乗り込んできた福原と名乗る男,彼がこしらえた84万円の借金を3日のうちに取り立てると言う.
ピンチの文哉,しかし翌日現れた福原は,自分と一緒に霞ヶ関まで散歩してくれたら,100万円をあげると言う.福原は妻を殺してしまい,警視庁に自首すると言うのだ.
否応なく福原と井の頭公園を起点に歩き始める文哉,二人は様々な街や人に出会い,昔のこと等を思い出したりしながら歩いていく.5
挙げ句に二人は,福原が昔他人の結婚式で頼まれて夫婦役を演じたことがあった女性,麻紀子の家に転げ込み,そこに麻紀子の姪ふふみも転がり込んできて,4人の疑似家族が成立するが….
TVの深夜ドラマ「時効警察」は嫌いではなかった.
この映画はそののりをそのままに小ネタ満載で展開する(例えば麻紀子がママをしているのは「スナック時効」,通りの店の看板は「アブドゥラ肉屋(ザ・ブッチャーですね)」等々).
本筋と関係があるのかどうか分からないエピソードが,ちょろちょろと画面を横切る(その最たるものが岩松了,ふせえり,松重豊の3人が演じる遂に本筋と絡まないサイドストーリーだろう).
映画にこういう形で持ってこられるとちょっとどうかと思うが,この映画はむしろ三浦友和とオダギリジョーを見る映画だと思う.2
この二人の脱力感あふれる(誉めているのです)味のある演技は見て飽きません.
三浦友和の冒頭,相手を確かめもせずずかずかと上がってきてオダジョーを羽交い締めにするや,自分のはいている靴下を片手で脱いでやにわにオダジョーの口に突っ込む,この演技のよどみないテンポはなかなかのもの.
一方その後オダジョーと二人でのたのたと街をぶらつく姿は気の良い親父で,これも見ていて楽しい.4
欠点といえばせっかく生まれ育った阿佐ヶ谷を通ったことになっているのに,それらしい場所が判然としなかったことか.
★★★☆(★5個が満点)
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