独断的映画感想文:告発のとき
日記:2009年2月某日
映画「告発のとき」を見る.
2007年.監督:ポール・ハギス.
出演:トミー・リー・ジョーンズ(ハンク・ディアフィールド),シャーリーズ・セロン(エミリー・サンダース),スーザン・サランドン(ジョアン・ディアフィールド),ジョナサン・タッカー(マイク・ディアフィールド),ジェームズ・フランコ(カーネリー大佐),フランシス・フィッシャー(エヴィ),ジョシュ・ブローリン(ブシュワルド所長),ジェイソン・パトリック(カークランダー警部補),ジェイク・マクラフリン(スペシャリスト、ゴードン・ボナー),メカッド・ブルックス(スペシャリスト、エニス・ロング),ヴィクター・ウルフ(ロバート・オーティス兵卒).
冒頭,デジタル映像の断片,父を呼ぶ電話の声,やがて自宅のベッドで目を覚ますハンク・デアフィールド.
電話は軍の基地からで,イラクに派遣されていた息子マイクが帰還し,最初の休暇で外出したまま行方不明だという.ハンクは基地を訪れる.
デアフィールド家は3代にわたる軍人の家,ハンクも軍で鍛えられ任務を全うした.
久しぶりに訪れた基地は自分が現役のときと変わっていない様だ.ハンクはマイクの居室を訪れ抽斗の携帯を持ち出した.
携帯には映像記録があり,ハンクはその修復を業者に依頼する.
自分も軍警察の経験があるハンクは,マイクの行方を自力で捜そうと活動を開始するが,マイクは滅多刺しにさればらばらに切り刻まれた惨殺死体で発見される.ハンクは地元警察の刑事エミリーの協力を得て,犯人捜しに乗り出すが….
軍警察と地元警察のいずれも積極的に捜査を展開しない中,ハンクとエミリーの悪戦苦闘により,次第に殺人を巡る状況は明らかになっていく.一見映画は殺人の謎を巡るサスペンスの様に進むが,その捜査は実はあっけない結果となる.
併せて進行するいくつかのエピソードとともに映画が描くのは,9/11以降のアメリカの荒廃であり,根拠もなしに石油利権もにらみながら開始されたイラク戦争のもたらした,軍と兵士の悲惨な状況である.
ハンクがエミリーの息子に,寝る前の本を読み聞かせるシーンが印象的だ.
童話(ナルニア国物語の様だが)を読む様せがまれたハンクはその本を読まず,ダビデとゴリアテの物語をする.ダビデこそハンクの英雄像であり,その名前(デイビッド)はハンクの空軍の事故で亡くなった長男の名前であり,その物語を聞いているエミリーの長男の名前でもある.
しかし18ヶ月間イラクで戦ったマイク自身を含めた帰還兵達は,決して英雄ではなく,その精神の荒れ果てた様にハンクは深い衝撃を受ける.
ハンクが絶大な信頼を置いていた軍とその兵士は,大きく変わってしまったのだ.
トミー・リー・ジョーンズ,シャーリーズ・セロン,スーザン・サランドンがいずれも好演.控えめだがマーク・アイシャムの音楽も印象深い.
一見の価値ある作品.★★★★☆(★5個が満点)
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