独断的映画感想文:お遊さま
日記:2009年3月某日
映画「お遊さま」を見る.
1951年.監督:溝口健二.
出演:田中絹代(お遊さま),乙羽信子(お静),堀雄二(慎之助),柳永二郎(栄太郎),進藤英太郎(久右衛門),東良之助(検校).谷崎潤一郎原作.
若葉の頃の郊外の料亭らしきところ,離れで見合いの相手を待つ慎之助.庭を歩いていると見合いの相手の一行がやってくる.
その先頭に立つ艶やかな女性に心を奪われるが,それは見合い相手の姉で未亡人のお遊さまだった.
見合い相手の静は清楚な美人だったが,慎之助はお遊さまに夢中となる.しかしお遊さまは婚家で息子を養育する自由のきかない身だった.
慎之助はお遊さまの懇願もあって静と結婚することになるが,その結婚初夜,静は驚くべき告白をする….
結局静は慎之助に身体を許さず,夫婦はお遊さまと3人での親密な交友を重ねることとなるが,ある事件が起きてその生活は破綻するのだった….
いかにも谷崎らしい作品.
静はお遊さまに対し精神的なレズビアン(昔風に言えばSであろうか)と言える.早くに母親を亡くしお遊さまを恋する慎之助の気持ちも,多分にプラトニックなものだろう.
その仮想的な恋愛関係は所詮永続するものではない.
しかしいずれも裕福な彼らの交友は,美しく描かれる.それが破綻した後の慎之助・静の生活は,かえって真の愛情があったかも知れないが,貧しいものであった.
この辺りの物語の展開はかなり唐突だが,全体の映像美は何と言っても印象的である.戦前(時代は定かでない)の京阪の裕福な生活も興味深く,京都弁も耳にたおやかである.
日本の美しい伝統を感じられる佳作.
★★★☆(★5個が満点)
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コメント
初めまして、「お遊さま」で検索をしていてこちらにまいりました。
一つ気になることが…、京都弁とのことですが。
お遊とお静が話している言葉は、大阪の船場あたりの言葉に聞こえます。
二人が京都へ遊びに行った時には「・・・どす」という言葉が聞こえます。
まだ日常で「どす言葉」を使っていた時代という設定であれば、お静がそれを話さないのは不思議なような。
また「ごりょんさん」「こいさん」と二人が呼ばれているあたりからもそう思われます。
投稿: tama | 2009/10/22 20:33