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2009年9月に作成された記事

2009/09/27

独断的映画感想文:カムイ外伝

日記:2009年9月某日
映画「カムイ外伝」を見る.07
2009年.監督:崔洋一.
出演: 松山ケンイチ(カムイ),小雪(スガル(お鹿)),伊藤英明(不動),大後寿々花(サヤカ),イーキン・チェン(大頭),金井勇太(吉人),芦名星(ミクモ),土屋アンナ(アユ),イ・ハソン(カムイ(少年時代)),山本浩司,PANTA(絵師),佐藤浩市(水谷軍兵衛),小林薫(半兵衛).
白戸三平の劇画の映画化.
非人としての階級社会の最下層の苦しみから抜けるため忍びとなったカムイ,しかしその忍びの組織も命じられるまま人殺しを重ねるためのものだった.03
その組織を脱出し,抜け忍としてかっての仲間に追われるカムイ,自ら編み出した秘術で追っ手の追忍を倒す.
ある日領主の馬の足を切り落として逃亡する漁師半兵衛を救った縁で,カムイは半兵衛の村の漁師として働く様になる.
その村にはかってカムイも追忍として戦ったことのある抜け忍スガルが,半兵衛の妻お鹿として暮らしていた.カムイに油断せず隙あらば倒そうと狙うスガル,一方その子サヤカはカムイを慕い恋心を抱く様になる.
密告により捕らえられ磔になろうとした半兵衛を,カムイとスガルは刑場を襲い奪い返す.01
船で逃亡し先島にたどり着いた半兵衛一家が鮫に襲われたとき,忽然と現れた大帆船に乗る渡り衆に救われたのだが….
この映画のネット上での評判は惨憺たるものである.
中には「カムイ伝」と「カムイ外伝」の区別も判らず突っ込んでいるレビューも見受けられるが,それにしても悪評だ.
しかし見る限りこの映画はそこまで言われるほどのことはない.
個人的にはこの映画は好きである.時間を忘れて引き込まれた.
何より松山ケンイチの胸のすく様なアクションが良い.軽快な身のこなしやテンポ良く疾走する動きは,僕の「忍び」のイメージに限りなく近い.
小雪のスガルをはじめとする半兵衛一家の面々も共感できる.伊藤英明の不動はちょっと豪傑笑いが過ぎるが,まずまずの出来.02
私見ではこの映画,カムイの絶対的な孤独感や猜疑心がもっと突っ込んで描けていれば良かった.そのためにはユーモアある場面(例えば唯一あったのは,渡り衆に先島の老婆達が媚びを含んで迫り,渡り衆の猛者が思わず引くシーン)や悲哀の感情をより豊かに織り込んで欲しかった.
CGやワイヤー・ワークの出来は良いに越したことはないが,本質的な問題ではない.
エンドロールでの幸田未來の唄は最悪である.一応時代劇なのだから,それに合う音楽で締めるべきだろう.
僕にとって「カムイ外伝」体験は「カムイ伝」に先行して始まった(「ガロ」など読まない年代の僕にとって,少年サンデーに連載された「外伝」がカムイとのファーストコンタクトだった).
この連作は強烈な印象を僕に残している.09
特に「九の一」における哀切な幕切れは,未だに記憶に鮮やかだ.
白戸三平のこのシリーズは,リズムや音楽さえ画面から感じられるほどで,作者の力量を改めて感じさせられたものである.それに比べればこの映画はまだまだ.
★★★☆(★5個が満点)
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2009/09/20

独断的映画感想文:007/慰めの報酬

日記:2009年9月某日
映画「007/慰めの報酬」を見る.0072
2008年.監督:マーク・フォースター.
出演:ダニエル・クレイグ(ジェームズ・ボンド),オルガ・キュリレンコ(カミーユ),マチュー・アマルリック(ドミニク・グリーン),ジュディ・デンチ(M),ジェフリー・ライト(フィリックス・レイター),ジェマ・アータートン(フィールズ),イェスパー・クリステンセン(ミスター・ホワイト),デヴィッド・ハーバー(ビーム),アナトール・トーブマン(エルヴィス),ロシー・キニア(タナー),ジャンカルロ・ジャンニーニ(マティス).
ダニエル・クレイグの007第2作.
前作の1時間後から本作はスタートしているということらしい.のっけから渋滞したヘアピンの山道を縫うすさまじいスピードのカーチェイス,敵を片付けアジトに帰還した車のトランクからは,ル・シッフル一味のホワイトが転がり出る.
ところがアジトでホワイトを尋問中,同僚のミッチェルが銃を乱射,これも凄まじいアクションで追い詰め射殺するボンドだが,ホワイトは忽然と姿を消していた.
ル・シッフルに渡った紙幣の使用からポルトー・プランスのホテル在住の男が浮かぶ.0074
ボンドは現地に急行,ホテルを訪れるが男と格闘となり男を刺殺.そこに訪れた女性カミーユを追ううち,環境保護を隠れ蓑に活動する組織の男ドミニクが浮かぶ.
ドミニクはボリビアの次期大統領候補と接触しつつボリビアの資源を手中にしようと活動しているらしい….
本作の特徴は,前作との密接な関係,ますますヒートアップするアクション,復讐心に燃え敵を殺しまくるボンド,と言えようか.0071
タキシードを着こなし,女性相手にドライ・マーティニを飲むおしゃれなボンドはどこに行ったのだ?
とは言え,ダニエル・クレイグのボンドはこれはこれで嫌いではない.ヴェスパーとの間に生まれた感情を整理しきれないまま,同じ復讐心から活動するカミーユと行動を共にするボンドの緊張感は,それなりに共感できる.
前作でもボンドと共同行動を取ったマティス(ジャンカルロ・ジャンニーニが良かった)が,ボンドに「もうヴェスパーを許してやれ.そして自分も許してやれ」と囁くシーンは印象的である.0073
映画全体はアクションに圧倒され,話の詳細が今ひとつ理解できないし,アクション慣れして途中中だるみの感もあった.
何より,このままアクションと緊張感をエスカレートしていく訳には行くまい.次回作はどうなるのか,が気がかりな★★★★(★5個が満点)
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2009/09/08

独断的映画感想文:愛する時と死する時

日記:2009年9月某日
映画「愛する時と死する時」を見る.1
1958年.監督:ダグラス・サーク.
出演:ジョン・ギャヴィン,リゼロッテ・プルファー,ジョック・マホニー,ドン・デフォー,キーナン・ウィン,セイヤー・デヴィッド,ダナ・ハットン,クラウス・キンスキー,ドロテア・ウィーク,ジム・ハットン.
「西部戦線異状なし」のレマルクの原作による戦争映画.
第2次大戦末期,独ソ戦線で苦闘する独軍の兵士エルンスト・グレーバー.敗色濃い戦線にもかかわらずナチの党委員主導でロシア人捕虜(といっても民間人だ)の銃殺が行われ,その葛藤から兵士の自殺も発生する軍崩壊寸前の状況.
奇跡的に2年ぶりの休暇を得たグレーバーは故郷に帰還する.
降り立った故郷は一見変わってないように見えたが,街路に入ると至る所爆撃で廃墟となっており,生家も破壊され両親は行方不明.両親のかかりつけの医者を訪れ,そこで医者の娘で幼なじみのエリザベートと出会う.
医者は反ナチ活動の容疑で収容所送りとなり,その家は強制的にアパートとされてナチ党員の女が監視役として入居していた.
エリザベートとグレーバーは恋に落ち遂に結婚を決意するが….3
この原作は学生時代に読み,強い印象を受けた.
映画は原作の雰囲気を伝えることにある程度成功していると思う.戦線での過酷な戦闘・捕虜への対応,一方昔と変わらぬと思われた故郷に打ち込まれた爆撃と廃墟・街と生活の破壊.その中で状況に翻弄される中必死に自分の運命を切り開こうとする主人公達.
故郷でナチ党員として地区部長にまで上り詰めた同級生の,グレーバーに対する変わらぬ真情(しかし彼は一方で冷徹なナチ党員なのだ).
この戦争という恐ろしい事実のもとでの複雑な社会の状況を描くことに,映画は成功している(原作の功績が大きいが).
原作と比べいささか残念なのは,主人公があまりに美青年でかっこうよすぎることか.
また原作では主人公はエリザベートと結婚するときには背広姿となっているのに映画では軍服で押し通していることか.2
原作にはこうある.「彼は体を乾かしてゆっくりと服を着た.重い軍服を着なれた身には,背広は軽くて,薄かった.すっかり着てしまっても,まだ下着のままでいるような気がした」
余談になるが,僕は学生時代,米軍放出品のジャケットとGパン,ワークブーツを身につけ身の回りのものを鞄に詰めて殆ど下宿にも帰らない生活を続けていた時期があった.
改まった用事があって帰省し背広を着たとき,同じ感覚を味わったことを覚えている.僕にとってあの学生時代は「戦争」に近い時代であった.
★★★☆(★5個が満点)
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2009/09/07

独断的映画感想文:ICHI

日記:2009年9月某日
映画「ICHI」を見る.Ichi14
2008年.監督:曽利文彦.
出演:綾瀬はるか(市),中村獅童(万鬼),窪塚洋介(虎次),利重剛(喜八),佐田真由美(美津),杉本哲太(盲目の男),横山めぐみ(十馬の母),渡辺えり(お浜),柄本明(長兵衛),竹内力(伊蔵),大沢たかお(十馬).
市は盲目の少女,瞽女として育てられる一方,時折訪ねてくる父とおぼしき男から居合いを仕込まれる.
ところが瞽女一座と訪れた民家で男に襲われ犯された市は,掟により追放され,以降離れ瞽女として放浪の旅に出る.Ichi02
ある宿場で知り合った十馬は腕は立つが幼いときのトラウマで剣が抜けないという浪人もの,折しも宿場はそこを仕切る白河一家と,町外れの洞窟を根城に街を荒らす万鬼一味との抗争中だった.
市は万鬼の手下とあらそい切り捨てるが,これを居合わせた十馬のしたことと勘違いした白河組の若親分虎次は,十馬を用心棒に雇う.
一方,万鬼が盲目の居合い使いの消息を知っていると聞いた市は,身を捨てても万鬼の元に行こうと決意する….Ichi05
全く期待していなかった映画だが(「あづみ」程度のアイドル映画だと思っていた)コンセプトがはっきりしていて物語として納得が出来た.
市という女性が離れ瞽女だという設定は良い.また彼女が絶望の内に放浪し,父と思われる男の消息が知りたいばかりに万鬼の元に身を投げ出す流れも哀切である.
映像が美しく(もっとも必ず飛び散る血しぶきの鮮明さにはうんざりしたが),音楽も素敵.
俳優では綾瀬はるかと窪塚洋介が良い.綾瀬はるかは殺陣が若い女性としてはしっかりしているし,盲目の瞽女としての所作も充分.大沢たかおと心が通っていくシーンは印象的.Ichi12
一方窪塚は,ところの若親分として見事な存在感,けんかっ早く口はぞんざいだが,父を愛し子分と運命を共にするその行動は魅力的である.
中村獅童はこういう使われ方しかしないのは残念だが,今は辛抱の時か.
映画全体として見て損は無し.Ichi03
★★★☆(★5個が満点)
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