独断的映画感想文:カムイ外伝
日記:2009年9月某日
映画「カムイ外伝」を見る.
2009年.監督:崔洋一.
出演: 松山ケンイチ(カムイ),小雪(スガル(お鹿)),伊藤英明(不動),大後寿々花(サヤカ),イーキン・チェン(大頭),金井勇太(吉人),芦名星(ミクモ),土屋アンナ(アユ),イ・ハソン(カムイ(少年時代)),山本浩司,PANTA(絵師),佐藤浩市(水谷軍兵衛),小林薫(半兵衛).
白戸三平の劇画の映画化.
非人としての階級社会の最下層の苦しみから抜けるため忍びとなったカムイ,しかしその忍びの組織も命じられるまま人殺しを重ねるためのものだった.
その組織を脱出し,抜け忍としてかっての仲間に追われるカムイ,自ら編み出した秘術で追っ手の追忍を倒す.
ある日領主の馬の足を切り落として逃亡する漁師半兵衛を救った縁で,カムイは半兵衛の村の漁師として働く様になる.
その村にはかってカムイも追忍として戦ったことのある抜け忍スガルが,半兵衛の妻お鹿として暮らしていた.カムイに油断せず隙あらば倒そうと狙うスガル,一方その子サヤカはカムイを慕い恋心を抱く様になる.
密告により捕らえられ磔になろうとした半兵衛を,カムイとスガルは刑場を襲い奪い返す.
船で逃亡し先島にたどり着いた半兵衛一家が鮫に襲われたとき,忽然と現れた大帆船に乗る渡り衆に救われたのだが….
この映画のネット上での評判は惨憺たるものである.
中には「カムイ伝」と「カムイ外伝」の区別も判らず突っ込んでいるレビューも見受けられるが,それにしても悪評だ.
しかし見る限りこの映画はそこまで言われるほどのことはない.
個人的にはこの映画は好きである.時間を忘れて引き込まれた.
何より松山ケンイチの胸のすく様なアクションが良い.軽快な身のこなしやテンポ良く疾走する動きは,僕の「忍び」のイメージに限りなく近い.
小雪のスガルをはじめとする半兵衛一家の面々も共感できる.伊藤英明の不動はちょっと豪傑笑いが過ぎるが,まずまずの出来.
私見ではこの映画,カムイの絶対的な孤独感や猜疑心がもっと突っ込んで描けていれば良かった.そのためにはユーモアある場面(例えば唯一あったのは,渡り衆に先島の老婆達が媚びを含んで迫り,渡り衆の猛者が思わず引くシーン)や悲哀の感情をより豊かに織り込んで欲しかった.
CGやワイヤー・ワークの出来は良いに越したことはないが,本質的な問題ではない.
エンドロールでの幸田未來の唄は最悪である.一応時代劇なのだから,それに合う音楽で締めるべきだろう.
僕にとって「カムイ外伝」体験は「カムイ伝」に先行して始まった(「ガロ」など読まない年代の僕にとって,少年サンデーに連載された「外伝」がカムイとのファーストコンタクトだった).
この連作は強烈な印象を僕に残している.
特に「九の一」における哀切な幕切れは,未だに記憶に鮮やかだ.
白戸三平のこのシリーズは,リズムや音楽さえ画面から感じられるほどで,作者の力量を改めて感じさせられたものである.それに比べればこの映画はまだまだ.
★★★☆(★5個が満点)
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