帰れない二人
「帰れない二人」は井上陽水のヒットアルバム「氷の世界」の3曲目である.
「氷の世界」は1973年のリリース,100万枚を超える大ヒットとなり井上陽水は一気にポップス界のカリスマスターとなった.それまでギター1本で弾き語るイメージのあった陽水は,このアルバムでそれまでになかった豪華絢爛な楽曲の世界を切り開いた感じがしたものだ.
特に冒頭の「開かずの踏切(氷の世界バージョン)」「はじまり」,そして「帰れない二人」の3曲はまさに,井上陽水の華麗な世界のはじまりを告げる様に思えた.
ところで「帰れない二人」は極めて豪華なメンバーで制作されている曲だ.
作詞・作曲は陽水と忌野清志郎の合作で,編曲はモップスのギタリスト星勝である.ベースが細野晴臣,ピアノ深町純,リードギターが高中正義.そうそうたるメンバーだが皆まだ若かった.
ギターの前奏に続いて始まる歌は実に伸びやかで,2番の歌唱からピアノがそれに絡む.2番が終わるとリードギターの間奏,ピアノの間奏,そして両者の絡みでエンディングにいたる.その印象は,それまで馴染んでいた四畳半フォークやブルース系のフォークとは全く異なる世界が開けた感じがして,それまで拘りを持っていた何かから抜け出せた様な開放感があった.
先日NHKで放映された井上陽水特集で本人がこの詩を作った時のことを語っていた.
当時陽水が住んでいた三鷹のアパートに清志郎が来て,夜,二人で詩を作ったそうである.作詞は難航して清志郎は遅くに帰り,結局1番の歌詞を陽水がまとめ2番の歌詞はそれを電話で聞いて清志郎が作ったという.
ところで僕はその三鷹のアパートに,実は星勝もいたのではないかと,それを聴いて思ったのだ.
詩が出来ずにあーだこーだと夜遅くまでご託を並べ続ける二人に呆れて,彼は先に帰ったのではないか?
だってそれは歌詞にはっきり書いてあるじゃないですか.「もう星は帰ろうとしている.帰れない二人を残して(1番の最後)」ってね.
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