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2009年12月に作成された記事

2009/12/31

独断的映画感想文:十三人の刺客

日記:2009年12月某日
映画「十三人の刺客」を見る.6_2
1963年.監督:工藤栄一.
出演:片岡千恵蔵(島田新左衛門),里見浩太郎(島田新六郎),内田良平(鬼頭半兵衛),丹波哲郎(土井大炊頭利位),嵐寛寿郎(倉永左平太),西村晃(平山九十郎),月形龍之介(牧野靭負),丘さとみ(おえん),三島ゆり子(牧野千世),藤純子(加代),河原崎長一郎(牧野妥女),水島道太郎(佐原平蔵),山城新伍(木賀小弥太),汐路章(堀井弥八).
将軍の腹違いの弟で明石藩主松平斉韶は,好色暴虐の人物,江戸家老の間宮図書はその実情を訴え,老中土井大炊頭門前で割腹する.7
ところが将軍はこれを穏便に済ますよう計らった上,次期老中に松平斉韶の名を上げる.土井大炊頭はこれを正すべく,松平斉韶の暗殺をお目付役島田新左衛門に命令する.
島田は協力者を集め木曽落合の宿に罠を設け,参勤交代途上の松平斉韶一行をこの宿に誘い込む.かくて13人の刺客対松平斉韶一行53人の死闘が始まった….2_2
時代劇としての構成は類型的ではあるが(主人公対暴君,暴君の家臣で切れ者の側用人の存在,その側用人と主人公の交流等),ベテラン俳優の配置で登場人物の所作一つとっても安心してみていられる.
片岡千恵蔵,嵐寛寿郎等のベテランに混じり里見浩太朗が颯爽として活躍.西村晃が演じるニヒルな浪人ものも宜しい.
全体に人物の掘り下げは充分とは言えないが,映画のテンポが良いので気にならない.朝霧の中から騎乗の松平斉韶一行が現れて開始される,終盤20分の集団の死闘が何といっても息をのむ.
倒し倒されていくほどに殺気立っていき,激しく切り結ぶ侍達.鬼頭・倉永の対決,鬼頭・島田の対決が見応え充分.見て損はなし.4_2
まだ若く芋姉ちゃんの富司純子や,悪役になる前の汐路章の精悍な姿が見られるのも興味深い.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:劔岳 点の記

日記:2009年12月某日
映画「劔岳 点の記」を見る.4
2008年.監督:木村大作.
出演:浅野忠信(柴崎芳太郎(陸軍参謀本部 陸地測量部測量手)),香川照之(宇治長次郎(測量隊案内人)),松田龍平(生田信(陸軍参謀本部 陸地測量部測夫)),モロ師岡(木山竹吉(陸軍参謀本部 陸地測量部測夫)),螢雪次朗(宮本金作(測量隊案内人)),仁科貴(岩本鶴次郎),蟹江一平(山口久右衛門),仲村トオル(小鳥烏水(日本山岳会)),小市慢太郎(岡野金治郎(日本山岳会)),安藤彰則(林雄一(日本山岳会)),橋本一郎(吉田清三郎(日本山岳会)),本田大輔(木内光明(日本山岳会)),宮崎あおい(柴崎葉津よ(柴崎芳太郎の妻)),小澤征悦(玉井要人(日本陸軍大尉)),新井浩文(牛山明(富山日報記者)),鈴木砂羽(宇治佐和(宇治長次郎の妻)),笹野高史(大久保徳昭(日本陸軍少将)),石橋蓮司(岡田佐吉(立山温泉の宿の主人)),冨岡弘,田中要次,國村隼(矢口誠一郎(日本陸軍中佐)),井川比佐志(佐伯永丸(芦峅寺の総代)),夏八木勲(行者),役所広司(古田盛作(元陸軍参謀本部 陸地測量部測量手)),大勢いますな.
新田次郎原作の小説を,CG等を使わず現地ロケで描き通した山岳映画.5
明治39年,ほぼ完成に近づいた日本地図に残った三角点の空白地域,劔岳の測量を命じられた柴崎は,引退した先輩・古田の助言により案内人宇治長次郎を採用し,劔岳の登頂・測量に取りかかる.
折しも発足したばかりの日本山岳会も劔岳登頂を目指して現地に入り,陸軍本部からは彼らに負けてはならぬという厳命を受け,柴崎は周辺の測量に奔走しながらも登頂ルートの見極めに苦慮するのだった….
原作を読んでから見た映画だったが,物語の展開は正直に言えば退屈だった.
この物語の本筋は登頂ルートがあるかないか,あるとすればどこか,というある意味ではミステリ小説のような展開にある(あくまでも独断と偏見であるが).
原作では冒頭に地形図を配し,どのルートではどう無理があるか,どのルートが結局可能性があるかを物語の展開の中で判るようにしてあった.次第にルートが絞り込まれ,その雪渓を上るルートがある気候の条件が満たされるときにしか可能性がないという,大詰めへの緊張感の高まりがあって登頂となる.2
一方映画はその間の事情の説明はほとんどなく,何となく周辺の測量を重ねていくうちにたまたま絞り込まれた登頂ルートをアタックしたら登頂できたというような印象を受ける.それでは何故それまで誰も登れなかったのか,が不明ではないだろうか?
最終局面で山岳会の一行が測量隊にエールを送ってくるシーンも如何にも嘘っぽく(原作にはない話だ),受け容れ難い.
これはあくまでも個人的見解で,物語の本筋は男の友情だとか,自然との闘いの中での人間の成長だとかいう話であればそれは充分に描けていると思う.
それはともかく,観客はこの山岳映画の素晴らしい景観を堪能することができるのは間違いない.6
俯瞰される尾根ルートをたどる主人公達の映像や,雪崩のシーンなど,上げれば枚挙にいとまがないが,どのシーンも俳優・スタッフによる大変な苦労によって得られたものであるのは疑いなく,この映画の値打ちはそれらのシーンを見るだけで充分あると言えるだろう.
★★★☆(★5個が満点)
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2009/12/28

独断的映画感想文:アバター

日記:2009年12月某日
映画「アバター」を見る.1
2009年.監督:ジェームズ・キャメロン.
出演:サム・ワーシントン(ジェイク・サリー),ゾーイ・サルダナ(ネイティリ),シガーニー・ウィーヴァー(グレース・オーガスティン),スティーヴン・ラング(マイルズ・クオリッチ大佐),ミシェル・ロドリゲス(トゥルーディ・チャコン),ジョヴァンニ・リビシ(パーカー・セルフリッジ),ジョエル・デヴィッド・ムーア(ノーム・スペルマン),CCH・パウンダー(モアト),ウェス・ステューディ(エイトゥカン).
海兵隊員ジェイクはベネズェラで負傷,下半身麻痺の車椅子生活者となる.
その双子の兄は,惑星パンドラのアバタープロジェクトに関わっていたが急死,同じDNAを持つジェイクがその後任に送り込まれる.
アバターは,パンドラの原住民ナヴィ族と人間のDNAを組み合わせ肉体化したもの,ジェイクは専用カプセルに入り仮眠することで,ナヴィと同じ肉体を持つアバターのジェイクを自分の肉体として使うことが出来る.
ジェイクのアバターはパンドラ駐在の科学者グレース博士のアバターと共に,戦士としてナヴィの生活を学び言語の習得に努める.グレース博士の研究によれば,パンドラの原住民や動植物は,共通のバイオネットワークで繋がれていた.5
一方ナヴィ族の本拠地の地下に存在する貴重金属アンオブテニウムの開発をもくろむ企業とその傭兵集団は,ジェイクのアバターを通じて得た現地の情報を分析し,資源獲得のため森林を焼き払いナヴィ族を追放する準備を進める.4
ジェイクはナヴィ族の族長の娘ネイティリと愛し合い結ばれるが,そのとき傭兵集団の一斉攻撃が始まった….
本格的に3D映像を駆使して作成された初の長編SF映画.
強欲をむき出しに,資源強奪のため武力で侵攻する人間とそれに対抗する原住民という物語は,極めて類型的ではあるがそれはまあ宜しい.3
企業や傭兵の典型的キャラクターを演じているジョヴァンニ・リビシ(「ヘブン」では美青年でした)やスティーヴン・ラングはそれぞれ如何にもそれらしく憎たらしい.
そんなことより,ジェームズ・キャメロンが作り上げたパンドラという星の美しさとナヴィ族の美しさに,観客は何よりも驚嘆するだろう.
特に夜の密林の,蛍光を放つ木々や虫たちの美しさ.そして翼竜イクランを捕らえ乗りこなす飛翔シーンの,目も眩むようなスピード感高揚感はどうだろう.6
3D映像の特性を最も効果的に引き出したこれらのシーンに,素直に賛辞を送りたい.40年以上前に読んだ古典SFやスペースオペラのイメージが,このような形で映像化されたことは嬉しい限りだ.
「スター・ウォーズ」シリーズで切り開かれたSF映像のレベルを,更に一段押し上げたものとして評価したい.
一見の価値あり.★★★★(★5個が満点)
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2009/12/23

独断的映画感想文:ブーリン家の姉妹

日記:2009年12月某日
映画「ブーリン家の姉妹」を見る.3
2008年.監督:ジャスティン・チャドウィック.
出演:ナタリー・ポートマン(アン・ブーリン),スカーレット・ヨハンソン(メアリー・ブーリン),エリック・バナ(ヘンリー8世),デヴィッド・モリッシー(トーマス・ハワード(ノーフォーク公爵)),クリスティン・スコット・トーマス(レディ・エリザベス・ブーリン),マーク・ライランス(トーマス・ブーリン卿),ジム・スタージェス(ジョージ・ブーリン),ベネディクト・カンバーバッチ(ウィリアム・ケアリー),オリヴァー・コールマン(ヘンリー・パーシー),アナ・トレント(キャサリン・オブ・アラゴン),エディ・レッドメイン(ウィリアム・スタフォード),ジュノー・テンプル(ジェーン・パーカー).
ヘンリー8世時代,王の愛人となったメアリ・アンの姉妹の物語.
王妃キャサリンが男児を死産したという知らせをいち早く知ったノーフォーク公爵は,出世のために王の愛人候補を物色する.
姉の嫁ぎ先ブーリン家に王が逗留することを知った公爵は,ブーリン家の娘アンをその候補に見立てる.
ところが王の心を捕えたのは,既に人妻となっていた慎ましい妹メアリーだった.
ブーリン家は宮廷に召し出されメアリーは王の寵愛を受けるが,アンは奔放な性格を押さえきれず許嫁のいる貴族と駆け落ちをし,激怒した父の命令でフランス王妃の侍女として国外に追放される.
まもなくメアリーは懐妊するが,流産を防ぐため安静を命じられる.王の心が離れるのを恐れたブーリンはアンを呼び戻し,アンはフランス仕込みの手管で王の心を翻弄するのだった….4
イギリスの歴史劇は何故か好きなジャンルの一つ.特にヘンリー8世のあたりは面白い.
アンとメアリーはどちらが姉かで歴史上の論争がある様だが,この映画ではアンが姉.そのアンがヘンリー8世を焦らしに焦らし,遂にローマ教皇と離別してまで自分を正規の王妃にさせることに成功する様が描かれるが,そうかなあという気もする.ヘンリー8世がそこまで女に操られる人物とも思えない.
それはともかく,アンとメアリーを演ずるナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンは見応え有り.特にヨハンソンの演技には瞠目する.
その他ブーリン家の母,王妃キャサリン等の女優陣が出来が良い.
ヘンリー8世の時代は血なまぐさい時代だったが,この後アンの王女エリザベスが即位すると,以降45年にわたって彼女の時代が続く.ただし,エリザベスは結婚しなかったためアンの血脈は絶えた.
一方,王の子として認知されなかったメアリーの子孫には,現代に繋がる著名人(エセックス伯爵家,サマーセット公爵家)が数多く存在するのも驚きである.1
映画として見応え有り,歴史劇としても印象深い.
★★★★(★5個が満点)
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2009/12/05

独断的映画感想文:イングロリアス・バスターズ

日記:2009年11月某日
映画「イングロリアス・バスターズ」をみる.004
2009年.監督:クエンティン・タランティーノ.出演:ブラッド・ピット(アルド・レイン中尉),マイク・マイヤーズ(エド・フェネシュ将軍),ダイアン・クルーガー(ブリジット・フォン・ハマーシュマルク),クリストフ・ヴァルツ(ハンス・ランダ大佐),メラニー・ロラン(ショシャナ・ドレフュス),ミヒャエル・ファスベンダー(アーチー・ヒコックス),イーライ・ロス(ドニー・ドノウィッツ),ダニエル・ブリュール(フレデリック・ツォラー).007_2
冒頭は1941年,フランスの農村.丘の上の一軒家の庭先で切り株に斧を打ち込んでいる男.彼方の農道をサイドカー付きのオートバイに先導された車が近づいてくる.
やってきたのはナチ突撃隊のランダ大佐,ユダヤ人ハンターの異名を取る.大佐は丁重な物腰で男の家に入り穏やかに話をするが,やがて男に床下にユダヤ人を匿っていることを認めさせる.
合図で入ってきた兵士がマシンガンを床下に向け乱射,辛うじて脱出し森に向って走る少女ショシャナに,ランダ大佐は銃を向けるが,気が変わって彼女を逃がす….003
3年後1944年.ナチ占領下のパリで若くして映画館を経営するミミューはかってのショシャナである.ふとした縁でドイツ軍の英雄狙撃手フレデリックと知り合い,彼の推薦でミミューの映画館がフレデリックを描いた映画のプレミア会場となることになる.
プレミア上映にはゲッベルスを始めナチの高官が集まり,警備をランダ大佐が務めるという.ミミューは復讐のための計画を練る.
一方,ナチの兵士を残虐に殺しまくるレイン中尉を指揮者とする秘密部隊は,やはりこの情報を聞きつけ,反ナチの人気ドイツ女優ハマーシュマルクの協力を得て,ミミューの映画館に潜り込もうと画策する….014
史実に基づかない映画.
タランティーノのこの映画は賛否両意見があることだろう.
題材がそもそも第2次大戦下のパリで,ナチを相手の謀略戦というサスペンスフルなもの.実際冒頭の20分ほどのユダヤ人狩りのシークエンスは,ランダ大佐のフレンドリーな饒舌にもかかわらず極めて緊張度の高いものになっている.
そして物語はこの監督特有のまさかまさかの連続で,思いもかけない展開となり,迎えるクライマックスのはじけぶりはタランティーノの面目躍如のスラプスティックな阿鼻叫喚.この題材とこの監督の組み合わせは,何ともいえない効果を生み出すことに成功した様だ.
「遙かなるアラモ」「キャット・ピープルのテーマ(デヴィッド・ボウイ」を使ったサン・トラも懐かしい.はまった人は大満足な映画.
★★★★
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独断的映画感想文:天使と悪魔

日記:2009年11月某日
映画「天使と悪魔」を見る.007
2009年.監督:ロン・ハワード.出演:トム・ハンクス(ロバート・ラングドン),アイェレット・ゾラー(ヴィットリア・ヴェトラ),ユアン・マクレガー(カメルレンゴ),ステラン・スカルスガルド(リヒター隊長),ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ(オリヴェッティ刑事),ニコライ・リー・コス(暗殺者),アーミン・ミューラー=スタール(シュトラウス枢機卿).
「ダ・ヴィンチ・コード」に次ぐ,ラングドン教授ものの続編.
ローマ法皇が亡くなり,次期法皇を決める枢機卿の会議コンクラーベが開かれようとする折,4人の枢機卿が誘拐された.一方スイスの原子核研究機構CERNからは,加速器を使って作られた反物質が盗まれる.
ヴァチカンにかって弾圧された秘密結社イルミナティから,1時間ごとに4人の枢機卿を殺害した上,反物質を爆発させるという脅迫状が届き,ヴァチカンはラングドン教授とCERNの研究者ヴェトラを呼び寄せ,二人は調査を開始する….001
ラングドン教授に必ずしも協力的でないヴァチカン衛兵部隊の隊長や,利害の絡み合う枢機卿らの確執の中,悪戦苦闘しながら謎を負うラングドン教授達の活躍はなかなか見応えがある.
とにかく1時間刻みの予告殺人と,そのヒントは全てヴァチカンの建物や彫像の中に潜んでいるという条件下,猛スピードで駆け抜けるラングドンとヴェトラに,観客はともすれば置いて行かれそうになる.
そこを何とかつないでいくどんでん返しに次ぐどんでん返しの展開は,十分に面白い(もっとも犯人はかなり分かり易いけど).009
ベトラ嬢にもう少し色気があれば良かったが,まあ考えれば色気なぞ出している暇は一瞬たりともなかったろうね.
感心したのは,サンピエトロ広場を埋め尽くす大群衆のシーンと俳優達が右往左往するシーンとが,実にうまく繋がっているところである.
突っ込みたいところもあった様な気がするが,結局映画の早い進行にうまく巻き込まれてしまった.そこんところは天晴れ.
★★★★
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