独断的映画感想文:劔岳 点の記
日記:2009年12月某日
映画「劔岳 点の記」を見る.
2008年.監督:木村大作.
出演:浅野忠信(柴崎芳太郎(陸軍参謀本部 陸地測量部測量手)),香川照之(宇治長次郎(測量隊案内人)),松田龍平(生田信(陸軍参謀本部 陸地測量部測夫)),モロ師岡(木山竹吉(陸軍参謀本部 陸地測量部測夫)),螢雪次朗(宮本金作(測量隊案内人)),仁科貴(岩本鶴次郎),蟹江一平(山口久右衛門),仲村トオル(小鳥烏水(日本山岳会)),小市慢太郎(岡野金治郎(日本山岳会)),安藤彰則(林雄一(日本山岳会)),橋本一郎(吉田清三郎(日本山岳会)),本田大輔(木内光明(日本山岳会)),宮崎あおい(柴崎葉津よ(柴崎芳太郎の妻)),小澤征悦(玉井要人(日本陸軍大尉)),新井浩文(牛山明(富山日報記者)),鈴木砂羽(宇治佐和(宇治長次郎の妻)),笹野高史(大久保徳昭(日本陸軍少将)),石橋蓮司(岡田佐吉(立山温泉の宿の主人)),冨岡弘,田中要次,國村隼(矢口誠一郎(日本陸軍中佐)),井川比佐志(佐伯永丸(芦峅寺の総代)),夏八木勲(行者),役所広司(古田盛作(元陸軍参謀本部 陸地測量部測量手)),大勢いますな.
新田次郎原作の小説を,CG等を使わず現地ロケで描き通した山岳映画.
明治39年,ほぼ完成に近づいた日本地図に残った三角点の空白地域,劔岳の測量を命じられた柴崎は,引退した先輩・古田の助言により案内人宇治長次郎を採用し,劔岳の登頂・測量に取りかかる.
折しも発足したばかりの日本山岳会も劔岳登頂を目指して現地に入り,陸軍本部からは彼らに負けてはならぬという厳命を受け,柴崎は周辺の測量に奔走しながらも登頂ルートの見極めに苦慮するのだった….
原作を読んでから見た映画だったが,物語の展開は正直に言えば退屈だった.
この物語の本筋は登頂ルートがあるかないか,あるとすればどこか,というある意味ではミステリ小説のような展開にある(あくまでも独断と偏見であるが).
原作では冒頭に地形図を配し,どのルートではどう無理があるか,どのルートが結局可能性があるかを物語の展開の中で判るようにしてあった.次第にルートが絞り込まれ,その雪渓を上るルートがある気候の条件が満たされるときにしか可能性がないという,大詰めへの緊張感の高まりがあって登頂となる.
一方映画はその間の事情の説明はほとんどなく,何となく周辺の測量を重ねていくうちにたまたま絞り込まれた登頂ルートをアタックしたら登頂できたというような印象を受ける.それでは何故それまで誰も登れなかったのか,が不明ではないだろうか?
最終局面で山岳会の一行が測量隊にエールを送ってくるシーンも如何にも嘘っぽく(原作にはない話だ),受け容れ難い.
これはあくまでも個人的見解で,物語の本筋は男の友情だとか,自然との闘いの中での人間の成長だとかいう話であればそれは充分に描けていると思う.
それはともかく,観客はこの山岳映画の素晴らしい景観を堪能することができるのは間違いない.
俯瞰される尾根ルートをたどる主人公達の映像や,雪崩のシーンなど,上げれば枚挙にいとまがないが,どのシーンも俳優・スタッフによる大変な苦労によって得られたものであるのは疑いなく,この映画の値打ちはそれらのシーンを見るだけで充分あると言えるだろう.
★★★☆(★5個が満点)
人気ブログランキングへ
コメント