独断的映画感想文:ウィル・ペニー
日記:2010年1月某日
映画「ウィル・ペニー」を見る.
1967年。監督:トム・グライス.
出演: チャールトン・ヘストン(ウィル・ペニー),ジョーン・ハケット(キャサリン・アレン),ドナルド・プレザンス(クイント),ブルース・ダーン(レイフ),ベン・ジョンソン(アレックス),スリム・ピケンズ(アイク),アンソニー・ザーブ(ダッチー).
撮影は2年前に「エルダー兄弟」を撮っているルシアン・バラード.
ウィル・ペニーは50歳も間近というベテランのカウボーイ.テキサスから牛を運び終わり,雇い主から腕を見込まれカンザスに同行しないかと誘われるが,若いカウボーイがカンザスに行きたいと言い出すとあっさり譲ってしまうお人好し.
牛を追う仕事にかけては人に負けない根っからの牧童だが,自分の名前も書けない.
仕事を探しての道中で,仲間を救うための銃撃戦で狂信的説教師クイントの恨みを買ってしまう.
やがて仕事にありついた牧場で山番をすることになるが,その番小屋には,ガイドに逃げられたキャサリン母子が冬を越そうと身を寄せていた.
山回りをしていたペニーは,クイント親子に襲撃され重傷を負う.辛うじて番小屋までたどり着いたペニーを,キャサリンは献身的に看病する….
映画はペニーとクイント親子の確執,キャサリンとのロマンスを描くのだが,観客にとって印象的なのはその物語よりもむしろ,ウィル・ペニーの人生そのものであろう.
子供の頃両親を亡くし,酒場の使い走りをして育った彼は,ずっと牧童をしてきた.牧童の成功者は,カウボーイをして稼いだ金を元手に牧場を始め,長い時間をかけて牛を増やしていくものらしい.
既に初老のウィル・ペニーは,せっかくの腕がありながら,成功者となるタイミングを既に失ったものと考えられる.その事実の重さが,映画のラストシーンに描かれるのだ.
派手な銃撃戦よりは,人間の情愛と厳しい自然を描く,どちらかといえば地味な西部劇である.
チャールトン・ヘストンはこのとき43歳,「大いなる西部」の時(34歳)よりさすがに年を取った.
クイント役のドナルド・プレザンスが怪異な狂信者を演じて秀逸,この人は中学生の頃見た「大脱走」で神経質な偽造証明書作りの名人を演じていて,良く覚えている.
★★★☆(★5個が満点)
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