独断的映画感想文:僕の彼女はサイボーグ
日記:2010年1月某日
映画「僕の彼女はサイボーグ」を見る.
2008年.監督:クァク・ジェヨン.
出演:綾瀬はるか, 小出恵介,桐谷健太,鈴之助,吉高由里子,阿井莉沙,佐藤めぐみ,斉藤歩,田口浩正,山口祥行,ドロンズ石本,松本莉緒,(スペシャルゲスト)六平直政,(スペシャルゲスト)蛭子能収,(スペシャルゲスト),手塚とおる, (スペシャルゲスト),納谷六朗,(スペシャルゲスト),伊武雅刀,(スペシャルゲスト),寺泉憲(スペシャルゲスト),遠藤憲一,小日向文世,竹中直人,吉行和子.
青年ジローは自分の誕生日に不思議な女性をデパートで目撃する.
宇宙服のようなものをまとった女性は衣服と靴を万引き,それに着替えて逃走する.その後パスタを食べていた店に彼女が現れ,彼と同席して誕生日を共に祝った挙げ句,食い逃げを敢行,二人は街中を逃げ回る羽目になる.
その夜限りで彼女は姿を消すが,彼女を忘れられないジローは,翌年の誕生日にも彼女を待ってレストランで食事をする.その夜果たして彼女は現れたが,レストランでは思いもかけない大事件が起きるのだった….
タイムパラドックスを扱ったSF映画.
但し,この映画はSFとしては極めていい加減である.
まずヒロインはサイボーグではない.サイボーグとは人間の肉体を部分的に機械に置き換えたもので,最低限頭脳は人間のものだ.
この映画で言う「サイボーグ」は人間の形をしたロボットで,普通は「アンドロイド」と言う.監督が自分の映画をどう名付けようが勝手だが,例えば世間で「犬」と呼ばれているものを「猫」だと主張し,「僕の猫」という題で犬を描いた映画を作ったようなものである.
タイムパラドックスの扱いもいい加減で,最後に明らかになる種明かしを考えると,矛盾点が幾つも出てくる.
誕生祝いのシーンのギャグは,基本的にあり得ない監督の勘違いではないか(ケーキに頭を突っ込むというシーンは「サイボーグ」は見ている筈のないシーンだからだ).
説明の付かない現象をタイムパラドックスとして種明かしするこの手のSFとしては,この映画は落第と言わざるを得ない.
中盤の,主人公の過去の故郷にタイムスリップするシーンも酷い.
①何故自在なタイムスリップが可能なのか説明がない.②お祖母ちゃんと思っていた人は実はお母さんでした,という話はどう決着がつけられたのか説明がない.③ほんの10年ほど前へのタイムスリップとは思えない時代描写で,何とも受け容れ難い.
以上のような致命的な欠点の数々にも拘わらずこの映画が素敵なのは,綾瀬はるかの魅力に尽きる.
彼女の「サイボーグ」としての冷たい演技,そしてヒロインとしての心通う演技はそれぞれ観客の心を魅了して離さないであろう.この映画は彼女(だけ)を見る映画と言って過言ではない.
他の点については,主人公には魅力がなく,ヒロインが何故主人公のために遠い未来からやって来たのか全く理解しがたい.
山のように出てくるスペシャルゲスト他の俳優は,竹中直人を筆頭に見る価値なし(見て損した,金返せ).
SF映画として,目指したことは評価したいがSFを舐めるな,と言うべき映画.
まあ糞味噌に言いましたが,この監督とは元来相性が悪い.ヒラにご容赦いただきたい.
★☆(★5個が満点)
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