独断的映画感想文:ワルキューレ
日記:2010年2月某日
映画「ワルキューレ」を見る.
2008年.監督:ブライアン・シンガー.
出演:トム・クルーズ(シュタウフェンベルク大佐),ケネス・ブラナー(ヘニング・フォン・トレスコウ少将),ビル・ナイ(オルブリヒト将軍),トム・ウィルキンソン(フロム将軍),カリス・ファン・ハウテン(ニーナ・フォン・シュタウフェンベルク),トーマス・クレッチマン(オットー・エルンスト・レーマー少佐),テレンス・スタンプ(ルートヴィヒ・ベック),エディ・イザード(エーリッヒ・フェルギーベル将軍),ジェイミー・パーカー(ヴェルナー・フォン・ヘフテン中尉),クリスチャン・ベルケル(メルツ・フォン・クヴィルンハイム大佐).
第2次大戦下のアフリカ戦線,英空軍の空襲で右手切断・左の2指を失い,左眼摘出の重傷を負ったシュタウフェンベルク大佐は本国に送還され,参謀部に勤める.
反ナチの大佐は,ヒトラー暗殺計画の同志に参加,暗殺後の政権奪取を含めた立案を行う.それは国内で反乱が起こったときの鎮圧作戦「ワルキューレ作戦」を利用し,ヒトラーの死後直ちに,ワルキューレ作戦を発動してナチ勢力を一掃しようというものだった.
その卓越した指導力で同志をまとめ上げたシュタウフェンベルク大佐は,自らヒトラー暗殺の爆弾を運び込む役を引き受け,遂に司令部「狼の巣」での爆弾炸裂を実現する.
直ちに現場を離れた大佐は窮地を脱出,ベルリンに戻ってワルキューレ作戦を発動,予備軍は次々に軍事標的を占拠していくのだが….
歴史的事実に基づく暗殺計画の顛末を描く.
この映画の問題点は,ヒトラー暗殺は失敗したという歴史的事実を,殆どの観客は知っているということであろう.
それではこの映画がそれにも拘わらず描く価値があると思ったものは,何だろうか.
この点が判らないことが,この映画の致命的欠点と思われる.
観客から見て,ヒトラーは明らかな悪玉としても,シュタウフェンベルク大佐等が正義の味方とまでは思えない.大佐自身は伯爵家の当主であるし,同志の面々は旧軍出身者や実業家で構成されている.
この人達はヒトラー暗殺後に自分が何らかの政府要職に就くことは考えているが,ヒトラーの死を確実にするために自分の命をかけようとは誰もしない.大佐自身爆薬を仕掛けながら,その場に踏みとどまってヒトラーにとどめを刺そうとはしなかった.
ヒトラーの死を大前提にした作戦を発動しながら,ヒトラーを確実に殺せないのでは,作戦の名にも値しないではないか?
大戦末期のベルリンを描いた映像は重厚であるし,音楽も悪くない.豪華な脇役陣も(テレンス・スタンプが良い老人になっていますな!)見応えがある.
しかし映画の肝心な点が明快でないので,なんの感銘も受けない.
僕自身は,失敗に終わる作戦の後,家族を含め敗者がどういう仕打ちを受けるのかだけが気になって,全く楽しめなかった.
★★★(★5個が満点)
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