独断的映画感想文:ある公爵夫人の生涯
日記:2010年2月某日
映画「ある公爵夫人の生涯」を見る.
2008年.監督:ソウル・ディブ.
出演:キーラ・ナイトレイ(デヴォンシャー公爵夫人(ジョージアナ)),レイフ・ファインズ(デヴォンシャー公爵),シャーロット・ランプリング(レディ・スペンサー),ドミニク・クーパー(チャールズ・グレイ),ヘイリー・アトウェル(レディ・エリザベス・フォスター),サイモン・マクバーニー(チャールズ・ジェームズ・フォックス).
ネタバレあります.
18世紀末のイギリス.スペンサー家の令嬢ジョージアナは,野心家の母親のセッティングで,当時権勢を誇っていたデヴォンシャー公爵と結婚する.
広大な領地といくつもの館,しかし公爵の目的はただ一つ,跡継ぎの男子の出生だった.妊娠以外には一切公爵から関心を払われないジョージアナ,才気煥発で聡明な彼女は,次第に政治と賭け事に関心を深めていく….
イギリスを舞台とするコスチューム・プレイとして,丁寧に作ってある良い映画である.
俳優はキーラ・ナイトレイとレイフ・ファインズ,シャーロット・ランプリング(この人は憎たらしい役だが)が素敵.
アメリカが独立しフランスに革命が起きようという時代を背景に,相変わらずの女性蔑視が描かれている様に見えるこの映画.しかしこの映画は,そう一筋縄ではいかない面がある.
デヴォンシャー公爵はとにかく男子を得ることに必死,しかも愛人の産んだ私生児は跡継ぎにはなれないらしい.
公爵は,ジョージアナの唯一の友人で男子3人をもうけた豊満な美女エリザベスを手籠めに(古典的な言葉ですな)してジョージアナと深刻な対立となるが,それでもとにかくジョージアナが男子を産まなければならないという状況は,ジョージアナを縛ると同時に公爵をも縛っているのだ.
エリザベスの連れ子である3人の男の子に注ぐ公爵の愛情も描かれる.
僕はこの公爵にある種の共感を覚えないではいられない.
公爵が女性の人権を無視することに何のためらいも持たない人物だとしても,家門の継続という至上命題のもとではこうせざるを得ないという部分が大方を占めている様にも見える.ジョージアナが結局男子を得たのに公爵はエリザベスとの同居を止めず,ジョージアナも離婚せず,3人は奇妙な共同生活を送ることになる.ジョージアナも最終的には公爵とその公爵の愛人であり自分の友人でもあるエリザベスとの関係を,受け容れたと思える.
この映画は見る観客の年齢や性別,社会や人間の成熟といったことに対する考え方によって,様々な感想をもたらすに違いない.
若い女性の観客には,到底公爵を認めることはできないであろう.しかし答えは幾つもある様に感じられる,そういう点で興味深い映画.
ただし題名は原題通り「公爵夫人」で良いのでは?
★★★★(★5個で満点)
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